「芝居」
あまりの迷走具合に、自分って文章書く才能やっぱりないんだなーって真剣に落ち込んだ後の回。
調子を取り戻すために一旦一人称で書いてみた。
言ってしまえば成長痛から逃げた。現在絶賛春休み中、三人称頑張ってます。
「それにしても一年は元気だなー」
えいやほいやと、はしゃぎ餅をつく後輩たちをガラスの引き戸越しに同期と眺めていた。曇天とは言えないが、少し黒ずんだ雲を背景に雪が舞っていた。腕を組むようにして脇に手を挟んで、寒いなー、なんて言いながら暖を取る。
することもなくぼんやりと外を眺めていると、はしゃぐ後輩の一人と目が合った。彼女はおーい、とこちらに手を振ると、隣にいる人間にやかんを渡して一人茶碗を持って汁物を取りに行った。茶碗を持って引き戸を開けて室内に入ってくるに至るまで彼女の表情には外でのはしゃいだ空気が残っていた。
「先輩、豚汁どうぞ」
「ありがと」
僕だけに汁を持ってきた彼女の様子に、僕はちらりと同期の方を見やって、目も合わせずに平に返した。興味なさげに返したが、彼女はにこりと微笑んでくる。
「なんだよー、俺の分も持ってきてくれよ」
「手が塞がってたら窓を開けられないんだから仕方ないじゃないですか! 先輩は自分で取ってきてください。私は先輩にはお世話になっていないので」
彼女はいたずらっぽく笑いながらそのように言う。
「おい、お前からも何とか言ってくれよ。お前のパートの後輩だろー」
「そんな事言われてもなー。うちのパートは自由奔放が売りなものでね」
「全然まぁ、いいんだけどさ。寒いし、ちょっと取ってくるよ」
彼女が僕の分の餅を取ってくるというから自分で取りに行くと立ち上がろうとすると「ここで待っていてください」と袖を軽く押されて椅子に戻されてしまった。
彼女は同期と共に外に出て行った。楽し気に話して、彼女からじゃれる様に叩かれる同期。手の上で転がしていた暖かな茶碗を傾けて豚汁を啜った。豚汁はやけどしそうなほど熱くて、喉の奥にさらりと油が流れて、味噌の良い香りがした。
「餅おいしいなー」
帰ってきた同期が隣で餅を頬張りながらそのように言う。
「餅はまだ食べていないんだよ」
僕は、同期と共に帰ってきた後輩が持ってきた、きな粉砂糖をかけた餅を指した。
「なんだ、汁に餅入ってないのか?」
「汁物に餅入れるのは好きじゃないからね」
餅と汁はそれぞれで別で食べた方がおいしいに決まっている。何よりせっかくのつきたての餅を汁に浸すなんて、高い肉を焼き肉のタレで食べるくらいの愚行。良いものには良いものなりの食べ方がある。
「おいしいけどなー。……って、好んでですよって雰囲気出してるけどお前、汁物後輩にもらってたよな?」
「よくできた後輩なんだよ」
・後輩と主人公は付き合っている。それを隠し通そうとする物語。




