3.便乗の双子王女
これは何も出来ないわたしたちに与えてくれた機会なのだわ! 騎士の国なら、すぐに騎士が見つかると思っていたわたしたちの目の前には、今すぐにでも出立をしそうな騎士が馬に乗ろうとしていた。
「そこのあなた! お待ちなさい」
「ラルディ、それは失礼よ」
「ん? おわっ!? お、同じ顔の女の子だと!? な、何事だ」
ふふっ、驚いているわね。双子が珍しいのかしらね。驚いている間に、勢いでお願いしなければならないわね。
「あなた、名は?」
「え? お、俺はハヴェルだけど。キミ達はどこの子? 俺は急いでるんだが……」
「ハヴェルね。その髭はこの国では認められているものなのかしら? 騎士って確か、素顔を見せなければ駄目なのでは無くて?」
「ちょっと、ラルディ! 騎士様が困っているわ」
まっすぐに突き進む妹。それがラルディ! なんてことを思っていそうなレナータお姉様。お姉様だって、騎士の髭をまじまじと見つめているじゃない。
「髭は俺のポリシーだ。それをいくら可愛い子たちに言われても、直す義理はねえな。で、キミ達の名前は? どこから来たんだ。もしかして迷子か、観光か?」
「わたくしはとある森の王国から来た、王女ラルディよ。こっちは姉のレナータなの。どう? 驚いた?」
今は王国の名前は教えるのはまずいわ。お姉様は間抜けだし、わたしがしっかりしないと。
「双子の王女か。そりゃあすげえな。国名は別にいいけどよ。で、俺にどうして欲しいんだ?」
「騎士様、わたしと妹のラルディと馬車を守ってくれませんか? 途中まででいいんです。お願いします」
「お? お姉さんの方が素直で可愛げがあるじゃねえか。そうだな、俺は今から王命で国巡りをしなきゃならねえんだが、いいぜ。どこに行くんだ?」
「可愛げなんて必要ないわ。わたくしはまだ子供ですもの。それで、ハヴェルに付いて来て欲しい都は氷よ。御存じかしら?」
「妹の方は我が姫様にそっくりだな。まぁ、あの方はもっと……ん? 氷の都? そんな所あったっけか」
氷の都のことを知らないなんて、本当に騎士なのかしら。それとも都にも名があるのかしら?
「都というだけで名なんて知らないわ。寒いところだから氷の都って言われているのよ。とにかく、あなたハヴェルはわたしたちと馬車をお守なさい! よろしくて?」
「くっ、強い王女だな。子供でコレでは中々将来が大変そうだぜ。まぁ、いい。思い当たる場所に行くとするか。そこの姉王女さんも、それでいいだろ?」
「は、はい。お願いします、騎士様」
これで上手く騎士の出立に便乗できそうだわ。国巡りだなんて、案外騎士も暇を持て余しているのね。これで氷の都に近付けるわ。それがどこかは知らないけれど、何とかなるでしょきっと。