共通√ 《8》
小さい頃から、ずっとあいつだけを見てきた。
告白されることもあった。
相手が純粋な気持ちだということもわかった。
それでも、あたしにとってはあいつが一番だった。
あたしの世界であいつはキラキラと輝いていた。
小さな頃から変わらない。
あたしにとって、あいつはとても大きくて絶対的な存在だ。
手に届く場所にいる。触れることができる。
でも、あたしは今まで触れることができなかった。
それでも、いつかは触れないといけない。
あたしは勇気を出してエプロンの紐を結び台所に立つ。
あいつの喜ぶ顔を思い浮かべながら、一生懸命気持ちを込める。
不器用なあたしにできる、たった1つの愛情表現。
宇城のとのデートが終わり、次のデートするべき相手、小さな頃からずっと一緒だった幼馴染の咲の元へと向かう。
咲が待ち合わせに指定したのは、咲の家だった。
時間に遅れないようにと、朝宇城と歩いた道を駆け戻る。
正直なところ、今は咲のことを考えなければならないのかもしれない。
でも、俺の頭の中には先ほどの宇城の言葉がずっと絶え間なく響いていた。
『僕は、君が…夏川陸という男に恋しているんだ』
この言葉の意味は、本人曰く言葉通りの意味だそうで…。
最初はいつもの何気ない冗談かと思ったりもした。しかし、本人は本気だと言った。
真剣な表情で、不安げな表情で、すがるような表情で、いくつもの彼女の気持ちが混ざり合った言葉に表すことのできない表情で、彼女の気持ちを伝えてくれた。
誰かに…異性に告白されるというのは、本当に初めてのことで、頭の中はそればっかりだ。
宇城は次のデートの相手、その後の相手のことを第一に考えろと言ってきた。
返事は今はいらない。夜にでも、その返事がほしいと言ってきた。
俺は…どうしたらいいんだろう…。
宇城のことは好きだ。でも、それは異性としての好きなんだろうか。友達としての好きなんだろうか。
そんな自問自答が頭の中を駆け巡る。優柔不断な奴だなぁ…と、自分自身にため息をついた。
†
そんなことを考えながらも、咲の家の前まできた。
結局、自問自答した結果、自分の本当の答えを知ることはできなかった。
「…こんなんじゃ、ダメだよな」
ハッキリとしない自分に対して、喝を入れるためにも頬を手で叩く。
今からは咲のデートなんだ。宇城の言ったとおり、デート中にその相手とは違う別の異性を考えるのはいけないことだ。
今だけは、宇城からの告白を忘れることにしようと思った。
軽く体の中にたまった重い息を吐き出して、咲の家のインターホンを鳴らす。
インターホンからがちゃっと音がして、咲の声が聞こえてくる。
「はーい。あ、陸?ちょっと待っててね。今行くから」
心なしか弾んでいる咲の声が、さらに俺を現実へと引き戻す。
そうだよな。
今は、咲とのデートを楽しもう。俺にできることは、それだけだ。
それが宇城にとっても、咲にとっても幸せなことだろう。
本当にそうなのかわからないけど、そう自分に言い聞かせてから、咲が玄関から出てくるのを待つ。
しばらくして、玄関先でドタドタという騒がしい音がした。
「あいかわらず元気だなぁ…」
思わず、そう本音を漏らして苦笑してしまう。
小さい頃から元気と面倒見はすごく良かった幼馴染。
そして、何故かいつも両手にバンテージを巻いているという喧嘩上等な幼馴染だ。
俺はそんな幼馴染と今日、デートすることになった。なんというか、変な気分だなぁ…。
「ごめん、待った?ていうか、完全に待たせちゃったわよね」
申し訳なさそうに笑いながら、咲が玄関を開けて転がるように走り寄ってくる。
「ちょっとだけ…うん、ちょっとだけね。準備に時間がかかっちゃったの」
「別にいいよ。咲に待たされることには慣れてるしね」
「なっ…いっつもあたしがあんたを起こしてるのを忘れたとは言わせないわよ!!」
「いや、そうは言ってもですよ。俺だって咲を起こしてやったことはある」
「どや顔でそんなこと言ってるけど、あんたに起こされのなんて今までに両手で数えられるくらいしかないじゃない!!」
ばっと顔の前に手を突き出してくる幼馴染。
立っている指の本数は7だ。こんな細かいことまで覚えられてるなんて…勉強にもこの記憶力を生かせればいいものを…。
「はぁ…」
「ちょっとー!!なんでため息つかれてんのよ!?」
「いや、咲の未来が心配になってね…」
「どういうことよ!!!」
「よし、率直に言うぞ?俺に起こされたなんていうどうでもいい回数より、勉強に関することをしっかりと覚えたほうが、将来的にも幸せだ、うん」
「なっ…ど、どうでもよくないわよ!勉強の方がどうでもいいんだから!!」
どうしよう、本格的にこの子の将来が心配だ…。
ていうか、どうでもよくないってなんだ。
何、もしかしてこれ俺が死ぬまでカウントされ続けちゃうかんじなの?さすがに自意識過剰すぎ?
いや、相手は咲だ。油断してはならない、油断したら最後…自分の人生にさようならだ。
「お、おーい?遠い目しちゃってどうしたのよ?ちょっと?陸ー?」
ひらひらと目の前で手を振られて我に返る。
ついでに、バンテージがひらひらと揺れて、今までに殴られてきた経験から反射的に現実に引き戻されたともいえる。
って、俺は何こんなどうでもいいこと頭の中で考えてんねん!
「あ、あー…じゃあ、行こっか」
「展開急すぎじゃない!?しかも、何かをごまかすように!」
「大丈夫、急展開でもないし何かをごまかしてもいないから」
本当のところ、すっごく急展開だと思う。
でも、このまま放っておくと、俺が心の中で変なノリツッコミを延々と繰り返しそうなんだ…。
†
咲と2人でどこに行くのかも決めないまま、適当に近所の川原をゆっくりと歩く。
さらさらと流れる川は昼時の日の光を反射してきらきらと輝いていた。
遠くから聞こえる子どもの声。自転車で通り過ぎていく人。何もかもが俺たちの小さい頃から変わっていない。
しかし、そんな俺たちも今となっては高校生。青春まっただ中の難しいお年頃だ。
隣でさっきからキョロキョロと挙動不審に目を忙しなく動かしている咲だって昔は小さかった。
ふと、子どもの頃を思い出す。
咲は今も昔も変わらず小さかった。小さいというか小柄というか、本当に華奢な女の子だった。
身軽で自由奔放で動物に例えるなら『猫』のような、正にそんな少女だった。
小さな頃は今のように、アクセサリーのように両手にバンテージを巻くなど、見た目だけで既に物騒な少女ではなかったのだ。
そう、あの頃の咲は本当に小動物のように小さくて、何かに怯えるような目つきをした小さな女の子だった。
「ねえ、陸?」
「ん、ん?何かな?」
突然の呼びかけに少し反応が遅れてしまう。
咲はじっと俺を見上げていた。小さい頃とは違う、自分の意思を持った目だ。
「あたしね、実は…その、お弁当…作ってきたんだけど、そ、その…よかったら、お昼に食べないかなって思って…」
先ほどと同じように忙しなく目を動かし、ぼそぼそと呟くその姿に思わず苦笑してしまう。
さっきから大事そうに抱えていたバスケットの正体はお弁当だったらしい。
「咲のお弁当はいつも美味しいからね。一緒に食べようか」
「う、うん!そうね!一緒に食べましょ!!」
嬉しそうに何度も何度も頷きながら、咲はバスケットをもう一度力を込めてぎゅっと抱いた。
「それで、お昼まではもう少しあるけど、咲さんはどこか行きたい場所とかあるのかな?」
ちらっと携帯を取り出して時間を確認すると、液晶には11時45分という文字が刻まれていた。
「特に行くところがないなら、ここの川原でピクニック気分で食べるのもありだよね」
土手の方に目をやると、犬の散歩をしているおじさんと目が合った。
軽く会釈をすると、おじさんは何を勘違いしたのか、口パクで「頑張れよ」と言ってきた。
いや、状況的には勘違いはしてないんだろうけど、咲と俺は勘違いをされるような仲じゃない。
とりあえず、返しに困ったため軽くガッツポーズをしておいた。
おじさんは満足そうに頷くと、再び前を向いて歩き始めた。いや、見ず知らずのおじさんと俺は何をやっているんだ。
「陸ってやっぱりそっち系の趣味があったわけ?」
慌てて目をやると、咲がジト目でこちらを見ていた。
その瞬間、自分の身に危険が及んでいることを俺はすぐさま感知した。
「いくら陸が可愛い顔してるからって、おじさんにまで狙われるなんて聞いてないわよ!」
「あの、咲さん?あなたは何を公然の場で口走っているんですか!?お願いですからやめてください」
ご近所さんとの信頼関係と俺の世間体、その他もろもろが一気に崩壊してしまう!!
