43/追悼
申し訳ありません、この回の直しに手こずっていまして遅くなっています。
>_<;
自分「ぬうぅううんっ!!!」
狐乃「黙ってやれよ」
自分「おろろーーん」
狐乃「キモい声で鳴くな」
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自分「もーーーーーーーしわけーーーありませぇーーーーーーーーーーーーーーんんっ、この回はどーーーーーーやってもーーーーーーーーー、直すセリフが浮かばなくてえぇええっ!」
遠くで鶏の鳴き声が聞こえる。
いつの間にか眠りについていたらしく目覚まし代わりに起こされた。
腕時計の時間は七時三十分。
清潔な服に着替え、屋敷まで歩くと犬威と狸雲が客間で談笑している。
「遅くなりました」
「いえ、お疲れかと思い起こさずにおりましたので。朝餉の支度をいたしますのでしばらくお待ち下さい」
狸雲は蓮美に座布団を用意すると静かに部屋を出ていった。
「眠れたか?」
座った蓮美に犬威は笑顔を向ける。
「はい」
昨夜見た事を考え過ぎるのはやめた。
認められる為について来た、悩んで前に進めなくては意味がない。
自ら飛び込んだ世界に後戻りする気はないのだから。
「皆さん早いんですね」
薪を割る音に家族を呼ぶ声が遠くから聞こえてくる。
「幽世での暮らしは様々だが、ここは古くからの生活を守っているようだな。昔の時間の進め方は夜明けと共に作業をこなして夕暮れには一日を終えた。近代の様に電気も水道もないから自然の巡行に従い生きていたんだ」
「今とは大分違うんですね」
日常のライフラインは無駄がなく、ネット環境があれば大体は揃う。
にも関わらず時間が止まったままの住民達はあくせくしていない。
野菜を交換し合い、おしゃべりしながら井戸水を汲んでいる。
人間と背中合わせの暮らしを全て知った訳ではないが、利便性が心の充足に直結していはいないと教えられたような気がした。
「お待たせいたしました」
狸雲が戻り、お膳には麦飯と味噌汁、豆腐に山菜が盛られている。
今朝は狸雲も加わり食事を囲んでいると。
「人間の姉ちゃーんっ!」
玄関から大声がして出てみると子供達と母親に連れられた伊助がいた。
「きのうはうちの子を助けて頂いて」
伊助の母は頭に巻いていた手拭いを取って頭を下げる。
「あんたもお礼をいいな……」
横で小さくなっている伊助の背中をポンと叩いた。
「犬のおじさんありがとう、人間のお姉ちゃんもどんぐりぶつけてゴメンなさい。助けてくれてありがとう……」
「ケガはしてないからいいよ」
「遊ぶのはいいが子供一人で遠くへ行ってはいかん、いいな」
「……うん」
涙目の伊助に犬威が優しく諭した。
「それで返せるものがこんなのしかないんだけど……」
母親は下げていた籠から大根にごぼうを取り出して差し出したが。
「ありがたいが我々は帰らねばならなくてな、持ち帰れないので狸雲殿に譲ってもいいだろうか?」
「構わないよ」
野菜を狸雲が受け取り、蓮美を除いた大人達が立ち話しをしていると。
「姉ちゃん」
「お姉ちゃん」
「朝飯は食ったのか?」
「もう食べた?」
狐の子、アナグマの子、兎の子、リスの子が蓮美に集まる。
「今食べた所だよ」
「そっか……」
子供達は頭を寄せるとゴニョゴニョと相談した。
「今日帰るのか?」
「うん」
するとまたゴニョゴニョと相談する。
「家の手伝いがあるんだけど、姉ちゃんと遊びたいって親に頼んだらいいよって言われてさ。だから帰るまで俺達と遊ぼうぜ」
狐の子の意見に他の子達がうんうんと頷いた。
「なら伊助君もいいかな?」
蓮美が伊助に振ると下を向いてモジモジする。
「母ちゃんに聞かないと……」
「じゃあ俺が聞いてやるよ」
兎の子が話し中の彼の母に尋ねると了解が得られた。
「よしっ、決まりだっ!」
昼には戻る約束をしてかくれんぼをした場所へと向かう。
「朝から遊べるなんて贅沢だなっ!」
「何するっ!」
「思い出になるのがいいな、全員でなんか作るとか」
「いいね、作ろうよ」
子供達が思い思い話し合っていると蓮美が提案を出す。
「私がお願いしてもいいかな?」
彼女の希望は祠を作るというものだった。
なくなってしまった水の神の祠をもう一度作ってあげたい。
弔い、とはいかないが。
せめてもの、マガツカミとなった魂を形だけでも癒してあげたかった。
