2月22日 猫の日記念 魔王転生 プロローグ
2月22日 猫の日記念です。
勇者の攻撃が頬をかすめる。
なんとか紙一重でよけた。
三日三晩続いた戦いもどうやら終わりが近いようだ。
お互いに満身創痍で、魔力も残りわずかといったところだろう。
かくなる上は、最後の魔法。
これだけは使いたくなかったが、勇者よ、よくぞここまで我を追い詰めた。
褒めてつかわす。
こうなったら勇者も巻き添えにしてやる。
自分の心臓に魔力を集めていく。
―― ウルティマノバアウトバースト!!!!!
爆発する。
新星爆発ほどの威力がある。この星の半分は消え去るだろう。
憎き勇者の命もあるまい。
閃光で目の前が真っ白になった。
まあ、面白い人生だったよ。
***
あれからどのくらい経ったのだろう。
微睡の中から眩しい光を感じて目を覚ます。
誰かが我の体を舐めている。
正体を確かめたいが光は感じるが目が見えぬ。
何か小さき生き物に産まれたようだ。
まあ良い。
小さきモノから初めて天下を取るのもまた一興。
魔物なぞ、戦い、相手を倒して1つ1つ強くなってゆくのだ。
我は小さなあくびをするとまた眠りについた。
我は魔王であった。
魔界で楽しく魔王をやっていたのだが、ある日、勇者がやってきた。
我は、戦った。我も強かったが、勇者も負けてなかった。
三日三晩の死闘の末、我が輩は勇者と相打ちになって果てた。
それまで、輪廻転生というものは信じていなかったが、死んで生まれ変わったら、モフモフした生き物になっていた。
どうやら、魔獣に生まれ変わったらしい。
まあ良い、そこから成り上がって、もう一度魔王になってやる。
魔物は相手を倒しレベルが上がると、1つ1つ進化するものだ。最初が弱くとも構わない。
そして今度こそ、勇者を倒し、世界を我が物とするのだ。
ワッハハハハ。
大きく宣言するして立ちあがったが、まだ足がおぼつかない。
体勢を崩して、ころころと巣穴から落ちてしまった。
ドンガラガッシャーン!
「にぃー!」
背中をしこたま打った。我ながら情けない声が出る。
「ぼうや!」
母らしい魔獣に首根っこを咥えられ、巣に戻される。
母親らしい魔獣に注意される。
いい? 私たちは音で狩りをするわ。
だから動くときにガタゴト音を出すのは、下策。品が無いのよ。音を出さずにしなやかに素早く動くの。
音を出すと獲物に逃げられるし、敵に気づかれるわ。
坊やが大きくなったら、狩りを仕込んであげる。
だから、今はたくさん食べて寝て大きくおなりなさい。
母上が我の頭をザラザラした舌で優しく舐めた。
なんだか胸の辺りがぽわんと暖かくなった。初めての体験だ。
魔王の時は、我は魔力だまりから産まれ、親はいなかった。
我の母であるからには、さぞや名のある魔獣であろう。
我は魔獣を華麗に狩る夢を見ながら眠りについた。
―― 魔王がこの世界には魔法がなく、魔獣ではなく猫という進化しない動物に生まれついたと気づき絶望するのは、まだまだ先である。
そしてその後、チワワとなった勇者と出会い、大笑いする魔王であった。