「陸はホモじゃないわよね!?」
「質問がどストレートすぎるうえに、そんな大声で聞くようなものじゃないだろ!?」
さっきまでの落ち着いた雰囲気はどこに行ったんだろう。
いや、咲は全然落ち着いてなかったけども。
「こ、答えなさい!今すぐ答えないと、その…殴る!!!」
「理不尽だよ!そんなの絶対おかしいよ!!そして、なんでそんな右手を構えてるの!?怖い!怖いからやめて!!」
咲の構えた右手のバンテージがそよ風によって、ひらひらと揺れている。
だ、だめだ!爽やかな表現をしようとしても、この状況が爽やかさを許さない!!
「咲、まずは落ち着こう!そう、そうだよ!落ち着かないと、咲が抱えてるバスケットが大変なことになってしまう!」
びしっと咲が空いた左手で抱えているバスケットを指差す。
咲は慌てて両手でバスケットを抱え直して、悔しそうな顔で俺をジト目で睨んできた。
「ず、ずるいわ…なんでそんな人の弱みを握るようなことをするのよ」
怒気を孕んだ声でそう言われ、少し怖気付きそうになるがここまできたら引けない。
ていうか、引いたら引いたでこの後が怖い…っ!
「陸がホモかホモじゃないって言うだけでいいのに…」
「いや、勿論後者に決まってるじゃないか!!俺はただ、咲を落ち着かせようとしてのことだよ」
こんな公の場でホモホモ連呼されてしまっては、いくら否定したところで俺の世間からの評価は変わらなかっただろう。
むしろ、慌てて反論すればするほど怪しくなるようなものだ。
いや!普通にホモじゃないけどね!あの生徒会長事件から同性愛は懲り懲りだよ!!
「そ、そう…ホモじゃないのね。ふーん、そうなんだ…よかった」
「そんな心底安心したように言わないでよ。てか、小さい頃から一緒にいるのに、なんでそんな信用ないんだよ俺…」
「信用してないわけじゃないわ!ただ、その…一昨日の生徒会長の一件で、予想もしてないところからライバルが出たから不安になっただけよ…」
言いたくなさそうにもごもごと口ごもりながら咲は言う。
でも、なんのライバルかはわからないけど、勝手に俺を真ん中に置いてあの男をライバル視されるのは困る!
「まぁそういうわけで、俺は絶対ホモとかそんなんじゃないから。そこだけは勘違いしないで」
割と本気だ。いや、誰だって一部の女の子歓喜な関係に勘違いされちゃうのは嫌でしょ?
そんな俺の様子にやっと咲は安心したのか、ぶんぶんと首を縦に振った。
「うん!うん!大丈夫よ、あたしは最初から陸を信じてたからね!!」
薄い胸を誇らしげに張って咲はそう言った。
「さっきまで信じてなくて、挙げ句の果てに答えないと殴ろうとしてきたのはどこの誰!?」
「さて、お弁当を食べる場所だけど、あたしちゃんとどこで食べたいか決めてきたのよ」
「さりげなく話を変えたつもりなんだろうけど、全然さりげなくないからね!?」
「今日も陸のツッコミは絶好調ねー。さ、行きましょ行きましょ」
話題の変え方とは違い、本当にさりげない流れで俺の手を握った咲はスタスタと足早に歩き始めた。
大切に持っていたバスケットは今は、片手にしっかりと持ち手を握られていた。
小さい頃はよく繋いでいた咲の手も、小さい頃とは違い少しだけ大きくなっていた。
それでも小さな咲の手を、俺は握り返して咲についていく。
傍から見たら俺は付き合ってる時点で、彼女の尻に敷かれている彼氏という立場に見えるんだろうなーと考えると、少しだけ、ほんの少しだけ悲しくなった。
それを主観的にも感じているため、なおさら悲しい。
…咲と付き合う男の人は苦労するんだろうなー、そんなことを考えていると、咲の将来が急に心配になった。
「ねえ、陸」
「ん、何?」
何度も繰り返されてきたこの会話の始まりの流れ。
これは小さい頃から変わらない。ずっと十数年の間繰り返されてきたお決まりみたいなものだ。
「今からあたしがあんたをどこに連れて行こうとしてるか当ててみてよ」
興味深げに俺の顔を見つめながらも咲は足を休めない。
キョロキョロと辺りを見回して、何か思い当たる場所はないか探してみる。
長い長い川原の終着点へと着き、咲は迷わずその横にある古い鉄橋を渡っていく。
なんとなく、本当になんとなくだが小さい頃の記憶の中にこの風景は刻まれていた。
「あたしにとって、陸との思い出の中で一番大切な場所よ」
一番大切な場所?そんな場所、咲から聞いたことはない。
いつも俺と咲はいろいろな場所に探検と称して遊びに行っていた。
探検と行っても、昔は今とは違い大人しかった咲を、俺が好き勝手に連れ回していただけなんだけど。
そんな中で特別思い出になるようば場所はあっただろうか。
「咲とはいろんな場所に行きすぎて、どこか特別思い入れのある場所なんてのはないよ」
素直な感想を口にすると、咲は少し困ったような笑顔を浮かべた。
てっきり怒ると思っていたから、少しびっくりした。
†
短い鉄橋を渡り、いくつかの道を曲がりながら、俺と咲は1つの大きな公園に着いた。
その間、黙々と前を向いて歩いていた咲が急に振り返り、口を開くいた。
「ここがあたしの思い出の場所」
咲はまっすぐに俺の目を見つめている。
俺がこの場所での思い出を思い出すのを待っているようだった。
「ここは…」
ここは記憶にある。今でも鮮明に思い出せる。
遊具なんてものは特になく、並木道がただ続いているそんな散歩コースには最適な公園だ。
並木道を抜けた先には、大きな桜の木が植えてある丘に出る。
「思い出した?」
咲は再び口を開いて再び歩き出した。
「ここはね、あたしにとって本当に大切な場所なの。でも、本当に大切な場所はこの先ね」
咲が言っているのは、その巨大な桜の木が植えてある丘のことだろう。
「あたしね、今日このデートの企画を宇城と考えた時から、この場所にまた陸と来たいって思ってた」
「そんなに思い出になるような出来事はあったかな?」
「大アリよ!陸にとってはなんてことない出来事だったのかもしれないけど、あたしにとっては人生最大のことだったんだから」
少し頬を赤らめながら言う咲に、少しずつ記憶が蘇ってくる。
「もしかして、咲が桜の木に登ろうとして、失敗してスカートを木の枝で破いちゃっぐおおおおおおお!!!」
無言で殴られた。痛い。痛すぎる。
「なんであんたはそんなろくでもないこと思い出すのよ!バカ!!!」
さっき以上に顔を真っ赤にした咲が俺を殴った方の手をワナワナと震えさせていた。
「いや、あの時の咲は本当に」
「それ以上言ったら殴るどころじゃ済まないわよ…?」
暗黒微笑。5月の蒸し暑い日差しはどこへやら、俺の背中を冷や汗が伝う。
「や、やだなー、咲さんってば何をそんなに怒ってらっしゃるのかしらー?」
危険を回避すべく下手に出ることにする。
人間、危険な時は性別なんて関係ない。
自分の命を守るためには、プライドなんて投げ捨てるのだ。
男のプライド?何それ美味しいの???
