幕間:王城の闇と第二王子の陰謀
スノウ王子が街道でロック・トロールに襲われている頃、エルンスト王国の王宮は、表面的な静寂とは裏腹に、権力の駆け引きによる重い空気に包まれていた。
第二王子であるレオンは、銀の細工が施された豪奢な執務室の窓辺に立っていた。彼の眼下には、王都の広大な景色が広がっているが、その視線には冷酷な野心の色が宿っていた。彼は、病弱な第一王子の病状悪化と、第三王子スノウの不在を好機と捉え、王位継承に向けて着々と準備を進めていた。
彼の傍らには、護衛騎士の制服を身につけた、裏切り者の男が控えている。男の顔には忠誠の意が貼り付いているが、その魂は既にレオン王子に買収されていた。
「それで、森の狩りの報告は以上か」
第二王子レオンは、冷たい声で尋ねた。彼の声は静かだが、その背後には絶対的な権力を感じさせた。
「はい、殿下。殿下の命に従い、嘆きの森へ向かう最も危険なルートを選びました。そして、我々が用意した『獲物』を街道へと誘導いたしました。あのLv. 9のロック・トロールであれば、『事故死』として処理するには十分かと存じます」
第二王子レオンの口元に、薄い、勝利を確信するような笑みが浮かんだ。彼の策略は、一石二鳥だった。
「ご苦労。スノウは何もかもが理知に優れすぎていた。王族の道具として静かに暮らすというやつの選択は、王国の不安定な未来を前に、許されるものではない」
彼の言葉には、「王位継承」という目的のためならば、兄弟さえも平然と排除する非情さがあった。スノウ王子が森へ向かった動機が、病に倒れた第一王子のための秘密の薬草探しであることを知っていたからこそ、レオン王子は動いたのだ。
「これで、第一王子の延命という邪魔な種も、同時に消えるわけだ。王都へ戻る頃には、全てが『過去の事故』になっているだろう。報酬は約束通り渡そう」
裏切り者の騎士は、安堵したように深く頭を下げ、部屋を辞した。
レオン王子は、窓の外の深い森に目を向けた。
(スノウ…。もうお前には会うことはなくなるな…)
彼は、これで全てが計画通りに進むと確信していた。護衛騎士団の崩壊も、裏切り者が意図的に連携を崩したことであり、全てが計算の内だった。
だが、彼が放った魔獣を、一匹の若狼が討伐し、スノウ王子がその異質な存在を「護衛獣」として雇い入れたことは、全くの計算外だった。
「護衛獣ティオ」。
その狼が持つ人間的な知恵と琥珀色の瞳が、王都の権力争いという複雑な方程式に、予測不能な変数として加わることになる。ティオが足を踏み入れるのは、第二王子の厳重な監視と陰謀が渦巻く、王城の闇の中であった。
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