「いいぜっ!」
「いいよ」
「面白そうだなっ!」
「楽しそう」
四人が賛成してくれると伊助が手を挙げる。
「俺、大工道具持ってるよ」
伊助が家からのこぎりに鑿、金槌などの道具を持参した。
「人間の村にあったんだ」
集落跡で見つけ、油紙に包まれ錆だらけにはなっていなかったそうだ。
「※砥石で磨いて小物とか作ったり……」※刃物を研ぐ石
道具の他にも手製の竹とんぼや竹馬なども見せてくれる。
「お前すごいじゃんっ!」
「じゃあ祠も作れるのか?」
「大きな物は作れないけど、材料が揃えば……」
「作るのは任せて私達は材料を集めてもいいかな?」
「分担したら早いと思うし」
「いいよ」
伊助が引き受けてくれると廃材などを探して持ち寄った。
彼は板を竹の物差しで測り、炭で目印をつけるとのこぎりで切りだしていく。
「本物の大工みたいだな」
「ホントだな」
「のこぎりの使い方が上手だね」
「上手だよね」
狐の子、兎の子、アナグマの子、リスの子が並んで作業を見守った。
「誰かにやり方は教わったの?」
図案もないままテキパキとこなし、手慣れた様子に蓮美は感心する。
「ううん、前にいた村で物を作るのが得意なじいちゃんがいて、時々見てて覚えたんだ。道具を見つけたら懐かしくなって、なんか作れるかなって始めたら楽しくなって……」
「でも見ただけで作れねえぞ」
「すげえなお前」
「職人さんみたい」
「将来は村の大工さんだね」
子供達が褒め合うと伊助は耳を丸めて恥ずかしがった。
「伊助君、物作りが好きなら伸ばしてみるといいかもしれないよ」
子供ながらも大人並の才能を蓮美は感じる。
「伸ばす?」
「うん、得意な事や好きな事を練習すると自信がつくよ。もしかしたら本当に将来は大工さんになれるかもしれない」
「だったら俺はデッカイ家を建てて欲しいっ!」
「俺もっ!」
「デッカイ家を建ててもらうならデッカイお礼を返さないとダメだよ」
「山一つ分の野菜はいるよね」
四人のやり取りに泣き顔だった伊助も笑顔になった。
「もっと勉強してみようかな……」
祠は作り始めて二時間ちょっとで仕上がる。
驚いた事に伊助は材料になかった釘を使わずに仕上げてみせたのだ。
木を繋ぐ木組みという技術らしく、独学で学んだ工法らしい。
「あとは萱を編んで……」
四角く組んだ箱に皆で編んだ三角の萱の屋根をかぶせて完成した。
イメージは鳥の巣箱に似た感じだったが予想以上の出来になり驚く。
「スゴイよ、ありがとう」
「えへへ……」
伊助は耳を丸めてまた恥ずかしがった。
祠を運び、池の跡地へ訪れるとマガツカミがいた痕跡は見当たらない。
弓で仕留めた後、蒸気の様に掻き消え天へと昇っていったのだ。
その姿を泣きながら見つめていた。
星空へと消えていく。
人との暮らしを愛したかつての神を。
「この石いいな」
「大きすぎない?」
「運ぶの手伝うぞ」
「場所はどこがいいかな……」
「真ん中は良くない?」
土を盛り、平らにするとぐらつかない様に祠を建てた。
風で飛ばされない様に中に小石を敷き詰め、廃屋で見つけた小皿に生米と野菜の切れ端を供える。
ささやかだがお供えのつもりだった。
「お参りしようか」
「なんてお参りしたらいいの?」
安らかにお眠り下さいかな、と言うと。
「安らかにいぃっ!」
「お眠りくださいぃっ!」
と、狐の子と兎の子が手を合わせて目一杯に叫ぶ。
「そんな大声じゃ眠るどころか起きちゃうよ」
「だよね」
女の子達の冷めた反応に笑っていると伊助が何かを差し出した。
「お姉ちゃん、これあげる……」
「……キレイだね、それって確か」
黒光りする丸みを帯びた玉が掌にのっている。
「勾玉だったかな?」
「草むらに落ちてたんだ、珍しいからお姉ちゃんにあげようと思って……」
勾玉は日本古代の装飾品だ。
歴史に疎い蓮美でも知識はあったが気になったのは勾玉の造り。
遺跡で見つかるような古めかしさもなく現代的な真新しさがある。
落ちていたというが廃棄品に混じってでもいたのか。
「ありがとう、ここへ来た思い出にするね」
断る理由もなく、受け取ってポケットにしまったがやけにズシリと重かった。
「そろそろ戻ろうか」
「えーっ!」
「まだいいだろ!」
「もう少しいたら?」
「秘密の場所に案内してあげるから」
狐の子と兎の子は立ちはだかって止めようとするが。
