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第三十一話:満月の儀式と第二王子の動向

数日サボり反省の連続投稿

 

「変化の儀」を行う満月の日まで、残り三日となった。


 俺は、昼間は魔力制御と【細胞活性】の訓練にすべての時間を費やした。コップの水を自在に操る訓練は、さらに複雑になり、今や俺は室内の空気に漂う微細な水分子すらも魔力で球状に集めることができるようになっていた。


『——スノウ、これで大丈夫かな?俺の魔力操作、「細胞を編み直す」レベルに近づいてきた気がするんだ!』


 スノウは、書類の山から顔を上げ、優しく微笑んだ。


「その調子だ、ティオ。残るは、ロック・トロールの魔獣核を、お前の生命力の触媒として最大限に活かす方法だけだ」


 スノウは、古びた秘法書を広げ、俺に念話で儀式の最終手順を説明した。それは、術者の命を預かるスノウ自身にも、多大な魔力と精神力を要求するものだった。


 儀式を前に、第二王子レオンの動きは、目に見えて活発になっていた。彼は、騎士団長を始めとする腹心たちに、夜間の警備を強化するよう厳命していた。


 =======

(解析鑑定:騎士団長の思考)


 思考:今夜、第三王子が閉鎖書庫へ向かう可能性がある。レオン殿下の指示は、「捕縛、抵抗すれば処分」。

 =======


 スノウも、その危険性を察知していた。


「ティオ。今夜は満月だ。レオン兄上は、私たちがこの閉鎖書庫で何か秘密裏の行為を行うことを、確信しているはずだ。儀式の間、書庫の警備は最高レベルになるだろう」


『——なら、俺たちが書庫に入るのを諦めるべきなんじゃ?』


「それはできない。この満月の夜こそ、『変化の儀』の魔力が最も高まる時だ。それに、騎士たちの注意が閉鎖書庫に集中している間に、私は別の重要なことを一つ済ませたい」


 スノウの銀灰色の瞳が、鋭く光った。彼は、儀式をおとりに、新たな政局を動かそうとしていた。


 深夜。満月が王宮の屋根を煌々と照らす。


 スノウは、俺を抱き、いつもと違うルートで、王宮の中枢部にある閉鎖書庫へと向かった。廊下には、レオンの指示を受けた精鋭の騎士たちが警戒態勢で配置されている。


『——スノウ、騎士が多すぎるよ!特にあの角には魔導騎士がいる!』


『——構うな、ティオ。彼らの真の目的は、お前と私が書庫へ入ることを確認することだ。』


 俺たちは、騎士たちの目の前で、あえて書庫の扉を開け、中へ入った。騎士たちは、命令通り、書庫の扉を囲み、厳重な監視を開始した。


 書庫に入ると、スノウはすぐに魔術的な封印を施した。


「さあ、急ごう、ティオ。時間がない」


 スノウは、祭壇のように机の真ん中にトロールの魔獣核を置き、その周りに古代のルーン文字を魔力で描き始めた。


 俺は、仔狼の姿で、その魔獣核の前に座り、【細胞活性】を最大出力で発動させる。俺の体全体が、琥珀色の光を放ち始めた。


 スノウは、俺の額にそっと手を触れた。彼の温かい魔力が、俺の暴走しがちな魔力を優しく包み込む。


「ティオ。目を閉じろ。人間の姿を強く願え。お前の魂の揺らぎは、私が全て引き受ける」


『——うん、スノウ……!』


 俺は、人間の姿を思い描きながら、トロールの魔獣核から生命力の奔流を体内に引き込んだ。


 それは、激しい熱と痛みだった。骨が溶け、体がバラバラに引き裂かれるような感覚。魂が魔獣の形と人間の理知の間で、激しく揺さぶられる。


『——ううう……っ!』


 俺の体が、不安定な琥珀色の光の塊へと変わっていく。


 その時、書庫の外から、金属が軋む音と、激しい魔力の爆発が響いた。


 ドォンッ!!


 騎士団が、書庫の封印を破り、突入してきたのだ。


「スノウ殿下! 直ちにその異端の儀式を中止せよ!」


 騎士団長の声が、書庫内に響き渡る。彼らの後ろには、第二王子レオンの冷酷な笑顔があった。

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