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罠と急襲と異世界の魔の手の話③

「あいったたたた……もう、ビックリしたぁ。ていうか、腕千切れ飛ぶかと思ったあー……」


 地上の山岳地帯へ墜落した後も、石の水切りのように固い岩の地面を何度か跳ねては積雪と土埃にまみれたエリジェーヌは、半身を起こしながらそう呟く。


 肉体がアンデッド化している副次効果で実際には痛みへの耐性は上がってこそいるのだが、いきなりの突進タックルとそれを上手く防御出来なかったことに思いの外驚かされ、そんな台詞を口にしてしまったのだ。


「それにしてもレフィリアちゃんったら酷いなあ、せっかく新しくした衣装がもう汚れて――って、アブなッ!?」


 エリジェーヌが悪態をついたのも束の間、急に空の向こうがチカッと瞬いたかと思うと、再びレフィリアが光の翼を広げた状態で急降下しては突っ込んできた。


 それを咄嗟に感じ取ったエリジェーヌはすぐさま身を捻ってはその凄まじい突撃を紙一重で回避する。


 猛烈な雪煙を巻き上げながら岩の大地をゴリゴリに抉り取って着地を果たしたレフィリアは光翼と攻性障壁バリアを一旦消し去ると、そのまま光剣を構えつつエリジェーヌの方へ向き直った。


「ちょちょちょっ! レフィリアちゃん! 久しぶりの再会だからってそんなにガッついてこなくてもいいじゃん!」


 大鎌の柄を杖代わりにして立ち上がりながら、身体についた雪を払いつつ、いつもの調子で話しかけてくるエリジェーヌにレフィリアは大きく息をついた。


「別に私は会いたくなんてなかったですよ。というか貴方だったんですか、卑劣な罠で私の仲間達をかどわかそうとしたのは」


 レフィリアから殺気立った目でキッと睨まれ、エリジェーヌは何とも居心地の悪そうに指先で頬を掻く。


「あーもう、会いたくなかっただなんてそんな寂しい事言わないでよ……それにあの強制転移させる方陣を敷いたのはゲド君の仕業だし」


「ですが貴方、以前の時と同じように魅了のG.S.A.で私の仲間を人質にしようとしてましたよね? 既に判っているのですから、自分は拉致した件については無関係、だなんて言い訳は通じませんよ?」


「……ふうん、あの場にいなかったのにそれを知ってるって事は、メルティカちゃんの言ってた通りにあの蒼い髪のひととレフィリアちゃんは繋がってるんだね。召喚者と異世界転移者の関係で」


 エリジェーヌがそう口にしたことで、レフィリアはついに六魔将間でサフィアが自分にとっての急所になる、という情報共有がなされたであろう事を推察した。


 だとすれば、こうして会敵してしまった以上は速やかに、モースカヴァの街でスレイアを仕留めた時と同じようにこの場で彼女を確実に倒してしまわねばならない、とレフィリアは心をより冷たく鋭くする。


「怖いなあ、そんな青筋立てて睨んでこなくたっていいじゃん。せっかくの綺麗な顔が台無しだよ? ……確かにレフィリアちゃんのお友達に粉掛けたのは悪かったけどさあ、せっかく殺し合うんならもっと気楽に愉しくやろうよ」


 そう肩を竦めながら呟くと、エリジェーヌは手にしていた大鎌の柄を手先だけで器用に、それこそバトンかステッキの如くクルクルと弄んでは回してみせた。


 成人男性が数人がかりでも持ち上げるだけでやっとであろう重量のそれを彼女はひょいと軽く持ち上げて肩に担ぐと、挑発的にすら思える表情でレフィリアに微笑みかける。


 何百メートルも吹っ飛ばされては遥か上空から地面に激突したにも関わらず、まだまだ彼女は十分に戦闘行為が可能のようだ。


「楽しむこと自体は構いませんよ。そうやって貴方が余裕をかましている隙に、私が仕留めさせてもらいますから」


 そう冷酷に言い捨てたレフィリアは一歩前へ踏み込んだかと思うと、一息でエリジェーヌのすぐ目の前まで急接近しては彼女に向かって剣を振るった。


「――おっと!」


 そっ首を刎ねようと容赦なく振るわれた光剣の刃をエリジェーヌは賺さず最小限の動作により大鎌の柄で受け止めては、煽るようなしたり顔を返す。


「ディバインデュアルソードッ!」


 しかしレフィリアは初手が防がれるのは織り込み済みとばかりに、同時にもう片方の手にも光剣を出現させると、むしろこっちが本命と反対側から勢いを乗せて斬撃を繰り出した。


「ちょっ、二本目!?」


 レフィリアが二刀を使える事に驚かされたエリジェーヌは、慌てて身を捻っては剣閃をスレスレで躱す。


 ただしそれだけで終わらず、即座に反撃として垂直に突き立てた大鎌の柄を掴んでは基点とし、まるでポールダンスを踊るかのような身のこなしで連続回し蹴りを放った。


「――ッ!」


 それを咄嗟に後方へ飛び退いて躱したレフィリアは、またすぐに前へと引き返して食らいつくようにエリジェーヌへと肉薄する。


「ストライクテンペスト――ッ!」


 その後、至近距離から超高速の回転斬撃を畳みかけ、エリジェーヌもまた直撃を防ぐ為に大鎌の刃を振るってはすぐさま攻撃を受け止めた。


 だが、その勢いと威力は予想以上に強烈で、生じた反動を殺しきれずにエリジェーヌは弾かれるように後ろへと大きく跳ね飛ばされては仰け反ってしまう。


「うおっとぉ……!」


(ヤバッ、手数も速度もあるのに一発が重い……! レフィリアちゃんってば、前に戦った時よりも明らかに力が増している……!?)


「はああッ!」


 エリジェーヌがよろけた体勢を立て直しながらそう分析している間にも、レフィリアは隙を逃さないとばかりに、間髪入れず距離を離さないよう斬りかかっていく。


「なんのッ!」


 ところがエリジェーヌもただ攻められっぱなしという事はなく、調子に乗るなとばかりに飛び込んできたレフィリアの剣をその場で受けきると、まるで見切ったように弾いては互いの間合いを突き放してみせた。


「……ッ!?」


 エリジェーヌの動きと気迫が明確に変化した事を認識し、レフィリアは一旦追撃を止めては彼女の様子を見定める。


「ふう……前に戦った時と比べて、随分とやるようになったねレフィリアちゃん。だったら私もそれに合わせた戦い方をしなくちゃいけないな」


 そう述べたエリジェーヌの手にした得物は、いつの間にか大鎌から形状が変わっており、棒の両端に鋭く長いやじり状の矛先がついた、いわゆる“両刃槍”の状態となっていた。

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