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とある下級騎士の一日

 聖アルフ歴1876年


中央大陸と西方大陸の中間に存在する二つの島国の一つブライトンという国に一人の新人下級騎士の少年が居る。彼はあこがれの十二国防騎士に任命されるために日夜修練に明け暮れている。


「もう朝か……」


 十七歳になったばかりの少年は、いつものように下級騎士に与えられる宿舎の部屋で目を覚ました。少年は下級騎士に支給される鎧に着替え、父の形見でもある両手剣を背中に背負い部屋から出た。



 少年の父は、ブリテンの特別上級騎士だった。父から騎士としての活躍を聴き続けた少年は、当たり前のこととして、国の魔術師養成学校と騎士養成学校のうち、騎士養成学校に進んだ。父自身も上り詰めることが最後まで出来なかった十二国防騎士【ラウンドナイツ】になるために……



 宿舎の食堂で朝食を済ませた少年は、朝の朝礼が行われる城の巨大な中庭に集まった。この朝礼は下級騎士から十二国防騎士までの全ての騎士が集まる、毎日欠かさず行われているものである。


少年が中庭に到着してしばらくすると、全ての騎士が集まったのか朝礼が開始された。青い服の上に白銀の鎧を纏った騎士が目の前に現れ壇上に登る。


「皆。毎日我が国の国防と発展のためによく働いている。これからも我が国のために更なる力添えをよろしく頼む」


 目の前で演説をしている騎士は十二国防騎士の一人である。彼が話し始めると自然と騎士たちも今まで以上に話に集中している様子である。


「では本日もそれぞれの職務を全うして欲しい。では解散」


 最後に国防騎士は、それだけ言うと壇上から降りた。それを合図に騎士たちはそれぞれの持ち場へと向かっていった。


 

 朝礼の後は午前の鍛錬である。主に型の練習と寸止め前提の練習試合が行われることになっている。少年は練習用の刃が潰されている両手剣うぃ手に持ち、剣術の型を一通り実践し始めた。


「おう。調子はどうだ?」


 少年が剣を振るっていると、一人の男が話しかけてきた。彼は、少年の住んでいた地方と同じ出身の上級騎士である。肩に得物である長槍をかけたままリラックスした状態で少年の剣の型を評価した。


「前よりも細かい部分の動作にも気を配れるようになってるな……ただ実戦で戦うにはまだ速度が少し足りてないかな」


 男の言葉を受けた少年は、一瞬少しがっかりした様子であったけれども、すぐに少年は男に答えた。


「ご指摘ありがとうございます。今後もより一層の訓練を積みます」


 少年の言葉を受けた男は、苦笑いしながら答える。


「お前も相変わらず堅苦しいな。別に年も二つぐらいしか離れていないんだしもう少しのんびりした態度でいいんだぜ」


 男の言葉に少年は「努力します」と返した後、男に昼間以降の予定を訪ねた。


「昼間? 悪いが昼から王都の西にある森に大量発生している魔物共を狩りに行かなきゃいけないんだ。悪いが用事なら明日にしてくれ」


「そうですか……それでは別の機会にしますね」


 少年は男にそう答えると剣の型を再度練習し始める。それを見た男は「肩に力を入れすぎるなよ」と言い残し、自分の持ち場へと戻っていった。



 宿舎で昼食を食べた後、少年は珍しく出来た暇を持て余していた。


(さてどうしようかな。今日は珍しく午後からは何も予定が入っていないしなぁ……)


 少年がそんな風にしばらく考え事をした後に結論を出した。


「そうだ。王都の街に出てみよう」


 それだけ決めた少年は、宿舎の自室で下級騎士用の鎧から私服に着替え街へと向かった。



着替えを終えた少年は、まず王都の本屋へと立ち寄った。様々な本が置かれている中で少年は迷うことなく神話小説【神代の英雄の活躍を題材にした小説】の棚に向かい、自分が読み続けているもの新刊を探し始める。

「よかった。まだ売り切れてなかった」


 少年は残り数冊となっていたお目当ての本を手に持ち、改めて購入するためにカウンターへと向かった。


「また買いに来てくれたのかい? いつもありがとうね」


 本屋の店長であるおばさんも少年の顔を既に覚えているのか少年に親しげに声を掛けてきた。少年も店長に挨拶をした後に本を店長に渡し本を購入した。


 本屋を出た少年は、次にどこに行くのか考え始めた。


(まずいな……お目当ての本を買えたのはいいけど、これからどうしようか)


