表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大学一年の創作課題で書いた小説冒頭集  作者: 戌夜 凪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

「葉陰」

大学入って初課題。初めて他人に合評されるってなって超緊張した回。

五感大事にできるだけいつも通り書いた。

 シュッ、シュッと、スリッパの擦れる音がした。

 すぐ近くを歩く気配があり、まぶたの裏に薄く光が射していた。ブーンと低くうなる扇風機の音に混じって、室内を湿った風がゆるく流れていた。

 火照った頬にひやりと風が触れた。少しだけ心地よくて、けれども寝汗のにじんだ背中には、それも煩わしく思えた。机に預けた腕と肌がぺたりとくっついていて、じんわり汗ばんでいた。風に揺られて髪がふわりと浮いて腕に触れ、くすぐったさに耐えきれず、うっすらと目を開けた。

「……起きたー?」

 視界の端に、カオリの姿が見えた。ぼさぼさの髪、サイズの合わないTシャツの肩が落ちていて、片手で口元を隠しながら、長いあくびを噛み殺しているところだった。

 彼女は窓の鍵に手をかけ、のろのろとした動作で外の空気を招き入れる。どこか葉の匂いが混じった風が、重たい空気の膜を切り裂くように入ってきた。

 窓の向こうでは、森の緑が、今日も憎たらしいほど青々としていた。まるで何もかもが平和で、予定通りに進んでいる顔をしている。

 今日の予定を考えて、僕は朝からすでに辟易とした気持ちになっていた。

「……眩しい。閉めて」

「寝るなら、ちゃんと布団で寝なー」

「……わかったから閉めて」

「別に私が開けたわけじゃないわよ。あなたが昨日の夜からカーテンを開けっ放しにしていたんでしょ? それにもう朝だから閉めないよ」

「……意地悪」

 彼女は扇風機のコードを手繰りながら、僕がお菓子を隠している引き出しの中をのぞいていた。

 中からガムの箱を取り出して、一枚口に放る。

「……それ、僕の」

 僕がそのように言ったのに、彼女はなんでもないように、包み紙を軽く丸めて、ゴミ箱へ投げた。

外れた。

 紙はフローリングの上で一度だけ跳ねて、転がり床に落ち着いた。少々蒸しっぽい空気の中で、その甘い匂いがふっと立ち上った気がした。

 ふと彼女の視線が、僕の頭の上を通り過ぎた。

「完成したの?」

 彼女は、片足のかかとを浮かせて壁にもたれた姿勢のまま、僕のすぐ上にあるキャンバスを見やってそう尋ねてきた。

「うん」

「何か食べる?」

「……食べない。寝る」

 僕がそのように返すと、彼女は「そう」とだけ短く返してきた。

「私、今日、出掛けるんだからね。今夜の主役はあなたなのだから、寝過ごさないでよ」

「じゃあ、起こしに帰って来てよ」

「いやよ。面倒くさい。それなら、あなたが私に付いてきなさいよ」

「いやだ。めんどくさい。外に出たくない」


・夕方の個展に遅刻気味に出席する。

・そこでカオリではない女性と出会って、複雑な関係が始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