「狸雲様にもう一日泊めてもらえるよう頼むから、ゆっくりしてけよ」
「ゆっくりしてけよ」
気持ちは嬉しいが、帰らなければいけないと伝えると。
「しょうがないよね、人間には人間の生活があるし……」
「私達とは違うから……」
しょんぼりとして狐と兎の子を女の子達が慰める。
「また会えるといいな……」
「人間にもいいヤツがいるのがわかったよ……」
「お姉ちゃんみたいな人間ばかりならいいのに」
「友達になれて楽しかったよ」
口々に子供達は言ってくれたが。
「でも、人間にはむやみに近づかないでね。私が来たのは特別な理由だから、約束して」
「……わかった」
「うん……」
「近づかないよ」
「約束する」
「僕も……」
これでいいのだ。
彼らの世界を守る為にも、人間全てが味方ではないと知らしめなければならない。
その事実として。
積み上げられたゴミの山が現実に証明している。
最後にもう一度祠に手を合わせ、屋敷に戻ると犬威は狸雲と縁側で茶を飲んでいた。
「そろそろお暇するとしよう。狸雲殿、世話になった」
「とんでもございません、どうぞお帰りもお気をつけて」
「姉ちゃん、元気でな」
「みんなも、祠を作ってくれてありがとう」
狸雲や子供達、村人に見送られ村の入り口から外に出ると、体がぐにゃりとする体感が再びした。
振り向くと来た時と同じ、しめ縄の括られた木と深い藪。
元来た獣道に続く坂が広がっているだけだった。
「ありがとう……」
森に向かって呟くと風が紙垂をひらりとなびかせる。
「朝霧君」
「はい」
「この場で少し待ってくれるか」
犬威は茂みをかき分け入っていくと、数分してすぐに戻ってきた。
黒ずんだ棒を抱え、バッグから縦長の木箱を取り出し、綿で包むと丁寧に閉まう。
パッと見で枯れ枝か何かかと思ったが。
「……それは」
「マガツカミに喰われた人間の骨だ。戦いを終えると見つかる事があってな、任務後に人間側に提出して遺族に返しているんだ。不明者とされた親族も安心するだろうからな、村には子供もいたので後からこうして回収したんだ」
色々あって慣れたのか、遺骨と聞いても感情が湧かない。
「そこまでされているんですね……」
彼らの命ある者、あった者へ払う敬意は徹底していると感じたが、話しを聞いてある考えが浮かぶ。
「人間とやり取りがあるんですか……?」
「ああ、悟狸さんから聞いてはいなかったか?」
「……そう言えば」
『実際ここは我々だけでなく人間側との共同運営で、世の中で起こる不思議な事案なんかも担当しているんだ』
忘れていたが入所当日に説明は受けていた。
「犬威さん、人間側とはどんな連絡手段を取っているんですか?」
「命がメールとやらでやりとりしているだけだが……」
「なら、担当を私に変えてはもらえないでしょうか?」
「仕事なら悟狸さんと話しあえばいいと思うが、急にどうしたんだ?」
「所に戻ったらお話しします。すみません、私もすぐに戻りますから待ってて欲しいんです」
「ああ、わかった……」
蓮美はスマホだけ持つと池の跡地まで急ぎ、カメラに切り替えると付近の写真を取り出す。
生地の裂けたソファー。
大量の古着。
カゴのない自転車。
あらゆる物を写し、何度もシャッターを切る。
マガツカミとなった水神の声を刻むように。
何枚も。
何枚も。
写真は十数枚に及び、撮り終えて犬威の元へと戻る。
「では行こう」
道を下り、振り返って広がる山並みを目にした。
青葉の映える山々と美しい青空を記憶深くに刻みつけるように。
※こちら直し後の二回目のコメントとなります。
自分「終わったあぁあああAAAAAAAAAA!!!」
狐乃「うるせぇ」
自分「終わった、終わったぁ、43話……(泣)」
狐乃「静かにしろよ」
自分「この回の直しは難しくてなぁ……(泣)」
狐乃「出て来る人物多かったしな」
狐乃「直しにどんだけかかった?」
自分「忘れたぁ……(泣)」
自分「なんか老けた気がする……」
狐乃「元からだ、気にするな」
狐乃「ここで悩んでたら次の新展開でもっと悩むぞ」
自分「だよなぁ……(涙)」
自分「読んで下さっている皆さん、そうでもないという皆さんもお待ち頂きありがとうございました。まだ直しは続きますが、気長にお付き合い頂けますと幸いです」
狐乃「よっしゃ、次の直しだ」
自分「うあぁあ……(涙)」




