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聖戦のディアボロス  作者: モフ
9/9

盗賊の山

盗賊の居るという山は木々がおいしげ、自然豊かな緑の森が広がっていた。

辺りを警戒しながら森へと足を踏み入れた。

視界も悪く死角も多い、既に何処かからか侵入を目撃している者が居るかもしれない。

そうなると、待ち伏せをされる可能性も出てくるだろう。

それと、厄介なのは他にも有った。

盗賊からしてみれば、仲間以外は敵な訳で、手当たり次第倒してしまえば良い。

しかし、セッター達は盗賊の顔も姿も何も分からない。

一般人を装って襲ってくる可能性だって有るのだ。


しばらく歩いていると、ひらけた場所に出た。

そこには、木に実がなっており、近くには人が手を加えたとしか考えられない畑も有った。

おそらくこの近くを住み処にしているのだろう。

「誰か来る! 隠れろ」

人の気配を感じセッター達は近くの茂みに身を隠した。

そして、森の奥から人が姿を現したのだった。

それは、一人の少女だった。

「なんだ子どもか」

ホッと安心するルシアだった。

「私、あの子にちょっと聞いてくるね?」

そう言ってルシアは、すっと立ち上がり少女の元へと駆け出した。

「馬鹿待てっ!」

ルシアを呼び止めるセッターだったが既に間に合わなかった。

少女はルシアに気が付くと慌てて首に下げていた笛を吹いたのだった。

急いでセッターはルシアを抱きかかえて走り出した。

「ちょっ、何?」

ルシアはこの状況を飲み込めていない様子だ。

「今笛を吹いたろ? アレは仲間を呼んだのさ」

少女は盗賊と何らかの関わりがあるのだとセッターは説明した。

少し走るとセッターはルシアを抱いたまま一本の木に飛び乗った。

「しばらくここで様子を見よう」

そう言って枝にルシアを下ろした。

「まったく、油断し過ぎだ、子どもだからと言って盗賊と無関係とは限らんのだぞ?」

ルシアに説教をするオズマ。

「ごめんなさい」

ルシアはションボリした。


あちらこちらで人の気配がした。

どうやら盗賊達はセッターを探しているようだ。

一人のフードを被った男がセッター達の居る木に近付いてきた。

緊張が高まり、心臓の鼓動が早くなった。

男が木を通り過ぎ去り、ホッと一息付くと黒い影が物凄いスピードでセッター達に向かって飛んできた。

間一髪の所でセッターはルシアを抱えて木から飛び降りた。


「ちっ、避けられたか」

セッター達が乗っていた木の枝に一人の青い髪の青年が立っている。

コレが飛んできた影の正体だった。

「お前がこの辺りに居るっていう盗賊か?」

セッターは青年に問い掛けた。

「お前に答える義理は無い!」

そう言うと青年は、腰の剣に手をやる暇もなくセッターに襲い掛かってきたのだった。

青年は武器を持たず、拳で攻めてきた。

(コイツ、、、強い!)

青年のいくつもの攻撃を受けきりながらセッターはそう感じていた。

その時ルシアはその攻防に圧倒され見ていることしか出来ずにいた。

青年の一手一手が素早いだけでなく、受けきっているセッターに少しずつダメージを与えていた。

その証拠に少しだが、腕がピリピリと痺れるような感覚があった。

「お前が盗賊の親玉だな?」

「だとしたら何だというのだ?」

そんな会話をしながら無数の拳を突きだしてきた。

致命傷を受けぬよう、セッターは一撃一撃を防いだ。

「なるほど。これじゃあ、モルト村の人達が手に負えない訳だ」

セッターがそういうと、青年の耳がピクリと動き、力とスピードが増していった。

そして、渾身の一撃を放ってきたのだった。

セッターは腕をクロスさせ、受け止めるものの、その体は後方へと飛ばされ木に打ち付けられた。


「あの村の手の者なら容赦はしない」

この青年は何か町と因縁が有るようだ。

「何が有ったか知らないが、俺はお前と戦うつもりは微塵も無いんだけどなぁ」

そう言ってセッターは立ち上がった。

戯言(ざれごと)を!」

再び青年はセッターに襲い掛かるが、今度はセッターは受け止めようとも避けようともしなかった。

「守る為なんだろ?」

セッターがそう呟くと、青年はピタッと腕を止めたのだった。

「お前らがさらった子どもってのは奴隷として売買されかけていた身寄りの無い子どもなんだろ?」

「、、、そうだ」

青年は拳をそっと下ろしたが、怒りのせいか、腕はピクピクと震えていたのだった。

戦闘が収まりルシアはセッターの元へと駆け寄った。

「セッターが言ってたのってそれの事だったんだ」

「あぁ、最初は憶測でしかなかったんだが、さっきの少女を見て確信した。あの少女の首筋に何か模様の付いた火傷のような跡が見えた。焼印でもされたんだろう、、、」

「そんな、、、」

それを聞いてルシアは目を見開き両手で口を押さえる。

恐ろしい想像をしたのだろう。

「そもそも変だと思わなかったのか?」

「え?」

「普通、親ってもんは子どもの安否を一番に心配するもんだろ? それなのに依頼の内容が盗賊の捕獲だぜ?」

「言われてみれば、、、」

セッターが依頼の内容を念入りに確認していたのは、それを探るためだったのだ。


「見逃してやるから帰れ、そして今日の事は誰にも言うな」

そう言って青年はその場から立ち去ろうと背を向けた。

「悪いが、そうもいかないんだ。俺達も命が懸かっているからな」

ポリポリと頭を掻きながらセッターは青年を呼び止めた。

すると、青年は振り向き、闘争心を剥き出しにしてセッターを睨み付けるのだった。

「そう睨むなよ、俺に考えが有る」

自信に満ちたセッターの表情はいつかのオズマの不敵な笑みによく似ていたのだった。

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