1話 旅立ちの時
(うぅぅ…頭がズキズキする。まるで誰かに殴られたみたいだ)
カイトは頭を擦りながら目を開ける。
「こっここはいったい?」
周りを見渡すと木々が生い茂る森の中だった
まさかの出来事に驚いたが。すぐに頭は整理できた。
「ムフフ」
カイトは笑を浮かべると両手を高く上げ叫んだ!
「キター!!これは異世界転生ってやつだよな〜!!」
「転生って事はやっぱりお馴染みのパターンだと俺は女の子にモテたりチートで世界を救ったりするウハウハ人生を歩めるのかな〜」
カイトはニヤニヤしながら呟く
この状況だと普通の人だったらなぜ自分がここに居るか自分は死んだはずでは?まずここはどこなのか?と頭を悩ませるものだ
しかしカイトの頭はそんな事を一切考えて居なかった。
何故か
カイトは悩むより目の前の転生の事で頭がいっぱいだったからだ。ずっと自分が転生した事に頭をぐるぐる回していた。
その頃…
*
『魔導王国』
玉座の間で3人の話し声が聞こえる。
1人は椅子に座り1人はその後ろに立っているその前で膝を着いている女が話を始めた。
「魔王様、アルス・ヴァイアから報告がありました。内容は『勇者に仕える天使が地に足を着けた』と…」
女は美しい声で話す。女の頭には角のようなものがあり腰からは黒い翼が生えていた。
「ハッハッハッハッ!遂に現れよったか勇者。我たちの代で必ず勇者を打ちのめしてくれる!待っていろ勇者!」
魔王は高々と大きな声をあげて笑った
「それと魔王様リサの準備も整ったみたいです。」
「よし、行動を開始せよ!」
「はい。お任せ下さい。」
女は一礼すると玉座の間を離れる。
魔王の後ろに立っていた者は一言も発さず静かに目を閉じたのだった。
*
時はカイトの転生前に遡る
(ザァ〜ザァ〜ザァ〜)
(ゴロゴロゴロ)
その日は少しいつもと違った
「ピピピピピピピピ」
「うぅぅぅはぁ〜もう朝か」
そう呟き背筋を伸ばしながら身体を起こす。ベットの近くの大きな本棚にはビッシリと小説が並んでいる。その中の1冊を手に取り読み始める。これはカイトの日課だった。
(こんな風に恋をしたり冒険をするなんて憧れるな〜)
いつものように考え込む。
ひとしきり読みを得るとカーテンを開ける。外はいつもより雨が地面を強く打ち付け風が窓を叩いている。
「昨日の天気予報では晴れとか言ってなかったっけ?」
そんな疑問を抱えながら学校へ行く準備を進める。
朝食のパンを焼き終えると食べながらテレビを付けた
「今日の未明に突如として発生した台風は勢いをましながら本島に上陸しました。」
「あっ今総理が会見場に姿を見せました!」
「え〜今回の突如として現れた台風は未だハッキリとした情報を得られない為一刻も早い対応と市民の皆さんの安全を第一に考え緊急対策本部を設置し対応を進めていきます。」
「どのような対応をして行くのか詳しくお聞かせください!総理!総理!」
総理は話を終えると足速にその場を後にした
(ピッ)
テレビを消す。
(ピロンッ)
携帯の音が鳴る。
(あっ学校からだなになに『本日は台風が非常に激しい為休校とします。家でしっかり勉強してください。』だって?!)
「よっしゃあ〜!」
カイトはガッツポーズをし、部屋に戻った。
勢いよくベッドにダイブする
そしてまたさっき読んでた小説の続きを読み始めた
(ん?あれ?なんか忘れてるような?、、)
「あっ!この前借りてたDVD今日までだ!延滞料金とか払えねぇよ!やべ!」
慌てて部屋を飛び出した
「てか、慌てすぎてカッパ着てねぇ、やらかしたなこりゃ」
そんなことを呟きながら自転車を前に進める
顔には雨が痛いほど打ち付け強風で前に進めない。
マンホールからは水が溢れていた。立ったら膝ぐらいの水位はありそうだった。水は濁り道路と歩道の見分けが付きにくい
周りを見てみると
行き交う車のタイヤからは水を巻き上げ歩行者にかかっている
(あんなにびしょびしょじゃ通勤なんてできたもんじゃないだろな)
(ピー、ピー、ピー)
(プー、プー、プー)
「この先通行止めです。引き返してください!」
「おい!!ここ通んねぇと仕事行けねぇだろ!回り道してちゃ仕事間に合わねぇだろ!」
前を見ると警察が交通整理をしていたり車の中から怒鳴るオッサンの相手をしたりしていた。
「朝から賑やか過ぎるだろ。てかうるせぇ〜」
横を通り過ぎながらそんな小言を口にする
自転車を一時進めるとDVDショップに着いた。
DVDショップは営業してたようだ。返却窓口に行きDVDを返す。
「よし!と」
(ささっ!早く帰ろ!ふくもびしょびょだしな)
また自転車をこぎ出す
「早く帰って、あの続き読みてぇ!あの主人公どうなるだよ!おい!」
ウキウキな気分で強風の中進む。
さっきまでオッサンの相手してた警察官は次は別のオッサンに小言を言われていた。
(あの人もついてねぇな〜ご愁傷さまに!)
そんな事を思っていると
(ガタン、、)
とマンホールが下からの水圧に耐えきれず外れる音と共に自分目掛けて飛んでくる。避けようにも足下を水が邪魔をしとっさに右にも左にも動けない。
「危ない!!!避け、、、」
前でオッサンと半ば言い合いになっていた警察官が大声で叫んだ。しかしその声は途中で聞こえなくなった。
(おいおい、こりゃ俺がご愁傷さまじゃねぇかよ……)
(ゴギィ!!)
と凄い音が鳴り響く。
それと同時にカイトは吹き飛ばされ、まぶたがゆっくり閉じていった。
我に返ってふと思う
「てかあの状態から転生なんて聞いた事ねぇぞ!」
「普通トラックに引かれて転生するのが転生もののお約束だろ!てかなんだよ!マンホールが飛んでくるって!!!」
「はぁ〜それにあの小説の続き気になるなぁ〜あの主人公最後どうなったんだよ!マジで!!」
ひと通り叫び終えるとカイトは心を切り替えた
そして
彼は「転生と言えば最初はどんなイベントだったっけな?」なんて事を思いながら森を進み始めるのだった。
ゆっくり投稿していきたいと思ってます!皆さんに楽しんで貰えたら嬉しいです!この作品が初めて書く小説になるので感想やレビューでの意見も待ってます。