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【第四部開始】当て馬令嬢リベルタ〜転生喪女はゴーインニマイウェー〜  作者: ジュレヌク
【第一部 新入生編】

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第七話 結界師シャイネン・ナーハフォルガー

 リベルタ、トワレ、そこにクルーガーが加わったことで、マジックバッグの開発は一気に進んだ。


 現在は、女性が舞踏会で装飾用として持つ小さなバッグに、馬車1台分ほどの荷物が入る。



「何故、わざわざこのカバンを選んだ?」



 折角量産出来ても、自分では使い道のない選択に、クルーガーは文句を言う。



「普段は、重いものなどは従者に持たせるから必要ないでしょ?だけど、社交界は戦場よ。ワインを掛けられドレスを汚されることだってあるの。そんな時、このカバンから颯爽と着替えを取り出して、ババーンと!」


「そんな機会、ほとんどないだろ。小説の読み過ぎだぞ」



 バカバカしくなってきたクルーガーは、材料代の試算に忙しいトワレの方に顔を向けた。



「お前は、コイツと同室で疲れないのか?」


「慣れました」


「凄いな」


「それほどでも」



 クルーガーは破天荒なリベルタには慣れないが、素っ気なく答えるトワレには慣れてきた。


 入学当時、ブームのように告白されまくったクルーガーだが、その相手のことは一切記憶にない。


 だから、時々トワレから害虫を見るような視線を向けられる意味を未だに理解できないでいる。



『俺、そんなに嫌われるようなことしたか?』



 一瞬、鑑定眼でトワレの頭の中を覗いてみようかとも思ったが、研究会の仲間として、それはルールに反するように思えた。



『毎回あの視線は、結構凹むんだが……』



 クルーガーは、これでもトワレの事には一目置いていた。


 彼女の作成した採算表を見ながら、



『流石商売人の娘』



と舌を巻く。


 世にない商品だけに高値をつけても買う者が続出するだろうが、トワレは、掛ける経費を極力落とすことを忘れない。


 その点、面白いものには幾らでも金をかけてしまうリベルタやクルーガーは、開発者には向いていても生産者には不向き。


 完成品ができる前に破産してしまうだろう。


 トワレの代替可能な素材を見つけてくる目利きは、父譲りか?


 しかも、商会の力を借りて既に材料を押さえているという。



「それで、この研究会の顧問は決まったのか?」



 クルーガーの質問に、トワレは渋い顔をする。


 どうも、当初担当を申し出ていた教師が、突然体調不良で休職願を出したらしい。


 その後も他の先生に当たったが、色よい返事はもらえていない。


 その原因は、スパイトロフ副学長にあった。


 彼の母親は、数代前に臣下に降嫁した元王族の血を引いていた。


 とは言え、


『母親の父親の母親の母親の父親の母親の…………』


と気が遠くなるような家系図を遡らなければならない。 


 そこまで遡れば、公爵家の大体の家に王族の血が入っているとも言える。


 逆に、それを大声で言う事のほうが、恥ずかしいのだ。


 しかし彼は、何世代も経たことで薄れてしまった『王族の血筋』を未だに誇りとする気位の高い人物で、事ある毎に、



「私は、王家の血を引く者。全て私に任せなさい」



と声を掛けてくる。


 ようは、マジックバッグが生み出すであろう利権を自分の手に握りたいのだろう。


 魂胆は見え見えだが、一応公爵家の人間であり、下手に身分が高い為、学長も強く止めることができない。


 歯がゆさばかりが先に立ち、解決策を見いだせないトワレは、悔しそうに唇を噛んだ。


 彼女にとって、身分制度だけは、どんなに頑張っても越えられない壁。


 研究さえさせてもらえるなら、リベルタやクルーガーは、儲けた金の行き先などどうでも良いだろう。


 なにせ、彼女達は、金に苦労するような家柄ではないのだ。


 それよりも、担当が決まらないことで、学園施設の使用許可に毎回多くの手順を踏まなければならないことのほうが問題だ。


 だからこそ、彼らに相談するべきなのか、トワレは悩んでいた。



「誰か、権力に負けない正義感にあふれる先生とか居ないかな……」



 独り言のように呟いたトワレの言葉が、マジックバッグにお菓子を詰め込んでいたリベルタの耳に届く。



「それなら…………ほら、あれ、あれ。シャイネン・ナーハフォルガーだっけ?」




 突然ある教師の名を呼び捨てにしたリベルタに、トワレは、ギョッとする。



「リベルタ、ここには私達しか居ないけど、人の名前を呼び捨てにするのは止めなさい」


「あ、ごめんなさい」



 シュンと目に見えて落ち込むだリベルタだが、



「意外と悪くないかもな」



とクルーガーが呟いた。


 シャイネンは、王太后の兄の息子であり公爵子息。


 王族の血は引いていなくとも、後ろ盾は副学長よりも強い。

 

 しかも、彼が担当するのは、魔法科でも異質な結界魔法だ。


 王都や国境沿いの関所など重要拠点には、この結界が張られている。


 魔物の侵入を防いだり、敵国からの攻撃を跳ね返したりする、国としても最も力を注ぐ防衛機能。


 ただ、誰でも張れるものではなく、最初に結界師と呼ばれる者が作成した結界石の設置が必要となる。


 そこに魔力を補充することで常に結界は作動するが、壊されてしまえば、その効果も消えてしまう。


 だからこそ、結界師の育成は手厚く保護をされており、教員であるシャイネンもまた、学園のルール外で動ける珍しいタイプの教師だった。



「ナーハフォルガー先生なら、副学長も無理は言えないだろうな」



 クルーガーは一人納得顔で頷いているが、リベルタが彼の名を名指ししたのには別の意味がある。


 シャイネンは、現王の実弟。


 歳がかなり離れており、今年二十歳のシャイネンと三十八の王様では、下手をしたら親子でも通用する。


 彼らの母親が、王を産んだのは十六歳だった。


 それから十八年後。


 三十四歳でシャイネンを産んだ時、今後の激しい後継者争いに赤子を巻き込みたくないという思いで、公表することを控えた経緯がある。


 現在、シャイネンは、母の兄であるフラッシュ・ナーハフォルガー公爵の末息子となっていた。


 だから、彼が王弟であるという事実は、リベルタに前世の記憶があるから知っていることで、単純に、



『リアル王族に、敵う奴なんて居ないだろうなぁ』



 と思って口にしたことだった。



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― 新着の感想 ―
「激しい後継者争い」になるかなぁ? 同母で十八歳年上の兄がいるなら後継ぎは決まりでしょ。わざわざ親元から離した上に王弟から公爵の末息子にランクダウンさせて隠す意味ある? 設定に無理がある気がするけど。…
これは、シャイネン様に壁ドン喰らう流れだな。
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