プロローグ
ビーッビーッ!!とけたたましい警報機の音が、ガラス張りの研究室に鳴り響く。
赤いランプが点滅を繰り返し、研究員達の焦りに染まった声が室内を飛び交う。
「数値、上昇が止まりません!!」
「観測地Aの温度、300℃を越しました!!更に上昇!!!」
「観測地D、-200℃!!温度が更に低下!!!!」
「脳波、能力波のデータを逸脱!!能力の暴走です!!!!」
慌てふためく研究員。そして今回の実験の責任者である桐谷昌栄の視線はガラスの向こうの燃え盛り凍りつく実験場を捉えていた。
実験場の中心には生後間もないと思われる乳幼児が一人、実験器具から伸びたコードに繋がれて泣き叫んでいる。
今回の実験の被験者であり、桐谷昌栄の息子である桐谷燐太郎。
生後一カ月の命はいま死の危険に晒されていた。
「温度計、観測不能!!!!」
「エネルギーの急上昇を確認!!!止まりません!!!!」
燃え盛る炎は衰えを知らず、勢いを増していく。
凍てつく大気は炎に対抗するかのように世界を絶対零度へ変えていった。
「ねえ!!なんとかならないの!!?あの子を助けて!!!!」
金髪を振り乱し悲痛な叫びをあげる、実験の副チーフであり燐太郎の母親である桐谷リリー。
ハーフの象徴である碧眼の瞳から涙を流し、顔には絶望が色濃く現れている。
それでも我が子の無事を縋るように泣き叫んでいた。
「鎮静剤は!!?」
「機材が破壊されて投薬できません!!!!」
「クソッ!!なんとかならないのか!!!」
「いやああああああ!!!!燐太郎!!!燐太郎!!!!」
両親の悲痛な叫びが観測室を切り裂く。
「エネルギー上昇、臨界点を突破!!!爆発しま――」
言い終わる前に、光と轟音、衝撃が観測室を襲う。
実験の衝撃に耐え得るはずの耐衝撃ガラスが吹き飛び、熱風と冷風、それに飛ばされた器具が室内を暴れまわり部屋を破壊した。正にそれは地獄のような光景だった。
一瞬の地獄の後、静寂が訪れた。
パラパラと瓦礫が崩れる音。
そして静寂の中、ただ嘆くような赤子の泣き声が無残に破壊された研究室に響いていた。
初投稿です。文章も拙いしこれからの事も余り考えていません。まぁ自分のペースでやっていきたいなと思います。どうぞ宜しくお願いします。