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悪魔の黒い城

作者:

生まれて初めての童話です。きっと、大学の課題として提出しろと言われなければ書いてなかったかと。

 中世のヨーロッパの話である。ある小さな国の立派な白いお城に、美しい王女がいた。その美しさに、遠くからも王子や貴族や騎士などがこぞって結婚を申し込んだが、彼女は見向きもしなかった。

 それには理由があった。彼女には遠い隣国の王子という婚約者がいた。2人は深く愛し合っていたが、ある日、その隣国が突然滅び、王子も突然行方が分からなってしまったのだ。それでも彼女は彼の帰りをずっと待っていた。だから、どんなに熱心に求婚されても応じなかったのだ。

 そんな彼女の噂は、城のある町から山を三つ越えた所にある、荒野の黒い城に住む、恐ろしい悪魔の耳にも入った。悪魔は幸せを無くして悲しむ人間が何よりの好物で、味の良い人間を手に入れるために、人を不幸にしては食べていた。そんな魔物が、美しく皆に愛されるという幸せな暮らしから急に恋人を失った不幸せな王女を狙わないわけがない。

 悪魔は、王女の事を知った三日後、黒わしに変身して、城の庭で花をつんでいた王女をつかんで大空高く舞い上がり、山を三つ越えて黒い城にさらっていってしまった。

 これに驚き慌てた父王は、姫を助けだした男は彼女の婿にすると言った。かつて求婚をはねつけられた騎士達は喜んで黒い城に向かった、王子や貴族は兵隊を送り込み、時には自分でも城に向かった。しかし、戻ってきた者は一人もいなかった。

 そんな時、この町に、ぼろぼろのマントを着たさすらう旅人がやって来た。

 町の住人達は、最初このみすぼらしい男を眉をひそめて見ていたが、次第に彼の物腰の上品さに気付き、慣れていった。男は町の人から姫の話を聞くと、すぐさま踵を返して城を訪れた。

「町の人々から、姫様の噂を聞いてやって来た者です。王様に一目でもお目にかかりたいのです。どうか通して下さい」

 兵士はへっと笑って逆に槍で道を塞いだが、城から王の使いが現われ、旅人を通すように言い付けた。

 使いに案内され、旅人は王の前にひざまずいた。

「私が姫様を助けに参りましょう」

 王は無理だと思いつつも、わらにもすがる思いで助けを求めた。

「よろしく頼んだぞ。武器はこちらで用意しよう」

 しかし旅人は、にこりと笑って首を振った。

「いいえ。お気持ちは嬉しいですが、私には自前の武器があります。王様のお持ちの武器を私の手で傷めるわけにはいきません」

 そう言って、彼が取り出したのは、ぼろぼろのマントからは想像もつかない、金銀宝石で装飾された美しい剣であった。

 王は、驚き、そして嬉しそうに旅人の手を、自ら握った。

「どちらのお人かは分かりませんが、きっと本当は高貴なお方なのでしょう。なぜそのようなお姿でいらっしゃるかは分かりかねます。ですが、貴方が立派なお方である事は分かります。私の娘の婿にするにももったいないくらいかもしれません。……どうか、娘を助けて下さい。貴方ならあの悪魔にも勝てる――なぜか、そんな気がします」

 旅人も、感無量と言わんばかりにぐっと力強く手を握り返した。

「畏まりました。必ずや、姫様を助けましょう」

 しかし、何も知らない町の男達、特に兵隊は

「あんなみすぼらしい男が勝てるわけがない」

と笑った。

 旅人は、それでも悪魔の城に向かって山を三つ越えた。

 雪がびゅうびゅう音を立てて風に舞って目の前を白く染める。マントで顔を覆い隠しても、その隙間から雪が入ってくる。寒さに、体力も奪われる。

 そんな中でも、じっと目をこらすと、白い景色の中に黒い城が見えた。

「ここか……」

 意を決して旅人が城の重い鉄扉を開けるとそこには、恐怖に怯える王女の体をつかむ、美しい容貌であるながらも顔面蒼白な長身の男がいた。その歯は、獣のようにするどいそれであった。

