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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第2章:シャルゴーニュ編
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大魔導師と異世界で対峙する話②

「……何よ、あれ?」


 杖を握り締めながら女僧侶が問いかける。


 視線の先にある像は、全長も金剛力士像と変わらないくらいの八メートル近い大きさだった。


 そして何より目を引くのが、全身が鏡の如くメッキ加工されたかのようにギラギラと輝いている点である。


 顔にあたる部分には丸くて赤い水晶体が、まるで目を思わせるように一つ設けられていた。


 どちらの像にも、片手には巨大な片刃の斧剣が握られている。


 竜騎士は大剣を構えながら男賢者の方を見た。


「――明らかに門番といった感じだが、あれは襲ってきそうか?」


「ああ、ご名答。あのでかいのはバリバリ反応があるからバッチリ動くぜ。……しかしなんだあのゴーレム、気持ち悪いぐらいツルツルピカピカしやがって」


(ゴーレムっていうか――何だか小さい時に観た、ヒーロー番組に出て来る敵宇宙人が操るロボットみたいだなぁ……)


 レフィリアが内心そんなことを考えていると、ルヴィスが剣を持ち直しながら声を上げた。


「何にせよ、あそこに構えられている以上は避けることが出来ないでしょう。――気を付けて近づきますよ」


 全員が頷き、注意を払いながら部屋の奥にある扉へと向かう。


 すると案の定、接近を感知した二体のゴーレムが目のような水晶体を赤く発光させたかと思うと、一行の行く手を遮るように動き出した。


「やはり動き出したか!」


 前衛の竜騎士が足を止めた後ろで、男賢者が魔杖を構える。


「どきな、ひとまず俺が吹き飛ばしてやる。――集え、熱き光の粒子。炸裂せよ――フォトンブラスト!」


 男賢者の周囲に六つの大きな光の魔法陣が展開し、そこからビームとも言うべき凄まじい熱光線が放たれる。


 人間どころか石で出来たゴーレムすら跡形もなく溶解させる熱量と威力の飽和攻撃。


 しかし二体のゴーレムに直撃した筈の光線は、まるで遮られた水流のように逸れて周囲の壁を破壊したに留まった。


 当のゴーレムには全く損傷が見受けられず、男賢者は目を見開く。


「おいおい、今のが効いてないだと?!」


「ばっか! あんなギラギラしたのに光なんかあてないでよ。目が眩むでしょ!」


「うるせえ! あれは鏡面による反射じゃねえ! れっきとした魔法耐性だ!」


 光の剣を構えたレフィリアが、竜騎士たちの方を向く。


「片方は私が相手します。もう片方をお願いします」


「ああ、任された!」


 竜騎士は叫びながらゴーレムに正面から飛び掛かり、袈裟めがけて勢いよく大剣を振り下ろす。


 ドラゴンすら仕留めたとされる大剣による強烈な一撃。


 しかししろがねのゴーレムには一切通じず、がきんと金属同士のぶつかり合う大きな衝撃音と振動をおこしただけとなった。


「何ッ――?!」


 途端、竜騎士は左からゴーレムの巨大な腕に殴られ、大きく吹っ飛ばされる。


「ぐあっ……!」


 もう一体のゴーレムも斧剣を振り上げ、レフィリアめがけて突撃を仕掛けてきた。


「おっと!」


 レフィリアは即座に数歩横へ逸れて斬撃をかわすと、続けて地面に振り下ろされた斧剣の上へ器用に飛び乗る。


 そしてそのままゴーレムの腕を伝って走ると、ゴーレムの顔面に向かって跳躍し、派手に斬りかかった。


「はあっ――!」


 だがゴーレムは斧剣を持っていないもう片方の腕で咄嗟に頭部を庇う。


 頭の代わりに片腕が肘から一撃で切断され、重い音を立てて地面に落ちる。


 その時、レフィリアの視界に映ったゴーレムの顔面、頭部中央にある目のような水晶体がこちらを凝視しながら猛烈に光り輝いていた。


 明らかに何かを放とうとしている。


(やばッ――?!)


 予想通り、ゴーレムの目からは超高速で熱光弾が発射された。


 レフィリアは反射的に剣の刀身で熱光弾を弾き飛ばし、同時に後ろへと飛び退いて一度距離をとる。


(このゴーレム、図体のわりに動きが素早い……!)


 眼前の巨像はとてもゴーレムとは思えない、とても滑らかで機敏な動作をする怪物であった。


 城内の道中で出会った通常のゴーレムのような動きの鈍さは一切無い。まるで本当に意思を持って生きているかのようである。


 レフィリアの反対側、もう片方のゴーレムの周りでは、女僧侶が杖を掲げて詠唱を行う。


「溢れ出でよ、猛き力の奔流――ブーステッド!」


 殴り飛ばされた竜騎士の筋力を始めとした身体能力が飛躍的に向上する。


 竜騎士はすぐに立ち上がると、追撃してきたゴーレムの振り下ろした斧剣を真下から大剣で受け止めた。


 しかしゴーレムのパワーは凄まじく、竜騎士は何とか歯を食いしばって耐えているものの、しばらくすると押し切られてしまいそうである。


「くそっ、やべえぞ。だが、あのゴーレムには魔法どころか物理攻撃もろくに通じねえ。何か手は――」


 すると、ルヴィスが男賢者に声をかけた。


「ホーリーバインドは使えますか?」


「ああん? そりゃ使えるが……何か策があるのか?」


「ええ、打開できるとは限りませんが何もしないよりはいいでしょう」


「……分かった。いくら攻撃魔法が効かないっつっても、縛るくらいはできるだろう」


 男賢者は杖を構えて詠唱を始める。


「邪悪なるものを聖なる鎖で縛り上げろ――ホーリーバインド!!」


 途端、ゴーレムの周囲から無数に光の鎖が伸びて、全身をぐるぐる巻きに縛り上げる。


 動きを封じられたゴーレムは、拘束から逃れようと攻撃を止めてもがき始めた。

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