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四つ葉の見つからない夜に

作者: 青瀬凛
掲載日:2026/03/21

 クラフトパンチで四つ葉のクローバーを切り抜く。幾つも、幾つも。

 見つからない幸せの代わりに。

 コラージュ作品でも作ろうか。今度ある即売会のフリーペーパーの装飾にでも使おうか。

使い道もはっきりしないまま、私は緑の画用紙を何枚も抜いていた。

 もう嫌になっていたのだ。生きている事が。何も出来ない自分が。

 だから無心で出来る事を探して、子供の頃、親に強請って買ってもらったクラフトパンチを引っ張り出して来た。

 グッとボタンを押して、パチンッと抜く。その繰り返し。繰り返し。

 事務員として病院勤めをしているが、毎日苦しい。医者や看護師からの圧力。患者からのクレーム。求められる膨大なマルチタスク。

 それらの対応を平然と出来る人間もいる事はいる。だけれども、何人、何十人かは耐え切れずに辞めていく。新卒から二、三年もしない内に。

 四年目に入った自分は耐えている方ではあった。だが、正直限界が近い。

 辛いことの繰り返し。繰り返し。

 そんな余裕の無さが、自分から優しささえ奪っているようで、最近家族にも当たってばかりだ。

 私が悪い。分かっている。もっと要領が良ければ。

 だけれども、新卒の頃から、育つ者だけ勝手に育て、とばかりに人材を放置する職場にも問題はあるはずだ。だから、新人の子の事は殊更気に掛けていたつもりだった。それなのに。

 あの子は入職して二ヶ月で休職して辞めてしまった。

 助けられなかった。

 無力感に襲われた。そして、自分も余裕が無いことに気が付いた。そのくせ、即売会なんて、やった事もない事に挑戦しようとしている。

 出来る事が欲しかったから。自分を飲み込もうとする闇から逃れたかったから。

 もう真夜中だ。庭を探してもやはり四つ葉は見つからないだろう。

 ならば作るまでだ。

 私はクラフトパンチを鳴らし続けた。

 紙の四つ葉が小さな山を作っていた。

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