最悪なシナリオ
なんとしても剛田武が銀行強盗するのを止めなければいけない。僕は一直線に仲座銀行へと走った。仲座銀行の入り口に剛田武より先に到着した。剛田武はよろよろと黒いパーカーのポケットに突っ込みながらこちらに向かってくる。引目を取らず僕は剛田武の目の前に立ちふさがった。
「なんだてめぇは?邪魔だ。どけ。」
ここで退くわけにはいかない。僕は勇気を振り絞った。
「銀行には入らせないぞ。剛田武。」
すると、僕の目に暗闇が襲い脳が揺れた。衝撃と共に僕は後ろによろめいた。殴られたのだ。目にも止まらぬ早さで殴られた。素人の拳ではない。明らかに武道の心得を得ていた。
「なんだ、てめぇは?察のぐるか?にしても弱いな。」
つかさず剛田武は僕に下段蹴りを入れる。太ももからおしりの辺りに激痛が駆け巡る。痛い。尋常じゃない。僕はその場にうずくまってしまった。そして剛田武は仲座銀行へ行って、行って、行って、、、。
「いかせない!!」
僕は激痛の中、剛田武の足首を掴んだ。
「僕はお前を捕まえる。絶対に!」
剛田武は蹴った、蹴った、蹴った、僕をとことん蹴った。
何本かあばら骨がおれたかもしれない。それでも、それでも。
「お前、うぜぇな。んじゃあこれならどうだ?」
するとパーカーの中に隠し持っていた。銃を取り出した。
「キャー!!」
周りの人間達がざわつき始める。女、男問わず剛田武に注目する。
バンッ!!!
銃声が空に響く。どうやら真上に向かって撃ったみたいだ。目が腫れてしまいうまく見えない。
バンッ!!!バリンッ!!!
次に窓ガラスが割れる音がする。仲座銀行のドアに向かって撃ったのだ。
「動くなぁあああ!!一人でも動いたら全員殺す!おい。そこのお前!!」
「ヒィイイッ!わ、わたしでしゅか、、。」
男性銀行員の恐怖に満ちた声が聞こえる。
「そうだお前だ。金を出せ!!ここにある金全部出せ!」
剛田武の罵声と銃声が銀行の中、外に響いていた。
「本当に銀行強盗が来るなんて、、、。」
そういいながら高山春夏は僕に近寄った。
「おい!そこの女!こっちにこい。」
脳裏に高山春夏が銃殺される映像が駆け巡る。
「いくな!!待つんだ!!」
微かにみえる高山春夏の姿に向かって僕は叫んだ。
「ガキは黙ってろぉ!!」
バンッ!!!
銃声が響く。撃たれてはないみたいだ。
「次、余計なこといったらぶち殺す。それとも今死んどくか、ガキ、、。」
ガチャという音が聞こえる。僕に向かい銃口を向けているようだ。
「やめて!!あなたのもとにいくから撃たないでください。」
「ほおぅ。良い女じゃねぇか。早くこい。」
一歩ずつ彼女が歩いていく。震えている。何もできない。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。このままじゃ。このままじゃ。
「かみなおやくん!」
頭の中からひひらいかるまの声がする。
「リミッターをはずして!じゃないと力が使えない!」
リミッター。何をいっているんだ。ひひらいかるま。
「無意識にあなたは私を受け入れていない。信じきれていない!お願い!私を受け入れて。リミッターを解放するの!私を信じて!」
どうやら僕はひひらいかるまをまだ信じきれていないらしい。仕方のないことだ。まだあって数分しかあっていない人間のことを信じきるのは難しいことなんだ。意識化では信じようとしても、無意識では信じていない。でも、信じなきゃ高山春夏は死ぬ。確実にだ。
「信じろ、信じろ、信じろ、信じろ、信じろ、信じろ、信じろ」僕は小言で唱えた。刻一刻と時間が過ぎていく。
剛田武の元に高山春夏がつくとすぐさま高山春夏の頭に銃を向けた。
「いいか!よく聞け!あと2分だあと2分で金を持ってこなかったらこの女を殺す!!!」
ざわつく人々の中。赤いサイレンを着けた車が到着した。パトカーだ。
「おぃ!誰だ!察呼んだ奴は!くそぉ!殺す!殺す!殺すぞぉ!」
まずい。このままだとまずい。高山春夏が銃殺される。くそ。くそ。くそぉ。僕は、俺は。何もできないのか。
「かみなおやくんっ!!」
ひひらいかるまの荒い声が聞こえる。信じなきゃあの子は死ぬ。信じろ。信じろ。信じろ。信じろ。信じろ。信じろ!!!