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un common~非常識な奴らの日常~  作者: うみねこ
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主人公、就活に勤しむ。【2】


第1章「非常識なあんちくしょう」


*************************


プルルルル、プルルルル、ガチャリ。


『はい、こちら【アンコモン】人事部求人係担当、東雲です。』


数回のコールが鳴り、相手が出た。声質から察するに女性・・・ってか、思わずドキリとする位可愛い声だ。


『あの・・・いかがなされましたか?』


「あ、す、すみません!!求人情報を読んでお電話させて頂きました、佐藤と申します。」


『求人情報・・・ですか?』


ん?


「は、はい。あの、清掃員のアルバイトなんですが・・・まだ募集中でしょうか?」


『え・・・えっと、し、少々お待ち下さい!!』


(何だ?まさか、もう募集締め切ってたのか?)


ま、そうだよな。あんな好条件、すぐに決まるよな。


(はぁぁ、また失敗か・・・。)


『あ、あの、お待たせ致しました。清掃員の件、当社としても未だ・・・というより、全く決まらずに困っていたのです。もし佐藤様のご都合がよろしければ今週末にでも面接をさせて頂きたいのですが・・・。』


「・・・へ?」


『あ、あの、ですから・・・』


(し、しまった!!)


「い、いえ!すみません!今週末ですね、大丈夫です!全然問題ありません!!!」


あまりの衝撃に思わず声が出てしまった。なにをやってるんだ俺は!


『それは良かったです!では、詳しい日時なのですが・・・』



*************************



その後、面接の日時や場所の打ち合わせも滞りなく進み、中々の好感触の内に通話は終わった。


それとなく聞いてみたが、給料も勤務時間も待遇も、間違いはないそうだ。しかも、働き次第ではそのまま固定の清掃員としても雇って貰えるらしい。


「待ち合わせ場所は本社入り口、時間は10時から、っと。」


手帳へのメモも抜かり無し。ペンをテーブルに放って、自室の壁に掛けられたリクルートスーツに目を向ける。


「これでお前ともしばらくお別れ・・・になればいいなぁ。」


半年間で随分とくたびれてしまったスーツ、もとい戦友に感慨深い何かを感じながら、俺は面接練習に励むのだった。



***********************



そして、面接当日。


「この数日、出来ることはやった。髪も身だしなみのチェックもよし。あとは・・・って、え?」


最終的なチェックを終え、俺はタクシーで面接場所に指定された場所、本社前に到着・・・した・・・のだが。


(で・・・・・・でっけえええええ!!!?)


そこにあったのは、3つに連なったとてつもなくデカいビルだった。


いや、そもそもこれをビルと称していいのだろうか?


数十メートルはあるであろうその高さは、何階建てか数えるのが馬鹿馬鹿しくなる程で、周囲を囲っているであろう何製だか分からない柵から連想すると広さに至っては某有名なドーム何個分?という陳腐な感想しか出てこない。


「なんだよこれ・・・ってか・・・もしかしなくてもこれ、大企業ってやつなんじゃ・・・」


場違い感が否めず、思わずその場に立ち尽くしてしまう。


(ここに就職しようとしてんのか俺っ!?いや、むりむりむり!!俺のようなやつが来る場所じゃねーってコレ!!)


「待ち合わせって・・・この門の前でいいんだよな・・・」


(どうしよう・・・何も知らずに来た自分が恥ずかしすぎる!!受かるはずねーよ!もう帰っちまおうか・・・でもなー・・・アポまで取り付けといて今さら無理です、なんて通じるはずないし、すっぽかすなんてもっての他だし・・・)


「あの・・・」


(つーかそもそも、こんな大企業だなんて知ってたら身の程弁えて面接なんて来ねえっつーの!ちくしょー・・・ネットで調べた事前情報じゃこんなこと書いてなかったぞ・・・てっきり中小企業位だと・・・)


「あ、あの・・・」


(あーまた明日から職探しかなーこりゃ・・・とりあえず先方に会ったら、平謝りして・・・)



「あ、あの!聞こえてますか!!!?」


「は、はいいぃ!!!」


耳元で叫ばれ、思考の彼方に行ってしまっていたところを呼び戻された。


「あの、佐藤小太郎さん・・・でしょうか?」


「・・・・・」


振り向くとそこには、黒い髪の天使がいました(まる)


腰まで伸びたさらさらしたキューティクル半端なさそうな長い髪。まぁ、キューティクルがなんなのか知らないけど。少し垂れた目元からは優しさが溢れんばかり、ってか最早洪水ばりに溢れてる。身長は俺の胸元くらい。そして、鳥の囀りすら騒音と化してしまいそうな声・・・ん?この声、何だか聞き覚えが・・・


「あのー佐藤さん・・・ですよね?」


「は、はい!佐藤小太郎です!歳は19歳です!よろしくお願いします!」


「ふふっ、佐藤さんって面白い方なんですね!あ、申し遅れました。私、人事部求人課で課長代理をしております東雲沙霧(しののめ さぎり)と申します。歳は内緒ですっ!ふふっ。本日はわが社の求人募集に際してお時間を頂いて、誠にありがとうございます!今日は私が佐藤さんの案内をさせて頂きますねっ!」


そう言って、東雲さんはぺこりと頭を下げた。










(・・・父さん、母さん、決めました。俺、何がなんでもこの会社に就職します!!!)






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