そんな自分に言い訳のようなことを考えながらも、俺の背中の冷や汗は止まらない。
大洪水だ。最早ウォータースライダーだってできるだろう。
「あんたが変なこと思い出すのが悪いのよ!あんなのあたしの人生にとって汚点でしかないわ!!」
確かに、あの時の咲は今の咲にとっては思い出したくない自分トップ3には入っているだろう。
泣きはしないものの、半ベソになりながら必死にスカートの中が見えないようにスカートを押さえている咲は、今考えてみると結構可愛らしかった。
ちなみにその時履いていたパンツが、パステルピンクだったことは今でも忘れず記憶に焼きついている。
本当に余談だが、一昨日の咲が身につけていたオレンジの下着も記憶に焼きついている。
簡単に忘れることはできないだろう。男なのだ。仕方がない。
「なんだか、今すぐにあんたの息の根を止めなきゃいけない気がしてきたわ…」
そんな物騒なことを口走る幼馴染がこの世に存在するだろうか。
いや、存在するとしても俺はその存在を、今目の前にいる1人だけだと信じたい。
「もう、せっかくいい気分だったのに、あんたのせいで気分が悪くなってきたわ」
そう言いながらも、再び俺の手を握ってくるあたりこの幼馴染はツンデレなのかと思えてしょうがない。
「気分が悪くなったんなら帰る?送っていくけど?」
そうやって意地悪なことを言いたくなるのも、幼馴染なりの冗談であって、きっと相手は冗談だと
「咲さん、目が笑ってない。笑ってないですよー」
冗談だと理解してくれなかった幼馴染は割と本気で拳を握りしめていた。
「どうしてこう咲と一緒にいると、命の危険を感じることが多いのか…」
自分のせいだとは思ってない。というか、思いたくない。
「あんたの言動や行動が悪いのよ!もう全て陸のせいなんだから!」
どうやら、全ては俺が悪いらしい。
自分では自分は悪くないと信じたくても、相手にこう言われてしまっては仕方がない。
「でも、咲ももう少し女の子らしく接してくれてもいい気が」
「何を言おうとしてるの?」
「いや、咲さんは今のままでも充分女の子らしくて可憐な幼馴染だなー、と」
「な、なんだかそこまで言われると、冗談でも恥ずかしくなってくるんだけど…」
流石咲さん。顔をすぐさま真っ赤にして口ごもってしまう。
こうやって、顔を赤らめているときはほんとに女の子らしさ全開なのになー。
どうしてこうなった。
†
そうこう話してるうちに、だいぶ道が開けてきて大きな桜の木が見えてきた。
「あ、ほら!陸!桜の木よ!」
咲ははしゃぎながら、俺の手を強く引っ張る。
早く行きたいということらしい。
「早く行きたいのはわかるけど、あんまり走ったらバスケットの中身がぐちゃぐちゃになるぞー」
一応、忠告というか、軽い注意として教えておく。
それを聞いた咲はしまったという顔をして、苦笑するとすぐに俺の手を引く力を緩めた。
「それもそうね。一生懸命作ったんだもの…食べる前にぐちゃぐちゃになったんじゃ悲しいわ」
大人しくなった咲は、バスケットを見つめるともう一度歩き出した。
なんというか、そこまでバスケットを死守しているところを見ると、中身に何が入っているのか気になってきた。
「ちなみになんだけど、今日のお弁当のメニューは何?」
「そうねー、それは秘密にしておくわ」
意地悪そうに微笑みながら咲は続ける。
「だって、そっちの方が食べる時に嬉しくなるでしょ?」
「確かにね。でも、咲の作る料理は全部俺好みに作ってくれるからどれも美味しくて好きだよ」
「ば、バカ!そんなこといきなり言われちゃったら焦ってあんたを殴り飛ばしちゃうでしょ!」
「どうして褒めたのに殴り飛ばされる必要があるんだよ!?」
とても理不尽なことを言われた。
「だ、だって、そんな普段意地悪な陸がいきなりあたしの料理を美味しいって…あた、あたしのこと、好きって…も、もう!!バカ!バカバカバカ!陸のバカー!!」
なんだかよくわからないけど、咲の恥ずかしいポイントに触れてしまったらしい。
不覚にもこの幼馴染の可愛さを再確認してしまった。
ついでに、咲が何やら勘違いしてるけど、面白いので放置してみることにする。
「だいたい陸は少しアレなのよ!!」
「アレって何だよアレって!?」
「あ、あの…なんだっけ、湊から聞いたアレよ…」
宇城の名前が出てきた瞬間、とても嫌な予感がした。
それと同時に先ほどの告白を思い出しそうになり、すぐに忘れようと努める。
い、今はダメだ。今は咲といるんだから、宇城のことは女の人として意識しちゃダメだ。
「んーっと、何だったかしら…思い出せないわ」
「いや、宇城の言ったことなら思い出さない方がいいと思うんだけど…」
「嫌よ、思い出さないとモヤモヤするじゃない」
うーんうーんと唸りながら咲は必死に宇城が言った言葉を思い出そうとする。
正直、ろくでもない言葉なのは確かだ。
「個人的には思い出してほしくないんだけど」
「陸の意思なんて知らないわよ。あたしがモヤモヤするから思い出すの」
なんでこの幼馴染はこんなにも、人の気持ちを考えることができない女の子になっちゃったの!?
「あーっ!わかったわ!わかったわよ陸!」
「え、思い出したのか…?」
俺の気持ちとは裏腹に嬉しそうに顔を輝かせる咲。
なんというかこう…今すぐに耳栓をして、あの丘に向かって走り出したい。
「そう!陸はムッツリスケベなのよ!!」
「本当にろくでもなかったあああああああああああああ!!!!!!!!!」
本当に!本当に今すぐ走り出したい!!!
しかも、さっきまでの俺の言動の中にムッツリと言われなければいけない単語はあっただろうか…。
いやない!あるわけがない!!
だって、褒めただけだぞ!?料理を褒めただけでムッツリってなんだそれ!?
俺は認めない。絶対にそんなこと認めないぞ!!
「お母さんは認めませんからね!!」
「あんたは何を言ってるのよ…」
こいつはいったい何を言ってんだアホか、という視線を投げかけられる。
本来、俺が投げかけるはずの視線を何故俺が投げかけられなければならないのか。
とりあえず、言えることはただ1つ。
「咲、ムッツリスケベの意味わかって言ってるのか…?」
「え?えっと…確か、相手からしたらドキっとしちゃうようなことを、故意的じゃなくて無意識に言っちゃうような人のことだった気がするわ」
「それは天然ジゴロだあああああああああああああああ!!!!!
