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un common~非常識な奴らの日常~  作者: うみねこ
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主人公、就活に勤しむ。

2017.10.20執筆開始


第1章「非常識なあんちくしょう」


*****************************


「あー、もうダメだ。なんなんだよこんちくしょう」


ため息をつきながら、そう1人ゴチて、俺はベッドにバタリと寝転んだ。


かれこれ19年という月日を過ごしたこの自室には、最早俺の体に最大限フィットしてくれるといっても過言でないベッドと、テーブルが一つ、その上に置かれたノートパソコン、そしてこの半年で溜まった、いや溜まってしまった求人雑誌が山のように積まれていた。


差し障りない自己紹介をしよう。俺の名前は佐藤小太郎。19歳。172cm,65kgの中肉中背。黒髪黒目、卒業アルバムを見たら「あ、こんな奴いたな。」と、思われる容姿。


学生の時に付けられたあだ名は「THE平均点」もしくは「Mr.アベレージ」、学校のペーパーテストではいつも平均点の±5点が限度。将来の夢は公務員。趣味は読書と映画鑑賞。


自分で言ってて悲しくなるくらい、普通だ。


そんな、平凡という言葉が自分の為にあると気付きつつあった1年前。平凡じゃない出来事があった。


両親の他界。


好きな小説に照らし合わせれば、いきなり両親が他界して天涯孤独なんて正味ありきたりすぎて、それこそ使い古された「普通」すぎる出来事。


でも、現実じゃそうはいかなかった。


家族の為にサラリーマンとして毎日クタクタになるまで働く父さんを尊敬していたし、いつも怒ってばかりだったけど毎日旨いご飯を作ってくれる母さんに感謝していた。


そして俺は、二人が死んだという現実に耐えられなかった。


通っていた学校を辞めて、引きこもってしまった。


両親が残した保険金があったからどうにか生活はできたが、毎日毎日現実から目を背けるためにアニメや小説の主人公に自己投影し、逃げ続ける日々。


だけど、ある日気付いた。


こんな自分を、両親が見たらどう思うだろう。どんな顔をするだろう。


そう考えるといてもたってもいられなくなった。このままじゃ両親に合わせる顔がない。


「・・・働かなきゃ。」


そう考えるに至るまで、半年という年月をかけてしまったけれど。


しかし、一度逃げ出してしまった者に対して、現実はそう甘くなかった。


考えてみてほしい。高校を中退し、半年間ニートをしていた若者。この半年で車の普通免許は取ったものの、見た目は普通、大したスキルも経験も、資格も持ってない半端ものを雇ってくれる会社など、あるわけもなく。


思い立ってから半年間、派遣のバイトで日銭を稼ぐ毎日を送りながら今に至る。


「やっぱ、学歴と資格なんだよなあ。こうなったら通信講座でも・・・ん?」


求人雑誌をペラペラと捲りながら呟いていた俺の目に、一件の求人欄が止まる。


「・・・学歴不問、勤務時間9時から5時(休憩1時間)、残業手当有り、簡単な清掃員のお仕事、時給・・・っ!?」


俺は思わず目を見開いた。


「時給・・・2500円っ!!?」


いや、待て。いくらなんでもあり得ないだろ!?


たかが清掃バイトで2500円って、あれか?お掃除するのは社会のゴミ共です(裏)みたいな事かっ!?つーか、この取って付けたような『アットホームな会社です♪』って所にそこはかとないブラック臭を感じるんだがっ!!?


「でも、2500円・・・計算して1日6時間だから・・・15000円!?・・・いや、待て落ち着け俺。こんなんブラックに決まってんだろ。」


だが、何故なのか。


頭ではブラック企業に決まってると考えながら、この求人から目が離せない。気になって仕方がないのだ。


「まぁ、受けるだけなら・・・うん、こんな好条件なら他にも働きたいって奴が沢山いるだろうし、俺が申し込んでも何ら不思議じゃ・・・って違う違う!!これは絶対ブラック!だから・・・」


また、目が吸い寄せられる。


会社の住所は隣町。電車で通えるし、よく見たら通勤手当も・・・。


「そう、だな。受けるだけなら、うん、受けるだけ。」


そう言いながら、俺の手は自然と携帯へと伸び、俺の目は情報欄に載っている電話番号をなぞっていた。



それが、俺の人生を普通とは真逆、非日常の世界に引きずり込むとは考えもしなかった。


******************************

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