私を使って
信じろ。信じろ。信じろ!この子を。高山春夏を助けるんだ!思い出せ。初めてひひらいかるまにヒーローになろうと言われたときのあの目を。思い出せ。
「かみなおやくん。私を信じて。」
その瞬間。僕の体は光に包まれた。
「なんだ。これ。」
僕のからだの中で光があふれでる。光は僕の腫れた目を癒し、全治4か月ぐらいかかりそうな傷を完治した。光は僕の体の外にまでいこうとする。体が光で弾け飛びそうだ。僕は右手を胸に当てた。すると、ひひらいかるまの胸に触れた時のように右手が胸の中に沈み始めた。
「私を使って!」
僕は右手で掴んだ光を胸から放出した。放出した光はやがて1つの武器へと姿を変える。
「これは。。」
剣。全長85㎝の剣が僕の右手にはあった。剛田武は驚いた顔を見せながらも、高山春奈に向けていた銃口を僕に向けて発砲した。目が覚醒しているのか、銃弾が止まって見える。僕は片足でジャンプし空中で体を回転させながら、銃弾の軌道をそらした。着地した反動を使い、一気に剛田武の懐まで距離を縮めた。わき腹がスカスカだ。今なら剛田武の体を真っ二つにできる。今、この瞬間、剛田武の人生は僕が握っているという感覚になった。僕は、小手先を剛田武のみぞおちにめがけて突いた。すると、剛田武は後方に吹っ飛んだ。吹っ飛んだ先まで地面を蹴りあげて移動し、剛田武の喉元に剣の先端を突き付けた。その間わずか10秒の出来事であった。
「降参しろ、お前の負けだ。」
僕は、自分の口調が変化しているのに違和感を覚えた。剛田武の黒マスクは、ずれていて口元が見えた。口からは泡が噴き出ていた。どうやら失神しているらしい。それを確認すると右手に持っていた剣が光となってはじけ飛び、光はひひらいかるまの型へと変化した。
「これで良し!!」
ひひらいかるまはどこから持ってきたのか、縄で失神している剛田武を縛り上げた。安堵している僕に高山春夏が近寄ってきた。
「その、えと、あり、がと。」
カタコトで照れ臭そうに話す高山春夏の姿がそこにはあった。