 少年が思案していると、一人の修道服を着た少女が声を掛けてきた。


「あれ? あんたこんなところで何をしているのよ?」


 声に気がついた少年は、振り向き声の主を確認した。そこに立っていたのは聖十字教会の下部組織、聖堂教会が運営する教会に所属している幼馴染の少女である。


「こんなところでどうして騎士様が油を売っているのかしらね? ひょっとして脱走したんじゃ……」


「いやいやいや。違うから。脱走なんてしてないからね」


少年は慌てて少女の誤解を解こうと試みた。しかし少女は、最初から分かっていたかのように笑いながら話す


「ごめん。本当に今日は特別暇なだけでしょ? 雰囲気見てたらわかるわよ」


 少女にからかわれたと気付いた少年は、少しむすっと表情をした。それに気づいているのかわからないけれども、少女はさらに話しを続ける。


「それじゃあ夕方前までは時間空いているわよね?私もちょうどそれぐらいまで暇なのよね。ちょっと付き合ってくれないかしら?後あんたに拒否権はないから」


 それだけ言うと少女は、少年の腕をつかみ引っ張って行った。この時少年の頭の中に【まさに外道】という言葉がよぎった。



 それからしばらくして、少女は近くにある軽食を取るためのお店に入っていった。


「ここの料理って結構美味しいのよ。あんたも何か食べたら。お昼まだでしょ?」


 少年は、少女が楽しげに十種類近くの料理を注文している様子を内心嬉しく思いつつ気になった疑問をそのまま聞いた。


「ここの料理が美味しいかどうかはともかくとして、戒律的に修道女がここで呑気にご飯食べていいの?確か暴食は悪だったはずだけど……」


 少年が苦笑いしながらもした指摘に少女は不敵な笑みを浮かべながら答える。


「大丈夫よ。バレなきゃ戒律違反じゃないんだから」


 この時少年には、少女が神に仕える修道女というよりも悪魔そのものではないかと思えた。しかし下手なことを言えば自分自身の首が飛ぶとでも思ったのか、少年は何も言うことなくちょうど来たサンドイッチを頬張った。


「今アンタ何かすごく失礼なことを考えてたでしょう?」

 

少女の鋭い直感によるしてきを受けた少年は固まりながらも答える。


「イエイエ。ソンナコトハアリマセンヨ」



 暫く食事を続けていると、少女は今までよりも少し真剣な様子で少年に声をかけた。


「そういえば。あんたはやっぱり十二国防騎士を目指すのよね?」


 突拍子の無い少女のしてきを受けた少年は一瞬驚いた後に平然と答えた。


「うん。もちろんさ」


 少年の言葉を受けた少女は、どこか心配そうな様子で少年に再度問いかける。


「じゃあ。そのために過剰な自己犠牲に走ったりなんてしないわよね? 最初も言ったと思うけど、そんなことは私が許さないから」


 少女の言葉を聞いた少年は驚いた。そのまま今度は少年が少女に問いかける。


「ひょっとしてだけど心配してくれてるの?」


 少年の言葉を受けた少女は顔を真っ赤にしながら捲し立てる。


「ハァ!? なんで私があんたをそこまで心配しなくちゃいけないのよ!? 別にあんたとはただの幼馴染なんだから、そのまま変なかたちで死んじゃったりなんてしたら目覚めが悪いだけよ! 心配だとかそんなのじゃ全然ないんだから勘違いしないでよね!!」


 少女の何時もの調子の罵倒を聞いた少年は少女にお礼を言うのであった。


「ありがとう。でも大丈夫だよ。僕はまだ死んだりなんてしないからさ」


 少年が微笑みながら答えた言葉に少女は一瞬固まった後に、まるで照れ隠しでもするかのように答える。


「当然でしょ。勝手に死んだりしたら許さないんだから……」



 それから二時間ほど、たわいのない日常会話をした後に二人は別れた。宿舎に戻り夕食を食べた少年は自室の布団に入っている。


「今日はなんだかんだ色々あったな……うん明日からも頑張ろう」


 少年は明日へと意識を向けつつそのまま眠りについたのである。

                  

        終わり


こんにちはドルジです。今回はファンタジー世界を題材にしたほのぼの物を書いてみました。いかがだったでしょうか?

 これを書いている時の筆者は2012年12月20日午前0時45分です。正直前日寝ていないので眠いですがあとがきも頑張りたいと思います。ちなみに今日はマヤ暦で世界が滅びる一日前です。みなさんはションベンは済ませましたか?神様にお祈りは済ませましたか?世界終末の瞬間に部屋の隅でガタガタ震える心の準備は問題ないですか?

 悪ふざけはさておき、今回の小説では意図したわけではありませんけれども主人公を中心に自然と周りに人が集まっているという感じになっています。今まで書いたものには無いタイプではないかと思います。今回の体験を活かして今後の執筆活動も頑張りたいと思います。

 それでは次の小説で会いましょう。



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