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大学一年の創作課題で書いた小説冒頭集  作者: 戌夜 凪


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3/8

「雪の如し」

 今日は朝から雪模様だった。

 夕方にもなると、冷たい空気がゆっくりと肺に染み込んで、ひんやりとした雪の匂いが鼻先をかすめた。ネックウォーマーに結露した息がしめっぽくて、着心地が悪かった。

 しんしんと降る雪は珍しく積っていた。地元で見る三回目の積雪だった。

 東北出身の担任は、こんなものは積もったうちに入らないなんて言うけれど、たとえ薄かったとしても、暗い道を街灯がやわらかく照らして、白い雪がほんのり光って見えるのだから、積もったことにしてもいいんじゃないのかな、なんて思う。今日は十五日なのだから。せっかく雪が降っているのだから、そんな水を差すようなことを言わないで、素直に感傷的な気持ちにさせてくれてもいいじゃない。

 下校中に滑ってごちんと打った膝は痛くはないのだけれど、なんだかぷっくりと膨らんでいて、足を踏み出す度に皮膚が引っ張られるような感覚があった。

 帰り際に、ココアでもと思って、立ち寄ったコンビニでチョコレートもついでに買った。別に買うつもりはなかったのだけれど、案外そういうのも悪くないのかなと手に取った。

 もう家に着いた頃には、空を真っ赤に染めていた太陽も落ちて、空は青紫に変わり、辺りは薄暗くなっていた。

 手袋を外して鞄の中の鍵を探すけれど、指先が震えて落ち着かず、金属の輪がなかなか見つからない。「唯?」

 ようやっと鍵を見つけて、玄関扉を開けた時、私の名前を呼ぶ声があった。低いけれど、どこか弾んだ声だった。その声に胸の奥がじん、とする。

「ただいまー」

 私はその声が聞こえていないふりをして、誰もいない家にそのように言いながら入った。

「ねね、唯だよね。やっと会えたよー」

 その声の主は私の後を付いてきながら、尚も嬉しそうにそのように言ってくる。

 その言葉は、先月も先先月も、その前も、何度も何度も聞いた。なのに、今日もやっぱり、またやっと再会できたかの様に私の名前を呼ぶ。

「ねーえ。どうして知らんぷりするの?」

 私は机の上に無造作にチョコの入った袋だけ置くと自室に籠った。

・この一夜の物語。

・唯は祟られてしまうと思い、霊とは取り合わない。けれども友人であるルーシーを無下に放っておくことも出来ずに返答してしまう。(ルーシーは課題文で与えられていた名前。唯ではない方の女の子)

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