42/戦いの後(のち)
二人が戻ると村人が松明を灯していなくなった伊助を探し回っていた。
犬威と蓮美が伊助を連れ帰ると安堵し、母親は真っ先に彼を叱ろうとする。
「理由あって一人でいたんだ、許してやってくれ」
泣きじゃくる伊助を見かねた犬威が庇った。
「マガツカミはいかがされたのでしょう?」
狸雲が尋ね、その日の内に鎮めた事を伝える。
「ありがとうございます、来て頂いて本当にようございました」
偶然とはいえ、自ら倒した蓮美は複雑な気持ちに苛まれた。
水の神だったマガツカミの記憶を覗き、言葉に表せない悲しみで頭は一杯になっていたからだ。
「さぞお疲れかと思います、屋敷に戻られ夕餉を召し上がられて下さい」
温かい食事で少しずつ現実感を取り戻す事ができた。
食後には離れの風呂に入り、一番風呂となった蓮美は汚れと疲れを落とす。
「いい匂い……」
桧の風呂にヨモギが浮かび、手に取り香りを嗅いだ。
風呂上がりには用意された浴衣に着替え、屋敷近くの庵へと案内される。
布団が敷かれ四角い提灯のような物が照明代わりをしていた。
蓋を開けると油なのか小皿に紐が浸り火がつけられている。
疲れが押し寄せ、灯りを吹き消すと早々に床についた。
「……」
障子の向こうからは涼やかな虫の音が聞こえる。
なのに心は落ち着かず、身を投じた初めての戦いに何の感情も湧かない。
あるのは虚しさだけ。
「私がした事は……」
眷属である職員や狸雲は神だったマガツカミが何たるかを知っている筈だ。
なのに語る事もせず、人である自分を責めたりはしない。
咎められないからこそ行いの正否もわからない。
「正しい?……」
月光が庭の花々の影を障子に映しだしている。
横になり影を見つめていたが、ふいに影の一つがゆらりと動いた気がした。
「!」
戦いの後で気が高ぶっていたせいか反射的に身を起こす。
「......」
用心しながら障子に手をかけると、屋敷の方で暗闇に佇む人影があった。
後ろ姿だが見覚えがあるシルエット。
犬威だ。
夜空に浮かぶ月を見上げ佇んでいたが、影だけで今の気持ちが伝わる。
寂しい、と。
その背中は語っていた。
マガツカミは人々と暮らした遠い過去を懐かしんでいた。
なき故郷を偲ぶ彼のように。
人間を救う為に故郷を去ったというが、あの言葉は本心だったのだろうか。
マガツカミを鎮める度に去来するのは自分と同じ虚しさなのではないのか。
蓮美は障子を閉めると布団に潜り、唇を噛みしめる。
受け入れて生きていくのだ。
喜びも、悲しみも、矛盾も。
不都合な真実も呑み込んで所の皆と進んで行く為に。
この先あらゆる難題が立ちはだかるかもしれない。
それでも後悔しない答えを見いだせるように。
祈り。
信じて。
私は生きていく。
読んでくださっている皆様、お世話になっております。
実は肩こりとドライアイがひどくなってしまい、しばらく更新をお休みさせて頂いていました。
放置していたらかなり重くなってしまい、少し休もうと思って昨日あたりに書き出したのですが、
もう少し緩く書けないかなとアプリとかあれこれ探していたら話しをどう書いていたのかすっかり忘れてしまいました。(本当の話しです……(冷汗)
ん?書けない。あれ?どんな風に書いていたっけ?と慌てまして、本当にズブズブの素人です。
基礎も何もないので何というか手探りでまだ書いている有様です。(冷汗)
※これから伺って頂けるかはわかりませんが、本当に意図も何もなく(浮かんだまま)書き進めていいる状況でして。
書きたいなぁと思う話しはあるのですが、都合で更新が遅くなる事もあるかもしれず、そんな中でもお忙しい中、お目を通して下さる皆様にはとても感謝しております。
気長にお付き合い下さり、ありがとうございます。
そう言えば、もう一つここでお詫びを。
この話しでは動物達に登場して頂いていますが、皆さん全てが動物が好きという事はなく、中には畑を荒らされたり、動物が好きではない、という方も当然いらっしゃると思います。
押しつけの様に感じられる方がもしいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
色々な考えがあるという事を忘れず、書かせて頂けたらと思っています。
ただ、初めの頃に「楽しく書きたいなぁ」と書いたのですが、自分では面白く感じても誤解を受ける表現をしてしまう事もありますので、書くのであればご説明など記載させて頂けたらと思っています。
そんなこんなでも、読んで下さる皆様に心から感謝を。
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※こちら二回目の直しの後のコメントになります。
自分「……」
狐乃「どうした、不満そうだが?」
自分「前回の41話、同じ文章を二回重複して載せてしまって……」
狐乃「おう」
自分「文章の言い回しとか表現の間違いはいいけど、そういう凡ミスは自分に腹がたってな……」
狐乃「おう」
自分「そういうのが猛烈に自分が許せなくて、悔しくて……」
狐乃「ほう」
自分「思わず声に出して叫んだよ」
狐乃「なんて?」
自分「ぎぃイいいイイいッ!」
狐乃「バケモンか」




