第二十七話:閉鎖書庫の知識と新たな力
翌朝、俺はスノウに抱えられ、王宮の奥深くにある『閉鎖書庫』へと向かった。書庫の扉は、厳重な魔術的な封印と、鉄の重厚な鍵穴で守られていた。
スノウは、周囲の目を気にせず、真鍮の鍵を差し込み、扉を開ける。
「入れ、ティオ。お前が強くなるための知識は、全てここにある」
書庫の中は、湿気と埃、そして古びた羊皮紙の匂いが充満していた。並ぶ書架には、王家の秘密、古代の魔術、禁忌の錬金術など、この世界では失われた知識が眠っている。
スノウは、奥の机に向かうと、すぐに自身の政務に取り掛かった。彼は、俺に時間という、最も貴重な報酬を与えてくれたのだ。
『——ありがとう、スノウ!俺、早速探すよ!』
俺は、仔狼の姿のまま、書架の隙間をすり抜けながら、片っ端から解析鑑定を発動させた。人間の本を読むことはできないが、鑑定なら魔力的な意味合いを読み取ることができる。
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鑑定対象:『古代変異の考察』
概要:魔力による体細胞の『再構築』。超高度な魔力制御と、自己治癒力の応用が必須。
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鑑定対象:『生命魔法の根源』
概要:生命力の流れを逆行させ、進化の段階を操作する禁術。高位魔獣の核が必要。
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数時間の探索の結果、俺は「姿を変える術」の核となる情報を繋ぎ合わせた。必要な要素は三つ。
①超高度な魔力制御: 魔力の糸で細胞一つ一つを編み直すレベルの精密操作。
②自己治癒力の応用: 体組織の変化に耐えうる、強靭な生命力と治癒能力。
③高位魔獣の核: 生命力を爆発的に高めるための、触媒となる魔獣の素材。
(魔力制御は今、スノウと訓練している。高位魔獣の核は、ロック・トロールのを試せる。問題は、「自己治癒力の応用」だ)
俺は、自己治癒力を応用した細胞の活性化に関する書物、『錬金術師ゼーガンの遺稿』に行き当たった。
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鑑定対象:『錬金術師ゼーガンの遺稿』
概要:体内の生命力を魔力で加速させ、細胞の代謝を極限まで高める技術。**習得難易度:高**。
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(これだ。魔力で細胞の代謝を加速させる。俺の膨大な魔力を、体内の「生命力」のブーストに使うんだ)
俺は、その書物の魔力的な構造と理論を、解析鑑定で頭の中に叩き込む。そして、仔狼の小さな体の中で、繊細な魔力操作を試み始めた。
「魔力を、血液ではなく細胞そのものへ……」
体内に入り込んだ魔力は、いつもの破壊的な奔流ではなく、暖かな霧のように細胞を包み込む。数度の失敗で体内に熱がこもり、激しい疲労に襲われた。
(ダメだ。魔力が、細胞を焼いてしまう……!)
しかし、人間になるという強い決意が、俺を突き動かす。コップを浮かせる訓練で得た「微細な魔力制御」を応用し、魔力をさらに細く、細く絞り込む。
そして、数十回の試行錯誤の末、成功した。
俺の体内に、暖かい魔力の奔流が流れ込んだ。生命力が活性化し、体が軽く、より強靭になったように感じる。これは、間違いなく【細胞活性】の能力だ。
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【細胞活性(Lv.1)】を習得しました
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『——やった!スノウ!俺、「人間の姿に戻る術」に繋がる新しい力を手に入れたよ!』
スノウは、ペンを止め、こちらを振り返った。
「そうか…。ティオ…お前のその『英雄』の名に恥じぬ探求心と努力が、実を結んだようだな。知識は、力だからな。」
スノウは、俺の喜びを受け止めた後、真面目な顔に戻った。
「その書庫の利用は、第二王子が最も警戒する事態の一つだ。私が席を外すときは、お前も必ず私の傍から離れるな」
スノウの言葉は、王宮の危険性を改めて俺に認識させた。この書庫の利用は、危険であるにも関わらず、スノウは使わせてくれたんだ。
『——わかったよ、スノウ。絶対に離れない。俺は、スノウの護衛獣だもん!』
俺は、仔狼の小さな体をスノウの机に寄せた。書庫の静寂の中、俺たちの秘密の協力体制は、確実に深化していく。俺は、この場所で、「人間の姿」への足がかりを、一つずつ積み上げていくつもりだ。
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