ムッツリスケベってなんだ!?天然ジゴロとムッツリをどうやったら間違う!?今の俺には理解できない!!」
頭の中で「今の僕には理解できない」というフレーズが流れる。
今すぐにでも一連の会話を記憶の中からアンインストールしたい。
「し、知らないわよ!あたしだって、そういうことあんまり詳しくないんだから!!仕方ないじゃない!好きで間違ったわけじゃないんだから、そんな怒らなくてもいいでしょ!!」
普段の咲なら殴るであろうことを、怒らなくていいじゃないで片付けてくるとは…。
そして、そんな風に言われたからといって、簡単に許してしまうとは…。
「俺って咲に甘いよなー」
「あんたが甘いのは女の子全員に対してよ」
すかさずツッコミがきた。
手厳しい幼馴染は頬を膨らませながらも、この状況を楽しんでいるのか本気で怒ってはいないのか、すぐにやんわりと微笑んだ。
「だからこそ、陸とずっと一緒にいたいって思えるのかもしれないわね」
迷いなくそう言われ、一瞬時が止まる。
「あ、ほら、着いたわよ」
咲との話しに夢中になって気がつかなかったが、目の前には大きな巨木がその場所の主であるかのように鎮座していた。
いつの間にか、丘の上まで来てしまっていたみたいだ。
桜が全て散り、青葉をまとった巨木が俺らを歓迎するかのように、さわさわと風に乗って葉を揺らす。
「あの下で食べましょ?」
そう言って、咲は俺の手を離し巨木のすぐ下まで小走りで行く。
バスケットをその場に起き、中から3人くらい座れてる程度のシートを取り出し広げ始める。
俺は走って咲の準備を手伝った。
巨木の下は、長く伸ばした枝と葉が影になってとても涼しい。
葉が揺れるたびに木漏れ日が様々な形に変わる。
小さい頃のことを思い出す。
あの頃は木漏れ日の形が変わるだけでも、それが不思議に感じて無邪気に笑うことができた。
あの頃からだいぶ大きくなったと、しみじみと感じる。
「はい、お茶。ずっと歩きっぱなしだったから疲れちゃったでしょ?」
シートの上に座った咲が、紙コップに入った麦茶を差し出してくる。
咲の正面に腰を下ろして、「ありがとう」と紙コップを受け取り一気に中身を飲み干した。
すーっと、冷たく冷やされた麦茶が喉を通っていくのがわかった。
「暑くなるだろうと思って、ちゃんと冷やしてきたのよ。流石でしょ?」
ふふんと鼻を鳴らし、誇らしげにする幼馴染はやっぱり、どこかに女の子らしさを感じさせる何かを持っていた。
ただ、そよ風と一緒に躍る白いバンテージを除けば。
「さ、陸が楽しみにしてたお弁当をご披露するわよー!!」
意気揚々といったかんじで、咲がバスケットに入っていたサンドイッチ用の弁当箱を取り出す。
どこかから、『たらららったらー♪』という気の抜ける効果音が鳴りそうだ。
それでも、楽しみなのには変わりない。
咲が弁当箱を開けるのを楽しみに待つ。
「と、その前に…ちゃんと手は拭かなきゃダメよ」
「お前は母親か」
苦笑しつつも、咲は差し出してきた濡れタオルを受け取り手を拭く。
「母親ってのもあながち間違ってないかもね。陸のお母さんたちから、あんたのお世話任せられてんだし。ってことで、あたしの言うことにはちゃんと従わなきゃダメなんだからね?」
意味深に微笑みつつ、俺の手先を見ながらちゃんと手を拭いているのか確認している。
「咲はいい奥さん、というか、お母さんになるんじゃないか?」
割と本気でそう思う。
ここまで監視の目が厳しいと、子どもも息が詰まってしまうかもしれないが…。
「な、なななっ…い、いい奥さん!?」
きゅぴーん。咲の恥ずかしいポイントを突いた時の効果音を自分なりに表現してみた。
本当にこの幼馴染は表情やら感情がコロコロ変わるなー。
見ていて面白い。
「お弁当も作れて、準備も万端。ちょっと気性が激しいところとか、両手に巻いてるバンテージとか、すぐに暴力に走るところを抜かせば、ほんと自慢のできるいい奥さんになると思うよ」
「何故かしら…褒められていたはずなのに、すごくあんたに対して殺意が湧いてきたわ」
「そういうとこ!そういう物騒なことを言わなければほんとにパーフェクごべら!?」
「ごめんなさーい。我慢できなかったみたい。でも、今のは完全にあんたが悪いんだから反省しなさいよね」
「う…それを言われると反論できない…」
「ふふーん、そうでしょうそうでしょう」
満足そうに頷きながら、咲は弁当箱の蓋を勢いよく開けた。
悔しさを感じながらも、弁当の中身を見ると悔しさなんて簡単に吹き飛んだ。
「お、美味しそう…」
思わずごくっと喉を鳴らして唾液を飲み込む。
見た目は普通の卵やレタスなどを挟んだサンドイッチだった。
しかし、どれも美味しそうに見えるのは咲の料理の味を知っているからだろうか。
「さぁ!たーんと召し上がりなさいよ!!」
咲が少しだけ身を乗り出して、卵とレタスが挟まれたサンドイッチを渡してくる。
「陸が好きな卵のサンドイッチは、特に味付けに気を遣ったから、きっと美味しいと思うわ!ってか、美味しくないとか言ったら許さないんだからね!!」
「咲の料理が美味しくないはずがないよ」
そう言って、サンドイッチを受け取り一口かじる。
塩コショウで味付けされた卵は、シンプルな味ながらも完璧に俺好みの味に仕上がっている。
「美味い!!」
反射的にそう言ってしまう。
よく料理番組などで、いろいろな言葉を用いてどれくらい美味しいのか表現したりしているが、咲の料理に限ってはそんなものは必要ない。
ただ純粋に美味いと思える。俺のことを考えて作られたというのがわかる、そんな料理だ。
「そ、そう!そう言ってもらえると作ったかいがあったわ。まぁ、最初から陸の反応なんてわかってたけどね!」
いつも美味いや、美味しいといったシンプルな褒め言葉しか言わない俺に対して、咲はそれでも満足したかのように何度も頷き嬉しそうに微笑む。
「陸が喜ぶと思って、朝早くから起きて頑張ったのよ。材料だって、昨日この企画が決まったあとにすぐに買いに行ったんだから」
「そ、そうなのか…ありがとう」
なんだか、そこまで考えられてると思うとありがたさと同時に恥ずかしさもこみ上げてきた。
咲は普段ツンケンしてるせいか、たまに見せるこういう素直なところが異常に可愛く見えてしまう。
