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聖戦のディアボロス  作者: モフ
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入学試験3

遅れて他の受験者を追いかけようとするルシアの行く手を阻んでいたのはセッターだった。

もう既にスタートしていると思っていたが、慌てる様子もなく落ち着いているみたいだ。


「早く追いかけなきゃ失格になっちゃうよ」

ルシアはわたわたと慌てふためいている。


「落ち着け! 確実に合格したいなら追いかけようとしちゃ駄目だ」

「え? 何で?」

セッターの言葉の意味がルシアには理解出来なかった。


「この試験にはからくりが有る。それに気付けるかどうかで確率が大きく変わってくる」



(ほぉ)

その言葉を聞いた試験官はニヤッと口元が少し緩んだ。


「俺だけじゃない、他にも気付いている奴が数人居るみたいだ」


部屋を見渡すと、確かにちらほらと受験者が残っている。

あくびをしていたり、本を読んでいたりする者も居た。

よく見ると、先程のフィリップとかいう生意気な男と一緒に居たポールも部屋に残っていた。



「ねぇ、私にも分かるように教えてよ」

まだ理解出来てないルシアは少々ご立腹の様子。


軽くため息を吐くとセッターは説明を始めた。

「いいか? よく聞け。試験官が言った言葉を思い出してみろ! 試験官はこう言ったんだ」


ーーー


「この階は一本道となっており、部屋はここしか有りません。先に彼がこの部屋を出て一週するまでの間に彼に触れてください。尚、彼に触れると次の試験会場へと転送されるようになっております」


ーーー


「つまりだ、一週するって事はここに戻ってくる」

「そっか、この部屋に入ってくる間際に触れれば良いんだ!!」

ようやく理解したルシアはスッキリした。


しばらくすると、次々とスタートした扉とは逆の扉へと他の受験者は入っていった。


「さて、念のため俺達もそろそろ行った方が良いんじゃないか?」

オズマは語りかける。

「そうだな、行くか」

セッター達も後に続いた。


通路は思っていたよりも狭く、人が横に並んで歩く事ができるかどうか位の幅だった。


これなら、すれ違いざまに抜かれる事は無さそうだ。


しばらく歩いていると、ドスドスと走る姿が見えてきた。

どうやら、先に行った受験者はこの課題を終え、転送されたらしい。


「やっと来たか、カレー男!」

「カレー男?」

「そう、右頬にカレーが、、、え!?」


ターゲットの男はセッター達を見つけると、スピードを上げ、猛ダッシュっで駆け寄ってきた。


「ヤバい! 逃げるぞ!」

セッターはルシアの手を引き、慌てて後退を始めた。

「ちょっ! 待って!」

強引に引っ張られたルシアは訳も分からず走った。


必死に元居た部屋へと、悲鳴を上げ、走り逃げるセッター達。

そして、目を光らせ雄叫びを上げながら更に加速する男。

まるで、獲物を狙う猛獣のようだ。


追い付かれるかどうかの瀬戸際、部屋の中へと逃げ込むことができた。

すると、男はスッと消えてしまった。


「第二試験、貴方達二人は失格ですね」

そう試験官は告げた。


それを聞いて、ルシアはしょんぼりと下を向いて落ち込んだ。



「待てよ!」


ルシアが顔を上げ声がする方を向いた。

すると、セッターは試験官に向けて言った。


「まだ第二試験は終わっちゃいない。、、、そうだろ?」


「え?」

ルシアは試験官の方へと振り向いた。


すると、続けざまにセッターは説明を始めた。

「アレは、おそらく偽者(フェイク)だ。その証拠に右頬に付いていた筈の、カレーが左頬に付いていた。しかも、その偽者に触れても次の試験会場へと転送される! 違うか?」

(それで、あんなに必死に逃げ出したんだ、、、)

ルシアは、セッターの行動に納得した。


「フフッ、正解! 貴方やるわね」

試験官はニッコリ笑った。


しかし、このままでは第二試験は終わらない。

どうした物かとセッターは考えた。



(この部屋に扉は二つ。そして、道は一本道。外からこの建物を見た感じからして、もうとっくに一週出来るだけの時間は過ぎている、、、)


試験官はニヤニヤと、セッターのその真剣に考えている姿を見つめていた。



(仮に一本道じゃなかったとしても、扉は二つしか無い訳だから、、、いや、待てよ!?)


「そうかっ!」


セッターは閃いた。


「この部屋には扉は二つしか無い。でも、出入口はもう1つ有ったんだ!!」


それを聞いた試験官は答えた。

「何を言っているの? この部屋には隠通路なんて存在しないわ!」


そう、この部屋に隠し通路なんて確かに存在しない。

だが、、、



「もう1つの出入口、、、それは、俺達が登って来たこの部屋に通じる階段だ!!」


ビシッとセッターは階段を指差した。


すると、階段からコツコツと男は頭をポリポリ掻きながら姿を現した。


「いやぁ、まさか僕のミラーを見破るとは思わなかったよ」


ミラー、それはその名の通り、鏡の自分をそのまま実体化させる魔法だ。


「でも、どうやってそっちへ? ここは一本道って、、、」

ルシアは質問した。


「簡単だ。確かに道は一本だ。そう、『道』はな!」

オズマが説明した。

「っ!!」

さすがのルシアも理解したようだ。


そう、例えば窓等を使って移動すれば良いのだ。『道』では無いのだから。

それに、その一本道を一週するとは一言も言ってはいない。


「ははっ、僕の負けだよ。第二試験合格だ。おめでとう!」

そう言って男は手を差し出した。


「ったく、何がテーマは素早さだ」

微笑み、セッター達は男の手に触れると、光に包まれ消えていった。



「彼、なかなか面白いですね」

試験官に男は言った。


「そうですね、でも最終試験の突破はどうかしら? だって、最終試験の担当は、、、」



セッター達は闘技場へと転送された。



すると、そこにニコニコと笑顔の男が立っていた。


「最終試験へ、ようこそ。すごいね、君達だけだよ僕の所に来れたのは」

「え? 他の受験者達は?」

ルシアは質問した。

「他の受験者達は別の会場だよ。二つ突破したのは君達だけだからね。いわば、ここはスペシャルコースってこと」


笑顔の男は両手を広げて言った。


「そして、最終試験の内容は、生徒会長のこの僕、『レオン=L=フィールド』に一撃を食らわせろ!! だよ」


こうして、最終試験は始まった。

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