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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第2章:シャルゴーニュ編
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大魔導師と異世界で対峙する話④

「流石は僕たちと同じ、異世界からの転移者ですね」


 その人影は、貴族のような格好に派手な羽根つき帽子を被った骸骨――ゲドウィンであった。


「ああ、心配なさらずとも皆さん固まっただけでまだ生きていますよ。意識もありますし、我々の話している内容も聞こえている筈です」


「……あなたが、邪導のゲドウィンですか」


 レフィリアの問いにゲドウィンは頷く。


「如何にも。この世界の住人からはそういった二つ名で呼ばれています。――貴方がレフィリアさんですね? カリストロス君から話は伺いましたよ」


「そうですか、なら話は早いです」


 そう言ってレフィリアは静かに光の剣を構えなおす。


 しかしゲドウィンは手のひらを向けて横に振ると、彼女を制止した。


「ああ、待って。別に僕は貴方と争うつもりはないんですよ」


「……? どういうことです」


 レフィリアは怪訝そうな表情を向ける。


「レフィリアさん、いくら人類側に呼ばれたとはいえ、あくまで同じ条件の相手と六対一でやり合うのはあまりにあんまりではありませんか? 僕たちも好き好んで同郷の者をリンチしたいとは思っていないのです」


 ゲドウィンは穏やかに落ち着いた口調で話を続ける。


「むしろ、僕たちは貴方を仲間に招きたいと考えています。せっかくの異世界転移です、同郷同士で喧嘩なんかせず一緒に楽しみましょうよ」


「……そんな事を言って、私を油断させようとしているだけなのではないですか?」


「いえいえ。そもそも貴方がたを本気で始末しようとするなら、地下用水路に入って来た時点で襲撃してますよ」


 そのゲドウィンの発言に、レフィリアは目を見開く。


「貴方がたがこそこそ通って来た隠し通路を罠だらけにして殺戮することも、通路自体を爆破して生き埋めにすることも、その気になればいつでも出来たのです」


「――貴方、私たちが侵入してきたルートを初めから知っていたのですか?」


「そんなに意外でしたか? ――ええ、知っていましたとも。第一、あの隠し通路の存在を貴方たちに教えた人間は、僕がわざと生かして暗示をかけた上で国外に放ったのですから」


 最初から自分たちの動向を知られた上で監視されていたことに、レフィリアはぞっとして気味が悪くなる。


「城内の警備もそんなに大したことなかったでしょう? あれは貴方に不自然に思われないようにしながらここまで来てもらう為の、言わば僕からのサービスです。その気になれば、城中の通路をコミケの行列並みに兵士でいっぱいにすることだって出来るのですよ?」


 ゲドウィンは、あくまで自分は優位な立場にいるのだという余裕な姿勢を崩さない。


「レフィリアさん、人間の味方なんて止めて僕たちの仲間になりませんか? 絶対に悪いようにはしませんし、魔王さんにも僕から執り成しますよ。他の異世界転移者たちも、一人気難しい人はいますがそれ以外はみんな気さくで優しいですし、きっと快く歓迎してくれます」


 話しながら、ゲドウィンは良い事を思いついたように手を叩いた。


「そうだ。あの隠し通路を通って来たということは、レフィリアさんは多分エーデルランドから出向いてきたんですよね。でしたら、そのエーデルランドを滅ぼして自分の支配地にしちゃったらどうですか? 僕も全面的に協力しますし、国が手に入ったら自分好みに好き放題弄りまわして構いませんよ」


 ゲドウィンの眼窪に灯る赤い光が、まるで邪な笑みを浮かべているかのように妖しく輝く。


「人を殺すのも、あえて生かして弄ぶのも自由です。――楽しいですよ、絶対に楽しいですよ」


 友好的に手を差し伸べるゲドウィンに対し、レフィリアは静かに頭を横に振った。


「せっかくのお誘いですけど、お断りします。――貴方たちと違って私はまだ、人間を辞めていないので」


 レフィリアのはっきりとした拒絶を示す発言に、ゲドウィンは伸ばした手をゆっくりと引いた。


 そして、数秒の沈黙のあと――


「――そうですか、それは残念です。とてもとても残念です」


 ゲドウィンは怒り出すでもなくあくまで穏やかな口調のまま、レフィリアを真っ直ぐに見据える。


「ですけど、貴方が人間のままでいたいと言うならば仕方がない。――ここで死んでもらわねば」


 途端、レフィリアのすぐ目の前に何の前触れもなく、ソフトボール程の大きさをした光の球が現れた。


「ッ――?!」


 それはまさしく、小さな太陽だった。


 目が潰れそうなほどに白く眩い光を放ち、そして鉄も一瞬で蒸発しそうなくらいの凄まじい熱量を感じる。


 その光球はレフィリアが避けようと飛び退く間も与えず、即座に爆発して視界を真っ白に塗り潰した。


 銀色に染められたホールのような空間が、一瞬にして溶鉱炉とも焼却場ともいえる灼熱の世界となる。


 ――それは冗談抜きで正真正銘の核爆発であった。

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