正直、反則だと思う。幼馴染なのに変な気を起こしそうになってしまう。
「さてと、あたしはこのトマトのを食べようかしら」
咲はトマトとレタスとハムが挟まれたサンドイッチを手に取り一口かじる。
「あ、トマト食べるんだ」
咲は小さい頃からハンバーガーでもサンドイッチでも、トマトが挟んであるものを食べるのが苦手だ。
噛んだときにトマトの汁を高確率でこぼしてしまう。
「トマト好きなんだから仕方ないでしょー!」
そう、食べるのが下手くそなくせにトマトは咲にとって大好物の1つに挙げられる。
こうやって俺が回想してる間にも、咲はあわあわしながらトマトの汁がこぼれないよう必死に試行錯誤しながら食べている。
努力も虚しく、普通にこぼれてるんだけど。
「ほんと、咲は下手くそだなー」
笑いながら咲の口元についたトマトの汁を紙ナプキンで拭き取る。
「あ、う…な、なによ…好きで下手なわけじゃないんだから仕方ないでしょバカ!」
拗ねたように頬を膨らまして、それでもサンドイッチを食べ続ける。
その度にトマトの汁がポタポタと手を汚しているのはつっこんだら負けだろうか。
「バカって言われても、これ事実だし仕方ないだろ」
苦笑しつつも咲の口元を拭うのをやめない。
「む…ぅ、ちょ、ちょっと…子ども扱いしないでよ!それに、その…食べにくいからやめなさいよバカ…」
「ちゃんと拭かないとそのうち服とかにこぼしてもしらないぞ?」
「う…ぅぅぅ…」
顔を真っ赤にしたまま、咲はしばらく考えて結論を出す。
「服汚すの嫌だから、ちょっとだけなら拭いてもいいわよ。別に、その…嫌じゃないし…」
ぽいっとそっぽを向き、また一口サンドイッチを口に含む。
その瞬間、赤く透明度の高い液体が咲の唇の濡らした。
「素直じゃないなぁ…」
そう呟いて、俺も食べかけていた卵サンドを口に含む。
しばらくの間、咲の口元を拭いたりしながら何とも言えない空気のまま2人でサンドイッチを食べ続けた。
†
「ふーっ食べた食べた!!」
全てのサンドイッチを食べ終わり、胃も心も満たされたため、ぐっと伸びをしてそのまま後ろに倒れる。
シートの下は芝生が広がっているので、草の爽やかな匂いを体いっぱいに吸い込む。
空を見上げると、枝や葉の間から澄み切った青空が見える。
「食べたあとすぐに横になると牛になるって知らないの?」
呆れたように咲がため息をつきながらそう言ってくる。
「そんなの迷信だろ、迷信」
「ふーん、そんなこと言っちゃうわけね。なるほど、陸の気持ちはわかったわ」
そう言ったかと思うと、急に咲は立ち上がり俺の体を跨ぐように仁王立ちになった。
寝転んでる態勢の俺からすると、咲の履いているプリーツスカートの間から見えそうで見えない中身が気になって仕方ない。
「お、おい…何する気だよ?」
スカートの中身が気になりつつ、身動きの取れないこの態勢では下手な地雷を踏まないようにしなくては、自分の命が危ない。
いや、それでもスカートの中身が気になってしまうのは仕方がない。男の子だもの!!
自然と目が咲が動くたびにひらひらと揺れるスカートの奥へと行ってしまう。
「昔からの言い伝えを迷信なって言っちゃうような奴には、お仕置きが必要かなーって思っただけよ」
にんまりと意地の悪い笑みを浮かべる。
俺はこの顔を知っている。そう、宇城が本当に楽しい時に浮かべるあの怪しい笑顔と似通ったものがあるのだ。
一瞬にして、数々のトラウマや貞操を奪われかけた思い出が蘇る。
「さ、咲さん。わかった、迷信だと言って馬鹿にしたのは謝る。だからそこをどいてくださいお願いします」
できれば、一回でいいからスカートの中身を見せてからどいてほしいと邪なことを考えてしまう。
だがしかし!この状況では、スカートの中身より自分の安否の方が大切なのでその気持ちは封印することにする。
「だーめ☆」
すごく可愛い声とすごく可愛い笑顔で、俺の最後の願いはあっけなく却下された。
「あたしがあたしの玩具にお仕置きしようって考えたんだから、そんな簡単にやめるわけないじゃない?そんなの考えればわかるでしょ??」
「咲さんすいません!わかりたくないです!!」
咲が瞬間的に赤面する特技を持つとしたら、俺は瞬間的に全身の穴という穴から汗を吹き出せる特技を持っている!
全然自慢にならない上に、すごく汚い話だ!!
「って、自分自身にノリツッコミしてる場合じゃねーよ!!」
「…最近、あんたって独り言増えたわよね」
心底心配した顔で見られ、何とも言えない気持ちになる。
こんな独り言を多くさせてるのはどこの誰なんだ!!
「まぁいいわ。さて、あたしと一緒に遊びましょ?」
そう言って咲は俺の上にそのまま座り込んでくる。
座り込んで…ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?!?!?
咲のお尻がある場所はちょうど俺の下腹部だ。これは危ない!!
すぐさま、周りの状況を目だけで確認する。
誰もいない!幸いなことに誰もいない!!
「あ、遊ぶって何を…?」
「お遊びだとしても、せっかくのデートなのに何もしないのはつまらないでしょ?」
「や、一緒に弁当食べただろ!?」
「そんな一緒にお弁当食べただけで、あたしが満足するとでも思ってるの?」
思いません!!
口には出せないけど、心の中で大きく肯定する。
「じゃあどうしたらお前は満足するんだよ…」
情けないと思いながらも半分諦めたようにそう言う。
「そうね。じゃあお弁当を食べた瞬間寝ちゃうような牛には牛らしく過ごしてもらおうかしら」
「う、牛らしく過ごす?すまんがお前の言ってる意味が理解できない」
この子は一体何を言いたいのかしら。
本日二度目の今の僕には理解できないだ。
「牛らしくは牛らしくよ、そのままの意味」
楽しげにそう言ったかと思うと、咲は俺に馬乗りになったまま俺の胸ぐらを掴み上げる。
「おわっ!?」
急に引っ張り上げられ俺は止まることもできず、そのまま咲の眼前まで引き上げられてしまう。
こう…なんというか、見方によってはこれは態勢的に美味しい。
引き上げられたことによって、咲との距離が一気に縮まった。
咲の顔がほぼ0距離にある。なんだろう、状況的なせいもあってか、なんかドキドキしてきた。
…俺ってもしかしてM?
