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第二十四話:王都への旅路と、王子の真意

 

 ロック・トロールを倒した後、俺は仔狼の姿に戻り、傷ついた体を休ませていた。幸い、騎士のほとんどは気絶しただけで、命を奪われてはいない。


 意識を取り戻した騎士の一人が、スノウ王子のそばにいる俺を見て、慌てた様子で尋ねてきた。


「スノウ王子!ご無事でしたか!この……狼の子供は一体?魔獣の残党では?」


 王子は、冷静にその騎士を見た。


「落ち着け。この子は、私を救ってくれた恩人だ。王都まで連れて帰る。手出しは無用だ」


『——ありがとう、スノウ王子。これ、薬の材料にもなるし、助かるよ!』


 俺は、王子に聞こえるように少し軽薄な念話を送った。王子が頷き、トロールの魔獣核を騎士に回収させた。


 王子は、俺の頭を撫でながら、そっと念話で語りかけてきた。


『——(念話)ティオ。お前の念話は、私だけに聞かせろ。他の人間には、ただの狼だと誤解させておくのが、お互いの利益だからな』


『——わかったよ、王子。俺と王子の秘密ってことだね!』


 馬車の修理が進む間、王子は俺を抱き上げた。


「ティオ。先ほど、トロールと戦っていた時のお前と、今のお前は、口調も態度も大きく違う。先ほどは、もっと冷静で理知的な口調だった。なぜだ?」


『——鋭いね、王子。さっきは気持ちが張り詰めていただけなんだ。まさか王族の王子を助けるなんて、命懸けだからな!トロールが倒れて、ホッとしたら、いつもの俺に戻っちゃったよ』


 王子は俺の瞳をじっと見つめ、すぐに表情を緩めた。


「そうか。極度の緊張が解けた反動か。構わない。その方が護衛獣としては私には使いやすい」


 修理を終えた馬車は、護衛騎士の少数を乗せ、ゆっくりと街道を進み始めた。俺は仔狼の姿のまま、馬車の窓から王子と会話を続ける。


『——ねぇ、スノウ王子。さっきのトロールとの戦い、見ててどうだった?結構うまく戦えたと思うんだけど』


 俺の質問に王子は冷静に答える。


「悪くはなかった。無駄がない。だが、魔力の消費が激しすぎる。お前はLv. 9の魔獣を倒すために、自身の魔力の全てを叩き込んだ。あれでは、次の襲撃には耐えられない」


『——うわっ、図星だ。やっぱりわかっちゃうんだね。すごいな』


「私は分析が得意なだけだ。お前の行動には、『次がない』という切羽詰まった合理性があった。……お前が強くなる機会を求めるのは、その限界を打ち破るためか?」


『——そうだよ!俺は人間になるっていう目標があるんだ。そのためには、『姿を変える術』を習得しなきゃいけないから、強くなるしかないんだ!』


 その夜、野営地でスノウ王子は騎士たちから離れ、一人で焚き火にあたっていた。俺は、仔狼の姿で彼の足元に横たわる。


『——王子も、『王族の道具』じゃなくて、『一人のスノウ』として生きたいんじゃないの?』


 俺の問いかけは、彼の冷静な仮面の奥深くに響いたようだ。


 王子は少しの間沈黙した後、そっと俺の頭を撫でた。


「……お前は、本当に変わったやつだ…。お前の目的のため、私もできる限りの情報を提供する。約束だ」


 俺とスノウの間で、単なる主従契約ではない、互いの孤独を理解しあう新たな関係が、確かに築かれ始めた。王都は、もうすぐそこだ。

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