表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中途半端2  作者: ひひらいかるま
5/5

未核という男

人は簡単には変われない。だけれど、変わってしまえばもう元に戻ることはできない。


舞台は夜。細道に立つ一人の男に三人の人間が囲む。囲まれている男の名は未核みかく。見た目は20代前後。黒いコートを羽織り、黒いハットをかぶっている。気品あふれる全身黒コーデはまるで死神のようであった。


未核は変わてしまった。あのお方に会う前まではありすら殺すことのできない酔狂すいきょうな男であった。

「ぶちゅ。ぶちゅぶちゅぶちゅ。これで一人目。」

バケツにたまった、ペンキを地面にたたきつけたようにあたり一面真っ赤に染まる。

未核に殺された男の名前は剛田武ごうだたける。武術を極め黒帯をその手に握りしめたが、家庭崩壊で多額の借金を背負い、両親ともに他界。残された弟を食わせるため銀行強盗を何度も行った。だが、一人の青年のヒーローじみた行動により、警察に捕まり牢屋へ。同じ刑務所で捕まっていた難波海士なんばかいし鳥谷とりたに璃々りりあと手を組み脱獄。そして細道で未核に引き止められ今に至る。

「おいしい。おいしい。この肉厚。鍛えている人間の味だあ。」


未核は変わってしまった。あのお方に会うまではベジタリアンであった。野菜を好み、肉を嫌う。そんな男であった。だが今は、人肉をこよなく愛し、野菜を食べるという風習は、彼のもとから消え失せてしまった。

死体にむしゃぼりつく未核に難波、鳥谷はともに足を震わせ恐縮していた。悲鳴すら出せない恐縮。筋肉が固くなり、身動き一つとれない。

「あぁ!いい!その顔いい!恐怖というスパイスがかかった人間はたまらない」


未核は変わってしまった。あのお方に会うまでは病弱の体であった。筋肉が少なく皮膚から骨の形が見えるくらい痩せ細っていた。未核は二人にとびかかる。それは百獣の王ライオンのような迫力ある狩りのようであった。続いて、剛腕で二人の頭を鷲掴して互いを無理やりぶつけた。頭を金属バット200km/hのスイングスピードで撃ち込まれたような衝撃が二人の頭を襲った。この時点で二人は即死した。未核は剛田武を喰らった時のように、体毛も皮膚も筋肉も骨も内臓も一つも残すことなく完食した。その後、未核は血の絨毯じゅうたんの中央に立ち手を合わせた。

「ごちそうさまでした。」


未核があのお方に授けてもらった能力は創食そうしょく。食べた人間の人生を知ることができるとともに擬態することができる。


未核はいつものように食べた人間の人生を拝見していると。最初に食べた剛田武の人生の中にあのお方の映像が映し出された。

「ひひらいかるま。みぃつけた♡」

未核は笑う笑う笑う。舌を出しながら笑う。舌にしるされたハートの入れ墨が月光に反射し黒く輝いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