「ねえ、陸」
「な、何?」
ドキドキしてることを悟られないようにするつもりが、少し声が上ずってしまう。
これじゃ『僕は完全に今緊張しています』ってのがバレバレじゃないか…。
「陸はこの場所であったこと、まだ覚えてる?」
俺の胸ぐらを掴んでいた手を離し、俺の目を覗き込むようにして咲は尋ねてきた。
まさかの質問に少し面食らってしまう。
「え、えっと…この場所での思い出…」
必死に思考を巡らす。頭の中にある咲との思い出の引き出しを1つ1つ探っていく。
「あたしがね、陸のずっと傍にいて陸を守っていこうって決めた決定的な場所なの」
ゆっくりと語りかけるように咲は続ける。
「小さい頃のあたしってさ、今のあたしからは想像できないくらい弱かったでしょ?」
確かに。今の咲を見ると、昔の咲はとても女の子らしかった。
ただ、弱いといっても意思が弱いとかそういう意味ではない。。
何があっても、人前では涙を見せない、泣きそうになっても涙だけは流さない強い子だった。
俺は咲の言葉を聞きながら、小さい頃の思い出がゆっくりと思い出されてきた。
†
1人の小さな女の子がいた。
大きな大きな桜の木を、1人ぼっちで見つめている。
俺だけが知っていると思っていたこの秘密の場所。
本当は秘密でもなんでもなくて、ただ子供ながらに秘密基地的な何かだと自分だけのルールで決め付けていただけだ。
そんな場所に、自分と同い年かそれ以下くらいの少女が立っていた。
深々と桜が散る一面ピンクの世界の中、その少女の長い黒髪はすごく映えていて印象的だった。
俺はその少女に自然と話しかけていた。
「君もこの秘密の場所を知っていたんだね」
びくっと肩をひるませ、少女はこっちを恐る恐るといったかんじで振り返った。
怯えた目をしていた。胸の前で組んだ小さな手が震えていた。
ただでさえ小さく見えた少女が、より一層小さく見えた。
「ここは僕だけが知っていたはずなのにおかしいなぁ」
「あ…っ、えと、その…」
少女は相変わらずびくびくとしながら何かを伝えてこようとした。
しかし、最後まで言葉が紡がれることはなく、少女は俯いて黙り込んでしまった。
「?」
不思議に思って首をかしげると少女はもっと慌て始めた。
「あ、あの…っ、その、ご、ごめんなさい…み、道…迷っちゃって…その」
言葉を探すように指をごにょごにょしながら、目を忙しなく動かす少女に俺は迷わず近づいた。
「道に迷っちゃったの?君、ここに来るの初めてなの?」
「は、はひっ…!?」
突然近づいてきた俺にびっくりしたのか、少女は返事なのか悲鳴なのかわからない声を上げた。
ついでに数十センチ上に飛び上がった。少しだけ面白い。
「君、ここに来るの初めて?僕が案内しようか?」
子供だったせいか、空気も読まず手を差し出した。
少女は怯えた目で俺と俺の差し出した手を交互に見つめた。
しばらくの間、少女はどうしていいかわからないようにオロオロとしていたが、最終的には俺の手を掴み口を開いた。
「ぁ、あの…よろしく、お願いしましゅ…」
涙声になりながらも必死に最後まで言おうと努力した少女を見て、俺はなんとなく妹を持ったような不思議な気持ちになった。
「任せてよ!僕、生まれたときからこの街に住んでるから、何でもわかるよ!!」
自信満々にそう言った俺を少女は涙目で見つめていた。
それから、迷子になった少女の家の特徴を聞き、子供の知恵を頼りに少女の家を探し歩いた。
少女の家を探し歩いている間、俺は必死に少女が元気になるようないろいろな話をした。
ヤンチャをしすぎて母親に怒られたこと、父親とキャッチボールをしたこと。
最初は怯えていた少女も、俺のくだらないありふれた話を聞いているうちに、少しずつ心を開いたのか笑顔を見せるようになっていた。
また、この少女が今日隣の街からこの街に引っ越してきたということも教えてもらった。
1人で散歩をしているうちに、あの秘密の桜の丘にまで来て迷ってしまったらしい。
「だいぶ、暗くなってきたね」
気づいたときには頭の真上にあった太陽は山の向こうに沈もうとしていた。
さっきの秘密の場所から一体どれくらい歩いただろうか。
少女の顔を見ると、不安そうにしながらも俺の手を離そうとはしなかった。
「そういえばさ、君のお名前聞いてなかったよね?」
「え?」
少女は戸惑ったように俺を見た。
「あ、そっか。そういえば、僕のお名前も教えてなかったね。僕は夏川 陸っていうんだよ」
「陸…くん?」
「そう、陸!」
少女に名前を呼んでもらえたのが嬉しくて、俺は何度も頷いた。
「陸くん…私は、聖 咲…」
「咲ちゃん?」
少女の言った名前を繰り返す俺に、その少女、咲は小さく頷いた。
「咲ちゃんのおうち、早く見つけないと咲ちゃんのお母さんに怒られちゃうね」
「怒る…?」
「うん、僕の家は夜の5時までにはおうちに帰らないと、お母さんに怒られちゃうんだ。かていのるーるってやつらしいよ?」
「かていのるーる…私のおうちにも、ある…」
「そうなの?なんだかよくわからないけど、どうしてそんなものがあるんだろうね。たくさん遊びたいのにちょこっとしか遊べないんだ」
俺のそんな子供のわがままに対して、咲はクスクスと小さく笑った。
「お母さんは陸くんが心配なんだよ。うちのお母さんも、いっつもそう言ってる」
「心配ならハッキリそう言ってくれればいいのにさー」
そんな愚痴に対しても咲はクスクスと笑って、「そうだね」と同意してくれた。
それがなんとなく嬉しくて、俺は咲の手を両手で強く握った。
「咲ちゃんと僕は友達!!」
握ったまま、ぶんぶんと上下に大きく振る。
「え?え、えええ???」
咲が戸惑ってるのにも構わず、小さい頃の俺はただひたすら手を振り続けた。
「僕は!咲ちゃんの友達だから、ずっと咲ちゃんの傍にいる!咲ちゃんが困ってたら助ける!だから、咲ちゃんを家までちゃんと送ってあげる!!」
ぽかんとしていた咲だが言葉の意味を理解したのか、柔らかく笑った。
「陸くんは私の大切なお友達、だね」
噛み締めるようにそう言って、嬉しそうに笑う少女を俺は素直に可愛いと思った。
少しだけ、ほんの少しだけ、本気でこの女の子と絶対に離れたくないと思った。
「って、うわああ!!ちゃんと家に送る前に夜になっちゃうよ!!大変だ!!お母さんに怒られる!!!」
その場の雰囲気というものをまだ把握できなかった俺は、すぐに現実に引き戻される。
「咲ちゃん!僕の家に行こうよ、お母さんとお父さんに話して、咲ちゃんのおうち探してもらおう!!」
子供らしいというか、根拠のない意見だったが、この頃の俺にとっては名案だった。
いや、今考えてみると普通に他力本願なわけだが。
咲もだんだん暗くなっていくのが不安だったらしく、特に考えもせずに頷く。
咲の手を引いて、走って自分の家に向かった。
幸いにも自分の家の近くまで来ていたので、時間はそんなにかからなかった。
それでも、外は真っ暗だった。街灯のぼんやりとした明かりが、子供ながらに不気味で仕方がない。
「着いた!ここが僕の家だよ、咲ちゃん!」
そう言ったところで、玄関のドアが勢いよく開く音がした。
驚いて玄関に目をやると、怒っているような、心配しているような、安心したような、いろいろな感情をごちゃまぜにした母親の姿がそこにはあった。
「ご、ごめん!ちょっと迷子の子の案内をしてて…!」
慌てて子供ながらに弁解する。
この頃の子供は、親に怒られることを最も恐怖しているはずだと俺は思っている。
その俺の必死さを理解してか、咲も慌てて俺に便乗する。
「ぁ、あの…わた、私が迷子になっちゃって…その、それで、えと、えと…」
咲が俺の前に出た瞬間、うちの母親の後ろから知らない女の人が出てきた。
「咲!?咲なの!?」
咲に似た女の人だった。長い黒髪の猫目の綺麗な顔立ちの人だ。
後にわかったことだが、この綺麗な女性は咲のお母さんで、今日の昼のうちの隣に引っ越してきたばかりらしい。
少しだけ散歩をすると行って出て行った咲がなかなか帰ってこず、まだこの街のことがよくわからなかったため、隣であるうちを頼ってきたらしい。
警察に連絡するべきかどうか話し合っているときに、ちょうど俺たちが帰ってきた、というなんともご都合主義な話だったということだ。
それから咲と俺は家が隣同士ということもあり、毎日のように一緒に遊んでいた。
