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革命の前夜

作者: 畔凪篤志

いつだって演説が上手い扇動家は気がついたときには権力者になる。

いや、彼らは別に権力者になりたかった訳ではないかもしれない。

ただ、気がついたときに善意であれ悪意であれ担ぎ上げられ、いつしか御旗になっていたのかもしれない。

初めは一人の支持者から始まったかもしれない、小さなグループだったかもしれない。ただただ、国のためから始まったかもしれない、ちょっとした義憤だったかもしれない。

それを言葉にして発したとき、文字にしたとき、気がついたら彼らは先頭を歩いていたのだろう。

意図的にそれを成す者もいたのかもしれないが、たぶん、彼は違うと私は思う。

「ゆえに、変えなければなりません。今の生活であなたたちは満足でしょうか? いや、満足かも知れません。自分に危害が加わらないから、と」

彼はただ、幼馴染みを奪われたどこにでもいる王候貴族の被害者だ。

「それはいつまで続くのでしょうか? 永遠に続く? 否、明日にも今日にも終わるかもしれません」

彼は権力も武力もなかった。ただ、言葉で今日まできたのだ。時には権力者に追われ、時にはいまを望む人々に石を投げられ、それでも諦めきれずにがむしゃらに走り続けた結果が今だ。

「これ以上彼らの好きにさせては行けません。確かに彼らは私たちを守ってきたかもしれません。はじめはその名の通り貴き意志を持っていたかもしれません。けれど、今は? そう、彼らは守ってやるから私たちを好きにさせろ、といつの間にか道を外れてしまったのです」

今は? 明日は? 同じ日々が続くなんて誰が決めたのだろうか、と。未来は変えられるのだと、彼は訴え続けた。それはきっと尊い考えだろう。だからこそ危うい。

「ならば、我々がただそうではありませんか」

熱に浮かされ尊い意志に集ったと考えてしまう衆愚。私は冷めた目で彼らを見てしまう。自ら考えずに正しさの義憤を抱えるものに。

「歴史は繰り返しその血をあがなう、でしょうか」

では、扇動家の旗印の彼が暗殺されれば? そんな事態になれば彼らはどうなるのだろうか。たぶん、そのうらにいた彼を思惑で操っていた奴が『彼の遺志を継ぐのだ』とあっさりと乗っ取るだろう。そして、彼らが一番の利益を得る。衆愚は暴徒へ、革命は血によりあがなわれる。

「ただの復讐者ならよかった。けれど、あなたはもうたった一人の復讐者ではない」


引き金はいつもわからないうちに引かれるのだ。


誰でもない私の手で。

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