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聖戦のディアボロス  作者: モフ
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初めてのクエスト

ここアロンダイトでは、学費をクエストからでしか支払う事が出来ない。

これぞ、傭兵のエリート育成システムである。


そんな訳で、セッターはクエストを選びに事務室へと立ち寄った。


「ゴミ拾い、買い出し、ドミノの手伝い、、、P (クラス)ってのはろくなのが無いんだな、、、」

困っていると、事務員のお姉さんが話しかけてきた。

「別にそれは目安ですよ。でも、自分で出来ると思う仕事だけ受けてくださいね」

そう言ってもらえて安心した。


もう少し上のクエストを見てみると、その中に気になる内容の物が有った。


子ども達が次々と、盗賊に連れ去られているらしく、その盗賊を捕獲して貰いたいという物だった。


「あの、コレを受けたいんだが、、、」

事務員のお姉さんに聞くと、お姉さんは心配していた。

「B (クラス)のクエストですね。まぁ、受けるのは構わないんですけど、本当に大丈夫?」

そう、受けるにしても、厳しい校則が有る。


1、クエスト中は授業が免除される

2、受けた依頼は途中で投げ出す事は許されぬ


ここまでは、まぁ分かるのだが問題は3つ目の校則である。



3、いかなる理由でも途中放棄したものには死をもって償ってもらう



つまり、失敗は許されない。

そして、どんなに理不尽な内容であっても引き受けた以上はやり遂げなくてはならないのだ。

もし、途中でそのクエストをやめてしまったら、ラグナロクが動くとのこと。


その3つ目により、無闇に手を出す物は少ない。

だから、お姉さんは心配しているのだ。


これも、いつかオズマの言っていた『闇』の一つだろうか?


「いや、構わない」

そう言うと、心配しながら手続きの準備をしてくれた。


手順はこうだ。

依頼書を依頼主に渡し、直接その依頼主から話を聞いて受けるかどうかを最終的に決める。

もし、気に入らなければそのばで断ることは出来るらしい。


寮へ戻り、外出の準備をしていると、ルシアが話しかけてきた。

「どこかに出掛けるの?」

「ああ、クエストに行ってくる。子どもが盗賊に連れ去られているらしい」

「私も一緒に行って良いかな? そんなのほっとけないもん。きっと、お父さんやお母さんも悲しんでいるはず、絶対に助け出さなきゃ!!」


「、、、どうだろうな」

セッターはボソッと呟いた。

「え? 何?」

「いや、何でもない。それより行くなら準備してくれ」


こうしてルシアもクエストに参加する事になった。


学校を出ようとすると、いつものようにご機嫌な笑う奴が居た。

「はーっはっはっはっ、今日も天気が素晴らしい。そう、まるでパーフェクトな僕の様にね」

「左様でございます」

フィリップとポールの二人組だ。

彼らも、これからクエストへと赴くらしい。


「やあやあ、セッター君。君達もお出かけかい?」

「ああ、ちょっとクエストにな」

「奇遇だね、僕達もこれから行くとこなんだ。よかったら途中まで馬車で送っていくよ?」

これはチャンスだ。

歩いて行くつもりだったが、タダで馬車に乗れるのなら利用しない訳がない。

「なら、乗せてもらおうか。場所は、『リーサントのモルト村』なんだが」


リーサント、数年前に独立した隣の国で、あまり治安は良くないとのこと。


「あぁ、僕は運命を感じてしまうな。目的地が近場だなんて。さぁ、共に行こうじゃないか!!」


リーサントへの道中、さんざんとフィリップの話に付き合った。

まぁ、ほとんど独り言のような物なんだが、タダで馬車に乗れたんだ。悪くはない。


ーーー


リーサント モルト村


ーーー


目的地に着くと馬車から降りた。


「では、僕達の目的地はもう少し先にあるからここでさよならだ、また会おう」

再び馬車は走りだし、フィリップは去っていった。

フィリップは生意気だが、悪い奴ではない。でも、なるべく関わりたくはないなと思った。


ここモルト村は出店がたくさん並んでいて、いつも賑わっている。

しかし、人が多いため歩くのも困難だ。


「ねえ、この近くに雇い主は居るの?」

ルシアは尋ねる。

「ああ、そのはずだ、黄色い屋根の酒場らしいんだが、、、」

「なら、俺が空から見てきてやろう」

オズマは空を飛び、黄色い屋根の建物を探した。


「ここを真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲がった所に有るぞ」

しかし、人が多いせいで、そこまで行くのは困難だった。


「他に行けそうな道は有るか?」

「裏路地なら人が少なそうだぞ」

決まりだ。

セッター達は裏路地を通って行く事にした。


それにしても、表通りと違って随分と暗く、人もほとんど見あたらない。


セッター達が歩いていると、ガサゴソと音が聞こえた。

音がする方を見ると、ゴミをあさるみすぼらしい子どもの姿が有った。

子どもは目を合わせると、慌てて必死になって逃げていった。


この辺りでは、こんな光景は珍しい物ではない。

独立戦争で親を無くした子どもも少なくはないのだ。


黄色い屋根の酒場についた。

中に入ると、ヒゲだらけのオジサンが皿を洗っていた。

「ん? ここはガキの来る所じゃないぜ? とっとと帰んな」

そう言って睨み付けてきた。

「あの、私達、依頼を受けにアロンダイトから来ました」

すると、ピタリと手が止まり、ジロジロとこちらを見てくるのだった。


「ほぉ、あんた達がかい? 本当に大丈夫なのかね?」

ちょっと心配そうにしている様だが、人数分の飲み物を用意してくれた。


「さっそくだが、依頼について話がしたい」

セッターは話を切り出した。


「うむ、この村に盗賊がよく現れて子どもをさらっていってしまい、困っているんだ。そこで、依頼をしたって訳さ」

そこまでは依頼書の通りだ。特に問題はない。


「で、あんたらに盗賊を捕獲してきて貰いたいんだ」

「分かった。その依頼、引き受けよう」

二つ返事でセッターは引き受けた。

「本当かい? そいつは助かる」

そう言って、店主は依頼書にサインをした。


「その盗賊はどこに居るのかは分かるか?」

「ここの近くの山に住みかが有るらしいんだが、詳しいとこまでは知らぬ」

「それだけ分かれば充分だ」

そう言ってセッターは店を立ち去った。


「ご馳走さまでした。ちょっと待ってよ」

後を追いかけるルシア。


「ねえ、本当に私達だけで大丈夫なのかな。相手は盗賊だよ?」

心配そうな表情をしているルシアと裏腹に、セッターは落ち着いていた。

「大丈夫だ。俺の予想が当たっていればな」

「予想?」

「ま、行けば分かる」


そして、セッター達は、その盗賊が居る山へと向かうのだった。

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