しかし、咲は俺と初めて会ったときと同じように、人見知りが激しくなかなか近所の子供たちに馴染めずにいた。
子供というのは残酷なもので、1人が言い始めると周りもそれに賛同するようになってしまう。
そのせいか、咲は孤立していた。本当のところはわからないが、本人もそれを望んでいるように感じられた。
ずっと俺にくっついていた咲は、最初こそ目立ったいじめはなかったものの、日が経つにつれていじめの内容は過激になっていった。
過激といっても子供の考える内容だ。虫を投げつけるなどの地味な嫌がらせばかりだ。
そんなある日、俺と咲は初めて出会ったこの桜の丘に来ていた。
ここは2人だけの秘密の場所だと言っていた。だから、いつも咲をいじめている近所の子供たちは知らないと思っていた。
それでも、ここは公園だ。周りにはこの桜の木しかない。子供にとっては、絶好の遊び場だろう。
今までその子供たちと出会わなかったのは運が良かったのだろう。
でも、その日は運が悪かったのかもしれない。
「あーっ!また、陸のひっつき虫がいるぞー!!」
「本当だ!虫は虫らしく、虫と遊べばいいのになー!!」
「髪も長くてお化けみたいだ!」
何も考えていないからこそ、ここまでの言葉がぽんぽんと出てくるのだろう。
「うるさいなー!咲ちゃんは虫でもお化けでもないよ!!」
負けじと反論する。咲は俺の後ろで怯えていた。
「いっつもそうやって陸はその女守るよなー!」
「もしかして、陸ってそいつのこと好きなんじゃね!?」
「そーだそーだ!だから、いっつもそいつのこと守るんだ!!」
背中で咲がびくっと体を強ばらせるのがわかった。
これ以上、こいつらの言葉を咲に聞かせるのが嫌だった。
「うるさい!おまえたちは咲ちゃんのこと何も知らないくせに、変なこと言うな!僕は咲ちゃんのこと友達として好きなんだ!!」
半ば自棄なりながら反論を続ける。
正直、咲のことを好きなのではないかと言われて、気恥かしさやちょっとした焦りがあった。
「だから、咲ちゃんに酷いことするんなら、僕がおまえたちをやっつけるんだからな!!」
「り、陸くん…っ!危ないことしちゃダメだよ、私なら大丈夫だから…」
咲が必死に俺の服を掴んでくるが、いじめっ子たちはそれを見て楽しんでいた。
「陸が俺たちをやっつけるなんて無理だよ!」
「3人もいるのに、僕たちが負けるわけないもんね!!」
「3人だからって僕には関係ないだろ!いつも咲を3人でいじめて、おまえたちみたいな弱い奴らくらい簡単にやっつけられるんだ!!」
その俺の言葉が合図だったかのように、その3人は本気で俺に飛びかかってきた。
子供ってのは、本当に加減を知らないもので、俺は案の定3人の下敷きになり、蹴る殴るなどの幼稚な暴行を受けた。
地面が芝生だったから良かったもの、コンクリートだったら倒された時点で結構なダメージがあっただろうなーと思う。
「や、やめて…!お願いだから、陸くんに酷いことしないで…っ、謝る、私、謝るから!たくさん…っだ、だから…っ!!」
俺は必死に耐えて、耐えて、咲が泣きそうになりながら必死にいじめっ子たちを止めるのを見ていた。
ここでやり返したら、このいじめっ子たちと同じような気がして、やり返すことだけはしたくなかった。
子供ながらになかなかに『漢』だったと思う。
「な、なんで陸は泣かないんだよ!こんなに痛くしてるのにおかしい!!」
「も、もう帰ろうぜ!僕たちは何も悪くねーんだし!!」
「この虫幽霊女もさっきからうるさいしな!帰ろう帰ろう!!」
どんなにボロボロになっても根を上げない俺に、いじめっ子たちもついに諦めたのか逃げるように走っていってしまった。
後に残された俺と咲は、ただ呆然とその場から動けずにいた。
俺は仰向けになったまま、咲を横目で見た。口の中がほんのり血の味がした。
咲は泣きそうになりながら震えていた。大きな猫のような目にたくさんの涙をため、それでも涙を流さないように必死に努めていた。
「ごめん…なさい…」
震える声で咲はそう言った。
「私が、陸くんとお友達に、なったから…だから、陸くん…っ、酷いことされ、ちゃって…ごめんなさい」
ほとんど涙声だったかもしれない。それでも、咲の目から涙は流れない。
俺はゆっくりと立ち上がって、咲の頭に手を乗せた。
妹をあやすように、ゆっくりと優しく、咲の頭を撫でる。
「僕は咲ちゃんと友達で良かったよ。咲ちゃんは僕にとって、本当に大切なお友達、なんだよ」
擦りむいた皮膚や、殴られた後の頬が痛かった。
それでも、咲が泣きそうになっているのを見ていることのほうが辛く感じた。
「僕は強くないから、咲を守ることができないけど、一緒にいてあげることはできるから。だから、一緒にいようよ。これからもずっと」
その俺の言葉に咲は大きく頷いた。
「私は、陸くんとずっと一緒にいたい。ずっとお友達でいたい…!」
「うん、ずっと大切な友達だよ。これからは僕のこと、陸って呼んでほしいな。そのかわりに、咲ちゃんのこと咲って呼ばせて?」
咲は言いにくそうに少し視線を彷徨わせてから、小さく頷くと意を決したように俺の目をまっすぐ見た。
「り、陸…が私の隣にいて…くれるなら、私が陸を守る。私が今よりももっともっと強くなって、陸がこんな目に合うことがなくなるように、私が陸を守る。だから、陸は私を支えて…?私が負けそうになったとき、隣で励まして?」
その時の彼女の目は、今までの何かに怯えているような目ではなく、自分の意思をしっかりと持った凛とした目だった。
そして、この時から咲は大きく変わった。
長かった黒髪を、頭のてっぺんで1つに結び、口調も性格も行動も何もかもが変わった。
唯一変わってないとするならば、俺のことを第一に考えること、すぐに真っ赤になること。それくらいかもしれない。
近所のいじめっ子たちも咲のことをいじめることはなくなった。
むしろ、今となっては姉さんと言って慕っているくらいだ。
咲はその日から弱い自分を誰にも見せなくなった。
†
「どう、思い出した?」
咲の一言で長い長い回想から、現実に引き戻される。
「ここはあたしと陸が初めて会った場所でもあり、あたしにとって絶対に忘れられない約束の場所」
「思い出の場所って意味がなんとなくわかったよ」
「あたしにとっては、昔の自分はあんまり思い出したくないんだけどね」
咲は苦笑し立ち上がる。
「それでも、今のあたしはあの時陸に守ってもらったからここに自分の意思で立ってられる。だから、あたしは陸を一生守るって決めたの」
強い意思を持った目で見つめてくる咲を、俺はただ見つめることしかできなかった。
「だ、だから…その、あんたには一生私の傍にいてもらわなきゃ困るのよ」
急に頬を赤らめ、照れ照れモードMAXな咲がそう告げる。
「へ??」
自分でもとても間抜けな声を出したと思う。
いや、でもこれは仕方ない。突然のこの流れに俺の思考が追いつかない。
「もう!ほんとにあんたは察しが悪いわね!だから、陸にはずっとあたしの傍にいてもらわなきゃ困るのよ!!」
頭が状況を理解しようとフル稼働するが、俺には理解できない。
咲の言うとおり、本当に察しが悪い馬鹿なのかもしれない。
「本気でバカなんじゃないの!?お、女の子にここまで言わせといて…だ、だからね、その…もー!!わかりなさいよバカー!!」
「い、いや、理解しようと努めてはいるんですけどね!?」
必死に弁解する俺を咲は真っ赤な顔で軽く睨みつけると、また俺の下腹部あたりに勢いよく腰を下ろした。
目の前でスカートがふわっとめくれ、意識が一瞬別の方向へとそれかける。
俺の顔を両手で挟んだ咲は、俺に顔を近づけると顔を真っ赤にしたま口を開いた。
「あ、あたしは、あの日から陸のことがずっと好き…なの。だから、あんたのこと守りたい。傍にいたい。これ以上、好きになったらおかしくなっちゃいそうなくらい!!それくらい、あんたのことが…その、だ、大好きなの!!!!」
言い終えた瞬間、咲の顔はさっき以上にカーっと赤くなる。
頭からは湯気が出てるのではないかと錯覚してしまうくらいに火照っている。
「ぇ、えっと…」
やっとのことで声を出せたが、この後の言葉が続かない。
ど、どういうことだ…今日は本当に、おかしい。全てがおかしい。
宇城に告白されただけでも、天地がひっくり返る思いをしたというのに、咲のこれは本当に予想外すぎてやばい。
なんだこれ、なんだこれなんだこれ!?