 旅人は、一瞬慄きながらも、剣の柄を力強くつかみ、声を張り上げる。

「私は、王様の命令でそこにいらっしゃる王女様を救いに来た。悪魔め、貴様の息の音、この剣で止めてやる!」

 旅人が姿に似合わぬ金の剣を抜くと、悪魔はナイフのように鋭い牙をむき出しにして襲い掛かって来た。

「息の根を止められるのは貴様だ!このみすぼらしいさすらい人め!!」

「さて、どうかな!!」

 旅人は、魔物を恐れず勇敢に立ち向かった。しかしだんだんと、悪魔によって壁まで追い込まれた。

「どうしたどうした勇者さんよ!俺を殺すんじゃなかったのかぁ!!?」

「くっ……!」

 さすらい人の背中が、壁に触れる。彼の頬を冷や汗が流れる。

「もらったぁ!!」

 悪魔が、鋭い爪をむき出してさすらい人に飛びかかる。そしてついに、悪魔は旅人の首に食らいついた。

「うう……」

 旅人は、首の傷を押さえて、呻き声と共に倒れてしまった。

「ハハハハ!!!」

 悪魔が、勝ち誇って高笑いする。

 王女は、床にへたり込んでしくしくと泣き出した。

 だがその時であった。

「ハハ……ハ……?」

 悪魔の腹を、金の剣が貫いた。

 その剣の主を見て、悪魔も王女もぎょっとした。旅人が、首からどくどくと血を流しながらも、金の剣を悪魔に突き立てていたのだ。

 ふと、旅人が、

「私の顔に見覚えは無いか」

と言ってマントを取った。

 マントの下から現われたのは、きらびやかな服を着た、美しい若者だった。しかしその顔は青白く、口からは鋭い牙が覗いている。化け物の顔だ。

 その顔を一目見て、王女はあっと声を上げた。その若者こそ、彼女が捜していた、行方が分からない王子だったのだ。

 悪魔は、ぶるぶる震えてこう叫んだ。

「お前は、俺がこの城を奪った時にいた、王子じゃないか!」

 若者が、ギリリと、歯を食いしばって悪魔を剣の切っ先のように鋭く睨み付ける。

「そうとも!私はお前にこんな化け物にされた挙句、城も国もお前に奪われた。あの時から何年もお前を捜してさすらっていた。お前を殺せば、人間に戻れると聞いたからだ。今まさにその時だ。お前は城も国も民も奪い、私の恋人さえも奪おうとしている!許しはしない!」

 旅人であり王子である若者の金の剣が、悪魔の心臓を貫いた。

「ぎゃああ!!!」

 悪魔は、恐ろしい断末魔の叫びをあげて、死んで白い塩となった。床には、おびただしい量のルビーよりも赤い血液が拡がっていた。

 すると王子の顔に血の気が戻り、牙も消えた。人間に戻れたのだ。

 王子と王女は、ぼろぼろと涙を流して抱き合った。

「ずっと、会いたかったわ」

「ずっと、待っていてくれたのだね」

 王子と王女は、手を取り合って白い城に帰った。そして間もなく結婚し、末永く幸せに暮らしたという。

 しかし、悪魔の呪いは消えなかった。かつて悪魔を主とした城の周りでは、白い塩と血のように赤いルビーがとれるようになった。特にルビーのその輝きは、思わず手を伸ばしたくなるほど鮮やかだったそうだが、塩やルビーを家に持ち帰ると、持ち帰った人間は必ず、塩を持ち帰れば水を失って、ルビーを持ち帰れば大量の血を流して死んでしまったという。

 この呪いのせいか、やがて、誰もこの黒い城に近付く事はなくなったという。しかし今でも、何も知らない旅行者がここに迷い込んでは行方不明になっているという。ただし、かつて悪魔を倒した王子にあやかって金もしくは剣を身につけている人は呪いを免れると言われており、黒い城近くに住んでいる人々の間では、金色の剣の形をした飾りが、お守りとして愛されているのだという。

何番煎じだよ!と自分で言いたくなります。

だって提出期限ギリギリで書いたんだもん!仕方ないもん!……と、とりあえず言いわけしときます。

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