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やおよろず生活安全所  作者: 森夜 渉
一章 やおよろず生活安全所
10/62

9/昼食

「おーっ!」

並べられたご飯、味噌汁、きんぴら、酢の物を見て狐乃、悟狸、猿真、和兎が声を上げた。

「あったかい供物だ」

「お供物だね」

「供物じゃな」

「お供物ね」

狐乃、悟狸、猿真、和兎が食事、ではなく供物を前にして手を合わせる。

「いただきます」

居酒屋のまかない経験がこんな形で役立つなんて、と、蓮美も感慨深い。

今日来ていた児童教室の子供達にも先に振る舞っておいたが、とても喜んでくれていた。

「お味噌汁が熱いので皆さん、気を付け……」

言いかけたが各自食べだしている。

皆から遅れ、犬威がをいただきますを言って手を伸ばした。

自分は弁当持参だったので味噌汁だけを飲む。

「おいしいよ朝霧君。出汁もちゃんと取れていて味付けもいい、君は料理が上手いんだな」

味は口にあったらしい、感想を聞けたので安心する。

ただ、気になるのは命だけだった。

供物には手を付けず、ぼんやりと眺めている。

「どうしたんだ命、頂きなさい」

気づいた犬威がすすめた。

「いりません……」

「何を言っているんだ、食べなさい」

彼は怒っていた。

静かな物言いだが感情を抑えている、それぐらいは読み取れた。

蓮美は箸を止めて俯く。

自分が悪いのだ。

彼に怒鳴ったから。

きっと怒っているのだろう、だから食べたくないのだ。

「な、なら僕が食べちゃおうかなぁ」

悟狸がおどけた口調で並べた料理に目を向ける。

「いえ、私が」

「いや、俺が」

「食わんのなら貰おうかね」

悟狸の言葉は命の気を引く為の冗談と伝わっていたのだが、和兎、狐乃、猿真が残った食事を平らげていく。

「……」

彼は食べられる様を黙って見ていたが、机からボトルのドリンクを取りだし、一気に飲み干した。

犬威はため息をつき、悟狸は空になった自分の皿を寂しそうに眺めている。

初日のお供物の時間はこうしてあっけなく終わった。


皆さん、お世話になっています。

こちら二回目の校正でのコメントになります。


この回は短かったので早めに終えれました。

毎回こうならいいんですが……。


次の展開を目指しつつ、校正を続けたいと思っています。(^_^;)

引き続き読んで頂けますと幸いです。


どうかよろしくお願いいたします。





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