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最奥で待つ異世界迷宮の主の話③

 その後、護符タリスマンを装備しなおしてからの状態異常治療キュアライトを受けて復帰した賢者妹は、半ばやけくそ気味なくらい気合を入れた浄化魔法でフロア内の催淫瘴気を浄化した後、女狙撃手と女発破師の状態異常も解除した。


 また、ダンジョンの最深部であるフロアの奥には、サキュバスクイーンが外へ出る時に使う転移用魔法陣が隠されており、賢者妹の魔審眼によって発見したレフィリアたちはそれを利用して、帰りは楽々と一気にダンジョンの入口まで戻って来る。


 するとそこには、ダンジョン入口の見張りをしていたルヴィスとキャプテン、そして遠隔透視リモートビューイング用の水晶玉などを片付けている最中のドクターが待っていた。


「よう、お疲れさん。色々と大変だったみてえだが、中々な戦いぶりだったじゃねえか」


「って、キャプテンたちもしかしてずっとここで観てた訳? 遠隔透視魔法リモートビューイング使って」


「ああ、お前ら二人の見っともない有様もキチンと観てたぜ。何なんだ、偉そうにしてたくせにあの体たらくは」


「うーん、それに関しては面目ないというか……」


 女狙撃手が目を逸らしながら髪を掻いていると、女発破師の方が申し訳なさそうな表情で賢者妹の方を見る。


「えっと、その……。ダンジョン探索中は色々と意地悪なことを言ってしまってゴメン。君の話聞いてたら、何だか羨ましくなって少し嫉妬してしまったというか……。何にせよ、ごめんなさい」


「あ、いえ……。こっちも知らないうちに無神経なこと言ってたかもしれないですし……。失敗とか迷惑かけたりとかもしちゃいましたし……」


「でも君の魔法の実力がすごいのはよく分かったよ。他にも色んなことが出来るんでしょ? こんなこと言える筋合いじゃないのは解ってるけど、ウチらに協力してもらえたら嬉しい……、です」


 そう言って、女発破師は賢者妹へと照れくさそうに手を差し出す。


 その様子を横目で見て女狙撃手の方も小さく息をつくと、謝るような仕草をしながらレフィリアたちの方を向いた。


「うん、アタシの方も辛辣な態度とってゴメンよ。なんか知り合いが一気にいなくなったもんで、どうにもピリピリしてたというか……。でもそんなの言い訳にならないよね。すみませんでした……」


「いえいえ、私たちの事を認めて頂けたのならそれだけで十分ですよ」


「そう言ってもらえると助かります。アタシも相棒と同じこと頼むけど、どうかアタシらと一緒に戦ってくれないかな?」


 女発破師と同様に手を差し出してきた女狙撃手に対し、レフィリアはしっかりとした握手を返した。


「はい、こちらこそ宜しくお願いします!」


 賢者妹も女発破師の手を両手で強く握って、笑顔で返事を返す。


「喜んで協力させていただきます! あとついでにお友達にもなってくれると嬉しいんですけど!」


「友達? んー、ウチみたいのでいいんなら構わないけど……」


 女狙撃手と女発破師がレフィリアたちを認めたところを微笑ましく眺めていたキャプテンであったが、タイミングを見計らって全員に元気よく声をかける。


「ようし! 二人がレフィリアさんたちを認めたってんなら、うちの団からももう文句は出ねえだろうな! ……それはそうと、せっかくダンジョンに潜ったってんだから、お宝の一つでも見つけてきたんじゃねえのか?」


 キャプテンの言葉に対し、女狙撃手が何ともバツの悪そうな様子で受け答える。


「あー、それがこのダンジョンに眠る本来のお宝は既に持ち去られてたんだよ。残ってたのは空の宝箱だけ。迷宮主ボスのサキュバスクイーンも何か月か前に一度誰かに倒されたって言ってたし」


