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メリソス・プリンセッサ~双子王女の恋愛譚~  作者: ハルカ カズラ
旅する双子王女
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13/29

13.圧倒のヴァルキリー


 レナータお姉様と何が違うのかしら。わたしはただ、目の前にいる素敵なアスティンを自分のモノにしたいから行動に移しただけだと言うのに。


「この地で魔法を使う者は多くない。だが、貴様は我が騎士に敵意を持って使用している。それは何故だ?」


 あらあら、決めつけているのね。アスティンを攻撃しようだなんて思ってもいなかったのだけれど、そう見られているなら、決めつけるあなたにだけは、敵意を持って凍らせてさしあげようかしらね。


「あなたはわたくしを敵だと決めつけていらっしゃるのね。それでしたら、容赦しませんわ」


「ならばなんとする?」


「ふふっ、あなたも騎士なのでしょう? アスティンと同様に御足元をすでに凍らせて頂きましたわ。アスティンは、わたくしがお連れさせて頂きますわ。あなたは身動きの取れぬまま、ご見学頂きたく思いますわ」


 ラルディの氷魔法で、シャンタルの両足は氷の塊で固まっている。


「お邪魔が入ったけれど、わたくしと行きましょ。アスティン」


「ええええ? そ、そんなぁ~シャ、シャンタル……」


「無駄よ。わたくしの氷魔法はその辺の騎士では、動くこともままならないわ。でも安心しなさいね。アスティンの先輩のようだから、わたくしとアスティンがここからいなくなったら、自然に動けるようになるわ」


 アスティンは、わたしと一緒にいるのが運命だったのよ。ここで出会えたことが何よりの証だわ。きっと、レナータお姉様も笑顔で祝福してくれるわ。


 アスティンはラルディに手を引っ張られながら、身動きを封じられたシャンタルを見つめながら、悔しそうに唇を噛みしめていた。


「うふふっ、アスティン。怖い思いをさせてごめんね。でもそんなつもりなんてないの。わたしはあなたを一目で好きになってしまったの。これからはわたしとずっと一緒! あなたはわたしが守るからね」


「(うぅ、シャンタル……何でこんなことに。ルフィーナ、僕……ルフィーナに会いたい)」


「……アスティン、しばらく眠れ」


「えっ?」


 ラルディに手を引っ張られていたアスティン。まるで雷にでも打たれたように、全身が痺れそのまま気絶をした彼。眠ってしまったアスティンが、ラルディにもたれかかってしまった。


「な、何なの!? ア、アスティン? お、起きて、起きてよ! お、重くて歩けないわ」


「無駄だ」


「あ、あなた!? ど、どうして動けるの? いつここに来ていたというの」


 並の騎士程度なら間違いなく、動けない位に氷を張ったのにどうしてこの女は動けて、しかもわたしに槍を向けることが出来ているの? 何かがおかしいわ。


「見たところ……どこかの国から来た王女のようだが、その力、その知識は子供のままのようだ。気に入った男を無理やりに連れて行く。その行為は恋にすらならぬ。貴様が正しい恋を知るその時まで、見習い騎士アスティンを連れて行かせるわけにはいかぬ」


「ふ、ふぅん? 生意気な事をおっしゃるのね。どうやってわたくしの魔法を解いたのかは知りませんけれど、また凍らせればいいだけのこと。覚悟はよろしくて?」


「……やってみるがいい」


 な、何かしら……妙に寒気を感じるわ。氷を使うわたしなのに、寒気だなんて変ね。まぁいいわ、もう一度、この女騎士の足を……いえ、全身を凍らせてしまえばいいんだわ。


 持て得る限りの魔法術を使って、わたしは目の前に立ちはだかっている、生意気な女騎士の全身に氷を張ってあげた。


「ふふん、強がりを言うあなたが悪いんだからね?」


「それは貴様のことを言っておるのか?」


「なっ!? 何なのあなた? 何でわたくしの氷魔法が効いていないの?」


「未熟な魔法にやられる我では無い。それと我に魔法の類は一切、効かぬ。悪いが、コレは我の預かり者だ。どこぞの王女にくれてやるわけにはいかぬ。恋をしたくば、強引に言うことを聞かせるのではなく、好きになり、相手のことを想え。だが、お前はまだそれを知らぬ子供。それを言っても分からぬだろう」


 くっ、な、何なの!? 何でこんなこと……こんなんじゃ済まさないわ。絶対、いつかまた出会えることがあったら、わたしのことを好きにさせて見せるんだから! 


「では、我らは失礼する」


「ま、待ちなさい! あなた、名前は?」


「我は、ジュルツ国ヴァルキリー……シャンタル。アスティンを悲しませることをしていたら、お前は、お前の国は無くなっていた。今後は控えめに生きることだ。でなくば、我が国の王女以下騎士が容赦せぬ」


「……わ、分かったわ。ごめんなさい」


 わたしが素直に謝ると、そこにいたはずのアスティンと女騎士の姿が消えていた。ヴァルキリー? ジュルツ? ジュルツってヒゲ騎士の国よね。アスティンはそこの見習い騎士だったのね。そっか……。


 あの国と敵対するわけにはいかないわ。お姉さまが悲しむもの。アスティン……もっときちんとお話が出来れば良かった。どうしてわたし、泣いているの……? これが恋の喪失なのかな。


 今度は、今度こそ……人のことを想いながら恋をしたい。また会いたいな、アスティン……初恋の彼に。

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