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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第2章:シャルゴーニュ編
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大魔導師と異世界で対峙する話⑥

 ――案内役の男賢者と護衛の竜騎士を先頭に、ルヴィスたちは通路から階段を降りて急いで下階へと向かっていた。


「お前は賢者の石と室内構造、そして敵の位置の把握に集中しろ。道は俺が切り開いてやる」


「ああ、任せたぜ。生命の探眼使ってる間は他の魔法が使えねえ……って、何だこりゃあ?!」


 男賢者が突然叫び出し、一行は一度足を止める。


「ちょっ、いきなり何よ!」


 女僧侶が声を荒げていると、視界の先にある通路の角からざっざと大勢が行進するような足音が聞こえてくる。


「――まさか」


「ああ、そのまさかだぜ」


 女僧侶の言葉に男賢者は頷いて息を呑む。


 数秒後、通路の角からはなんと大量のスケルトン兵士やゴーレムが大挙して押し寄せてきていた。


 ゲドウィンの言っていた通り、通路を埋め尽くすほどの行列が足高にこちらへ行軍してきている。


「地下へのルート自体はそんなに複雑じゃねえんだが、この先ずっとみっちり敵で埋まってやがるぞ」


「――はっ、上等。アンデッドなんて何体来ようと私の敵じゃあないわ!」


 今は杖を持っていない女僧侶は、まるで達人の格闘家のように構えを取って不敵な笑みを浮かべる。


 その様子を頼もしそうに横目で見ながら、竜騎士は敵の軍勢へ剣を向けた。


「何千何万、雑兵が押し寄せようと王国軍最強の精鋭部隊と誉れある勇者の兄妹が負けることはない。――突破するぞ!」







 竜騎士たちが地下への道を切り開いている間、レフィリアは赤いゴーレム相手に一人奮戦していた。


 いくら天井が高く広いホールといえど、先のゴーレムより巨大となれば動きが阻害される、とレフィリアは考えていたがそうはならなかった。


 なんとゲドウィンが空間操作を行ったことで、戦場となっている室内はどこまでも広くなったのである。


 ゴーレムは巨体とは思えない程の素早い動きで室内を縦横無尽に動き回り、まるで蠅でも叩きそうとするかのような勢いで剣を振り回しまくった。


 レフィリアが斬撃を避け続けていると、視界の外からゲドウィンが無数に魔法陣を空中展開して、そこから光線をレフィリア目掛けて発射してくる。


「ッ――!!」


 しかしゲドウィンの放った光線はレフィリアに直撃しても全て弾かれるだけで、全くダメージにはならなかった。


 初めは反射的に避けていたレフィリアも、今は効かないと判っているので無理に避けようとはしていない。


 集中するべきはゴーレムの方。ゴーレムが振り下ろしてきた剣を避けると同時に、まだ地面についている刀身を駆けあがって跳躍する。


「はああッ――!」


 再度、頭部をガードしようとしたゴーレムの片腕を今度は手首から切断する。


 斬り落とした手首と同時にレフィリアが地面へ着地した時、周囲の床から複数の黒い鎖が現れた。


「ッ――?!」


 それは影で出来たような先端の鋭い鎖で、レフィリアを縛り上げようと独りでに動き纏わりつこうとしてきた。


 しかしレフィリアに触れる前に見えない壁のようなものに阻まれ、彼女を捕縛することが出来ないでいる。


 動きを止めた鎖の群れをレフィリアは剣の一閃で斬り払う。


(これも通じないか……!)


 足を止めているレフィリアに対し、ゴーレムがまた覆い被さるように飛びかかる。


 しかしその攻撃をかわすと、レフィリアはゴーレムを踏み台にして三角飛びのように今度はゲドウィンの方へ向かって跳躍してきた。


「うおッ……?!」


 突撃と同時に斬りかかり、ゲドウィンは反撃の魔法を放つ間もなく真っ二つにされる。


 ――だが、ゲドウィンの身体は斬られた瞬間に爆発を起こし、絶対零度の白い冷気を勢いよく放出した。


 レフィリアは凍てつく冷気の直撃を受けてしまったまま、地面に着地する。


 それでもレフィリアは凍り付くどころか、衣服を汚すことすらなかった。


 彼女が地面に降りてから体勢を整える瞬間、今度は背後から激しい雷霆が飛んでくる。


 人間どころか大柄な魔獣でも一撃で消し炭になるような威力の電撃だったが、もちろんレフィリアには傷を与えられなかった。


 レフィリアは後ろを振り向くと、空中にいる新たな身体のゲドウィンを見上げて言い放つ。


「……貴方も凝りませんよね。もう何をやっても効かないと判り切っているのでは?」


「色々と試しているのですよ。それに、私とゴーレムが揃っていないと、貴方をここに留められないので」


 途端、レフィリアの側面から先ほど彼女が切断したゴーレムの手首がロケットパンチのように飛んできた。


 流石のレフィリアも不意をつかれて驚いたが、彼女が迎撃する必要もなく、ゴーレムの拳は見えない壁に阻まれて弾かれる。


「ッ――!!」


 飛んできた腕をバラバラに斬り刻むと、今度はまたゴーレムが剣を振り上げて飛びついてきた。


 避けながら確認すると、斬った筈のゴーレムの腕はいつの間にか既に再生しており、万全の状態となっている。


「これならどうですかね……!」


 空中をすっと移動するゲドウィンが腕を前に伸ばすと、次はゴーレムの攻撃が外れたことで生まれた瓦礫の山が宙に浮かび上がった。


 無数の瓦礫は散弾のようにレフィリアへ一斉発射され、雨の如く彼女へ降りかかる。


 しかしそれも結果的にレフィリアへのダメージには繋がらなかった。


(――なるほど。この女騎士は魔法が全く効かないどころか、そもそも飛び道具が通じないのか)


 レフィリアはゴーレムの追撃を避けると同時に突撃し、滑り込むように足元へ潜り込んで両脚首をすれ違いざまに切断する。


 足首を失ったゴーレムはバランスを崩すと、勢いよく倒れてその巨体を地面に打ち付けた。


(カリストロス君が撤退せざるを得なかったのは、この特性が原因だろうな。……何にせよ、もう少し時間を稼がなければならない)


 眼下で倒れ伏しているゴーレムは即座に足を再生させて、またレフィリアの方へと向き直る。


 戦いは現状、完全に膠着状態である。どちらかが勝つには、先に状況を変える必要があるが――。

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