「マジか、実はもう踏破クリア済みのダンジョンだったとは……。冒険者組合に所属してない猛者が誰か入り込んでたりしたのかねえ」


「その代わりと言ったら何だけど、こんなもの拾って来たんだけどさ」


 すると女発破師は、荷物の中から小さな王冠クラウンを取り出して見せた。


「あん? それってもしやあのサキュバスの親玉が被ってたヤツじゃねえのか?」


「そうそう、これだけなんか消えずに残ってたもんだから拾ってきたんだよ。そこの賢者ちゃんによると結構すごいマジックアイテムみたいだし」


「へえ、そうなのか。どんな効果のアイテムなんだ?」


 ルヴィスに問われて、賢者妹が頷きながら王冠を差して説明を始める。


「その王冠クラウンは被ると一時的に種族としてのサキュバスクイーンに変身することが出来ます。勿論、女性専用のアイテムにはなりますけど」


「一時的にということは、ずっと変身しっぱなしという訳ではないんだな」


「はい。あくまで変身魔法がかかるだけですので、装着者が自分で効果を解除するか、残存魔力が3割を切ると自動的に変身が解けます。別に付けると外せなくなったりデメリットが生じるような呪い系装備ではありません」


 賢者妹からの解説を受け、キャプテンは腕を組みながら、小さいながらも豪奢に輝く王冠を眺める。


「ほーん、しかし女にしか扱えないってんなら、今ダンジョンに潜った連中の誰かにやるしかないわなぁ。俺たち、野郎どもが持ってたってそれこそ宝の持ち腐れだしよ」


「じゃあ聖騎士さま、これ要ります? この王冠被ってたボス倒した張本人ですし」


「あっいや、私要らないです。多分そういうの相性が悪いというか、私なんかじゃ上手く使いこなせないでしょうし……」


「私も結構です」


 女発破師に王冠を差し出されるも、レフィリアは困ったような表情で手を横に振って断り、隣にいたサフィアに至ってはキッパリと拒否を示す。


 まるであの女淫魔が身に着けていたものなど、ほんの少しでも触れたくなどないとばかりに。


「じゃあ、コレ――」


「あー、アタシも要らないかなぁ。アタシの戦法的に使う機会ないっていうか、役に立ちそうにないし。しかもそれって魔力依存のアイテムだから、魔法職の人が身に着けるのが一番効果を発揮するんじゃないの?」


 相方の女狙撃手からも拒まれ、女発破師は仕方なさげに残った賢者妹の方を向く。


「……これ、上げる。友達になった印というか、記念ということで受け取って」


「ええと、その……。ごめんなさい、私も要らないです。それ被るとなると、お気に入りの帽子脱がなきゃいけなくなるので……」


「ふうん、君の友達になろうって発言は所詮その程度のものだったんだ」


「えっ、そんな訳じゃなくてその……」


 困惑したように縮こまる賢者妹を見かねて、キャプテンが即座に間へと割って入る。


「あー、キャプテン命令だ。その王冠はお前が持ってろ。反対意見は聞かん」


「ええー、これウチが持つのー? ていうか、ウチに公衆の面前で裸同然の格好になれっていうの? キャプテンのスケベ! ロリコン! 犯罪者!」


「おうおう、酷い言いがかりはよせ!」


「ん-、確かにあんな紐みたいな衣装じゃ貧相ペッタンコな身体が露わになって逆に余計犯罪的だよねぇ。くすくす……」


「……おい、それ以上言うと組織うちの野郎どもが大勢集まっている前でパンツ、ビッショビショにさせるぞ」


「いや、それマジで止めて。流石にそれは死ぬほど恥ずかしいから」


 女発破師と女狙撃手が漫才のような言い合いを始めだしたところで、今まで黙っていたドクターがキャプテンの後ろから声をかける。


「キャプテン、ここでの用事が済んだのならさっさとアジトまで戻りましょう。こんなところにダラダラ長居するものではありませんよ」


「おっと、そうだな。――おいテメエら、いつまでもくっちゃべってないでとっとと撤収するぞ。そんでもって帰ったらすぐに結果報告して、組織うちの団員たちを納得させるように!」


「「はぁい」」


「じゃあ、レフィリアさんたちも行きましょうぜ。帰ったら今度こそ、歓迎会らしい宴を開いてやるからよ」


「そ、それはどうも……」


「そんでもって、本格的にドライグ王国へ攻め込む作戦会議と洒落込もうじゃねえか!」

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