4.恋の役割分担
良いところに丁度良く騎士がいたものね。でもこれで、賊が襲って来ても平気ね。見た目は怪しいけれど、話の分かる騎士で助かったわ。
「それであなた、ハヴェルはどれ程の強さなのかしら?」
「俺か。俺は、騎士の中ではたぶん、真ん中じゃねえかな。なんせ、沢山いるからな」
「騎士様は、ご謙遜されているのですね」
「いやっ、事実を……」
「まあいいわ。守って頂けるのなら贅沢なんて不要よ。レナータお姉様を優先的に守りなさい! いいですわね?」
「お、おぅ。あんた、妹の方だよな? あんたはいいのか?」
「わたくしはラルディよ! 覚えなさい。わたくしを守りつつ、お姉様を優先するのです。お分かり頂けたかしら?」
「は、はぁ……分かりましたよ、王女様」
意外と素直ね。やはり、ヒゲはカモフラージュね。何かの王命を帯びているから素顔を隠しているに違いないわ。
ジュルツの騎士……今後も利用価値はありそうだわ。お姉様の水属性は港町。そこまで護衛してくれないかしらね。馬車に乗り込んだわたしたちと、従いの騎士ハヴェルとで、騎士の国から出発することができた。氷の都……それは一体、どこにあるのかしらね。
「ラルディ、あの騎士様のことが好き?」
「何を言い出すかと思えば、それは恋愛対象としてかしら? それとも、人としてかしら?」
「もちろん、恋の方よ。だって、ラルディが楽しそうですもの」
相変わらずの天然ぶりね。レナータお姉様がそうやって聞いてくるってことは、惚れている時なのよね。助けられた訳だし。
「残念ながら違うと言い切れるわ! わたしは、ヒゲは苦手なの。見やすい顔がいいわ。確かにヒゲ騎士は、意外に紳士よ。でも、それと恋は一致しないわ。だからお姉様は安心なさい」
「えへへ。良かった」
やはりそうなのね。出会ったばかりなのに、それは早すぎだわ。これから沢山の場所に行くというのに、今からそんなことでは先が思いやられてしまうじゃない。
「嬢ちゃんたち、馬を休ませていいかい?」
あら、そう言えばそうね。馬車の馬もそうさせるべきよね。
「分かったわ。適当な村でも町でも構わないから、氷の都のことも聞き出して下さる?」
「俺がか? 行くのは嬢ちゃんたちだよな」
「見ての通り、わたくしたちは可愛いお嬢様なのよ? 危険にさらすおつもりなのかしら?」
「ラ、ラルディ……それは可哀想よ。雇った訳でもないのよ?」
「それもそうね。では、ハヴェル。あなた、わたくしたちの傍にいなさい! お願いするわ」
「あ、あぁ、それならいいが。俺にも聞き込みの時間を頂けるので?」
「何かの王命なのでしょう? 構わないわ」
「ラルディ、やっぱりイキイキしてる~」
「そうね、わたしは命じるのが好きなのだわ」
わたしが命じて、お姉様が騎士の傍にいるようにすればいいんだわ! うん、そうしよう。わたしはまだ恋する余裕なんてないもの。