「あ、ぅ…ぅぅ、牛!!!」
「はい!?」
この状況で何を言い出すんだこの子は!?
恥ずかしすぎて気でも狂ったのかと心配になる。むしろ、俺の気が狂いそうだ。
「あんたは牛だから、今!牛になってるから!だから、その…あたし帰る!!!」
「!?!?!?!?」
先生!!話が全く読めません!!
俺が絶句している間にも、咲は光の速さでさっきまで出していた弁当箱などの片付けにかかる。
「う、牛とはデートできないでしょ!?あんたみたいな牛男とのデートなんて、まっぴらごめんだわ!!」
「酷い!!意味がわからない上に何故か罵られてる!意味がわからない!!!」
「意味なんてわからなくていいのよ!陸はどうせバカなんだから!!!」
何故俺はさっきから必要以上に罵られなければならないのか。
ツンデレというのは奥が深い。というか、これツンデレを通り越してただの暴言デレなんじゃね?
「あ、あたし帰るからね!それじゃあね!!」
バスケットの中に乱雑に弁当箱やシートなどを詰めると、咲は俺の言葉を聞く前に走っていってしまった。
「…なんだ、このなんとも言えない中途半端な終わり方…」
俺はしばらくの間、その場で頭の中で今起こったことを整理していた。
†~咲~
公園の並木道を抜けて、鉄橋まで来たところでそっと後ろを振り返る。
よかった、陸はついてきていない。
もし、気を利かせて追いかけてきていたら、問答無用で殴り飛ばしていたかもしれない。
乱れた呼吸を整えようと立ち止まる。
胸が高鳴っているのは、走ったせいだけではないだろう。
「あ、あたし…ついに、言っちゃった…陸に言っちゃった」
思い出しただけで頬が熱くなる。
自分の体が自分のモノじゃないかのように制御が効かない。
陸の驚いた顔を思い出す。
あたしだって自分がここまでできるとは思ってなかった。
本当は、軽く自分の気持ちを遠まわしに伝えて終わらせるつもりだった。
「なのに、なのに…ぅぅぅぅ…!!」
何故顔をあそこまで近づける必要があったのか。
何故寝転がってる相手に馬乗りになって胸ぐら掴んで身を起こす必要があったのか。
全てにおいて意味がわからなくなってくる。
自分は一体何をしているのか。まだ顔も体も全てが火照っている。
熱でもあるんじゃないか、そんなことまで考えてしまう。
それでも、
「言っちゃったんだ、あたし…」
今まで誰にも言えなかった自分の気持ち。
ただ一途に思ってきた、自分だけの秘密。
それを言ってしまった。しかも陸本人に…。
「むきゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!」
思い出してはいけない!!
明日も陸と顔を合わせるのだ。平常心を持たないとやっていけない。
あたしは自分の頬を数度叩く。
「よし…っ」
少しだけ、落ち着くことができた。
この気持ちだけは偽れないのだ。
例え、他のものが嘘だったとしても、陸に対しての思いだけは嘘はつけない。
これが自分の素直な気持ち。そんなこと、自分が一番よくわかっている。
「あたしはあたしの思うようにやる、それだけよ」
自分に言い聞かせるようにそう呟き、もう一度思い出のあの丘を見る。
「また1つ、忘れられない陸との思い出が増えちゃった…」
じんわりと胸が暖かくなるのを感じて、あたしは自宅へと向かった。
明日も陸とたくさん話せたらいいな。
というわけでお久しぶりです!藍靜です!
更新を半年以上放置してたにもかかわらず、のこのこと戻ってまいりました!
本当に申し訳ありません!!
更新を待ってくいれていた方、わざわざメッセージを送ってくださった方、本当に本当に申し訳ありません!!(土下座)
(ここから言い訳)
話の内容は考えていたんです。しっかりと。
でも、それを文章にすることができなかったんです←黙
いろいろ試行錯誤した結果、今回の第8話をやっと掲載することができたんですが、長期間空いてしまっため、文章の書き方やキャラの掛け合いなど前話と違うところ多々あると思います。
ついでに、超特急で書いたため、見落としている誤字脱字等多量にあるかもしれません。
本当に申し訳ありません。
今回は思い出話メインというか、咲のツンデレ(暴言&暴力デレ?)がメインなのか、よくわからない話になってしまいましたが、楽しんでいただけたなら幸いです。
逆に「全然面白くねーよ!」って思われた方!あなたは間違ってないです!!ww
まぁ感じ方は人それぞれということで、読んでくださる皆様が個人個人の感想を持っていただけたら、本当に、本当に幸いです。
(それでも、面白かったですとか言われるとテンションが上がる藍靜とは私のことですw)
はい、というわけで第8話について少し触れたいと思います。
第8話は咲とのデート回でしたね!
なんというか、今の咲を気に入ってくださってる方からすれば、過去の咲はあまり受け入れにくいかもしれません。
逆に今より過去の方がいいって方もいるかもしれませんww
それはもう完全に個人の趣味ですよねw
ちなみに藍靜は勿論、尋ちゃん一筋ですよ!!!(そんなの誰も聞いてない)
回想内にでてきたいじめっ子たちですけど、現在の方では一切登場してません。
むしろ、ぶっちゃけますと回想内の陸くんがぼこられるシーンは、ほんと表現方法がわからなくてgdgdです。
もういろいろとおかしい第8話でしたが、皆さんに少しでも楽しんでいただけたら本望です(*´∀`*)
では、恒例のふとごってみようコーナー!!
今回のお題は…と、言いたいところですがネタがないため今回はおやすみですww
だ、誰か…誰でもいいのでネタをください!!:(;゛゜'ω゜'):
ほんと本編の終わり方もgdgdなうえに、後書きまでgdgdです。
gdgdオンリーです。もうほんとなんなんだこれ。
次の第9話は皆さん(藍靜)のお待ちかね!尋ちゃんとのデート回です!!
ぶっちゃけ、デートの内容とか全然考えてないんですけど、尋ちゃんの魅力が少しでも皆様に届けられるよう頑張って書きたいと思います!!
更新はいつになるかわかりませんが、未完のまま放置するつもりはないんで、どうか気長にお待ちください。
できるだけ早く掲載したいと思います!!!
それでは、今回はこのへんでー!のっしっし!!
PS.そろそろ個別√を最初に誰か入るか決めなくてはいけないので、ご希望がある方は遠慮なくメッセージやら感想やらで教えてくださーい(*´∀`*)