7.氷の女王ラルディ
「そう、そのまま相手を凍らせるイメージを思い浮かべて作り出すんだ」
「相手を凍らせる……あなた、これはどう考えても攻撃的じゃない! なぜわたくしが、冷酷非道な輩のような魔法使いにならなければならないのかしら? わたくしはお姉様を守るために使いたいだけよ!」
「では、君の大事なお姉様に敵意を出してくる相手ならどうだい? 攻撃出来るだろう?」
「そうね、あなたになら攻撃出来るわ」
わたしたちは、氷の都イミャコンで属性を使えるようにするための学びを受けていた。出会ってすぐに、気に入らなくていけすかない男が、お姉様の足を凍らせたけれど術を教えてくれているので、とりあえず大人しくすることにした。
「そんなに睨まなくても、もう何もしないよ。ラルディを怒らせたらまずいことがわかったからね」
イミャコンのリティーハは、好きになれないけど魔法を得る為には、我慢するしかなかった。
「ラ、ラルディ」
見守るお姉様の傍で、守るために氷の渦を作り出してみせた。
「さすがだ。ラルディは魔法の素質に恵まれているようだね。もしかしたら、攻撃性のある属性は使えるようになるかもしれないな」
「ふふん、 そんなのは要らないわ! そんなのが使えなくてもわたくしは強くあるの」
守るために攻撃する。それなら、使ってみせなくもないわ。わたしの強さの全ては、レナータお姉様のためにあるのだから。
「うん、その渦をカタチに変えたらキミは、使えるようになるよ。そうなったら氷の女王という名前を使うことを認めよう」
「そんな恥ずかしい名前なんて要らないわ!」
「いいじゃない、素敵よ。なんか凄そう」
「レナータお姉様、そ、その抜群すぎるセンスもどうかと思うわ……それに、恥ずかしすぎて外を出歩けなくなるじゃない」
照れてて可愛いラルディ。自分に比べて強い口調と態度を示しているけれど、ラルディは本当はとっても大人しい子なの。なんてことを思われてそうで何だか納得が行かないわ。わたしがお姉様を守るのは義務でも何でもないのよ。
魔法はラルディに覚えてもらって自分は覚えなくていい、恋さえできれば。そんなことを平気で言うお姉様。あげく、わたしにも恋をして欲しいだなんて思っているに違いないわ。ホントに恋だと分かる瞬間になんて出会えるものなら出会ってみたい気はしないでもないけれど。
「ねえねえ、ラルディ。リティーハのことはどう思っているの?」
「嫌な奴」
「そ、そうじゃなくて、ドキドキしないの?」
「何も感じないわ。もしかしてレナータお姉様ってば、リティーハにも惚れたんじゃないでしょうね?」
「それはないよ。わたしは騎士様に奪われたのですもの」
「そ、そうなのね」
騎士様に会いたい。そんな心の声が目の前のお姉様から聞こえて来る。わたしはすぐに氷を覚えちゃったし、次はお姉様の番。それなのに、あのヒゲ騎士はさっさと何処かへ行ってしまった。
せめて、この先でヒゲ騎士以上の素敵な方に出会えることを祈るわ。どこかで騎士様にお会い出来る……そんな夢をいつまでも見ていてはダメなのよ。
わたしの出会いよりも、レナータお姉様の新たな出会いに期待したいものだわ――