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103号室  作者: トカゲ
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前編

ギリギリ夏のホラーに間に合った

 東京駅から7分程歩いた場所に裏野ハイツというアパートがある。

 1LDKの風呂トイレ付き、家賃は5万と都心にしては安めの家賃である裏野ハイツだが、事故物件でもないにも関わらず人気がない物件として近隣の不動産屋には有名な曰くつきの物件だった。


 築年数が80年を超えている所が人気のない原因なのか?

 それとも外の壁が植物で覆われていて少し不気味な所が原因だろうか? 事故物件でもないのに家賃が安すぎるのが問題なのかもしれない。


 ボロボロで不気味な裏野ハイツの評判は近所でも決して良くはなく、家賃が5万でも高すぎると言われているほどだ。


 そんな裏野ハイツの103号室には仲の良い家族が住んでいた。

 30代の夫婦と3歳になったばかりの子供の3人家族で、子供はいつも母親と一緒に公園で遊ぶ姿やスーパーで買い物をしている所をよく見かけられている。

 夫婦の評判は良く、何であんなに感じの良い人達があんなボロアパートに住んでいるのだろうと、近所で時折話題に上がるほどだ。


 「若いし、きっとまだ貧乏なのよ」

 「苦労してそうだし、差し入れでも持って行ってあげようかしら?」


 おせっかいな近所のおばさん連中はそう言っては夫婦に世話を焼いていた。

 夫婦も困ったように笑うものの、嫌がるそぶりも見せずそれを受け入れている。

 夫婦は地区の掃除やイベントにも積極的に参加するし、大人だけでなく子供にも積極的に話しかける事から老若男女から好かれていた。


 ある時、裏野ハイツの近所で子供が行方不明になる事件が起きた。

 夜になっても帰ってこない、電話もつながらない。

 最初はただの夜遊びだと思っていた親達も、夜が明けると不安になって警察に駆け込んでいく。


 誘拐の線で警察の捜査も行われたが、一向に手掛かりは見つからなかった。

 身代金の要求は一切ないし、目撃情報もない。

 警察も必死に捜査をするが、何時までたっても状況は進展しなかった。


 それからは子供が行方不明になる事件が1か月に1回は起きる様になる。

 いずれも身代金の要求はなく、目撃情報も出てきていない。

 いなくなる子供は3歳~8歳までの小さな子供で、幼稚園や小学校では見回りの強化、親への注意を促していく。

 それでも行方不明になる子供は増え続け、手掛かりも掴めない。

 

 裏野ハイツに住む夫婦の子供も例外とはいかなかった。

 ある日、夫婦の子供も煙のように消えてしまったのだ。

 少し目を離した隙を狙われたらしい。 

 泣き崩れる夫妻に近所は同情を向けるが、何も被害者は彼らだけではない。

 明日は我が身なのだと身を震わせていた。


 消えた子供は既に10人を超えており、それを重く見た学校、警察は事件が収まるまで授業を自宅学習に切り替えて子供たちに家から出ないようにと注意を促した。


・・・


 行方不明の子供たちを探しているのは警察ばかりではない。

 子供の親たちは探偵を雇い、警察とは別に捜査をしてもらっていた。


 そんな雇われた探偵の内の1人である山田 源三は、被害者達の証言や近所の聞き込みをしていく中で妙に引っかかる事があった。

 それを確信に変えるため山田は今までの情報を整理し、並べていく。


 「これはもしかしたら………」


 行方不明になった子供達全員がという訳ではないが、少なくとも7割近くの子供がいなくなる前の目撃情報に裏野ハイツの103号室に住む夫婦どちらかの姿があった。

 この夫婦の子供も消えてはいるが、それでも何かが引っかかる。

 カンとしか言いようがないが、山田は自分のカンを信じてみることにした。


 「調べてみる価値はありそうだ」


 警察ですら見つけられない手掛かりを普通に捜査しても見つかるはずがないし、ダメ元でも行ってみる価値はあるだろう。

 そう考えた山田は裏野ハイツに向かうことにした。



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