第十九話:交易街への旅立ち
すみません…風邪ひいたので今日は1話投稿のみです…
「おばあ様。本当に、私が行ってもいいの?」
ミィナの声に、不安が滲んでいた。
祖母は、魔石を包んだ布をしっかりと握りしめたミィナの手に重ねた。
「お前はリゼの命の恩人様(太一)と一緒じゃ。大きな『希望』を抱いて行くのじゃよ。この『魔石』さえあれば、リゼに必要なもの、お前が欲しがっていた本も買えるじゃろう」
俺は、若狼の姿のまま、祖母に向け静かに念話を送る。
『——ありがとうございます。この魔石は、必ずリゼたちの生活を助けることになると約束します』
(老いた祖母は、俺の存在と魔石の出処を理解している。獣への警戒心よりも、孫を救ったことへの感謝が勝っている)
祖母は頷き、そしてミィナに言った。
「道中、決してこの子(太一)から離れるでないぞ」
ミィナは、家の中でリゼに別れを告げ、魔石を慎重に懐に隠した。竹籠には、道中最低限の食料と、予備の薬草を詰めている。
水草の里を出た俺たちは、嘆きの森とは異なる、整備された交易路を歩き始めた。道幅は広いが、周囲の木々は深く、魔獣が潜むには十分な環境だ。
俺は、仔狼の姿でミィナの足元を忠実に歩く。俺の琥珀色の瞳は、常に周囲の警戒を怠らない。
(この道は、人間からすれば「安全な道」だろう。だが、Lv. 7以上の魔獣にとっては、獲物が通る「餌場」だ)
道中、数組の旅人や商人とすれ違った。彼らはミィナの足元にいる俺を見ても、特に気に留める様子はない。
俺は、すれ違う人々を解析鑑定にかける。
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対象:旅の商人(男性)
レベル:Lv.4
保有スキル:交渉術(中級)、簡易魔術(防御)
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(里の人間よりはレベルが高い。自衛のために、ある程度の力は持っているか)
交易路は、水草の里から二日ほどの距離だ。夜を越えなければならない。
日が傾き始めた頃、ミィナが不安そうに念話を送ってきた。
『——太一。この先に、水場と、狩人たちが利用する野営地があるはずよ。そこで、一晩休ませてもらえないかな?』
『——わかった。だが、俺が「仔犬」でいることを忘れないでくれよ?喋ってる姿やスキルを誰にも見せるわけにはいかないからな』
野営地には、すでに二人の男が焚き火を起こしていた。
俺は、即座に彼らを鑑定する。
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対象:狩人(男性)
レベル:Lv.8
保有スキル:弓術(上級)、潜伏
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(Lv. 8。今の俺よりも格上だ。警戒する必要がある)
ミィナは焚き火の少し離れた場所から彼らに丁寧な挨拶をした。
「こんばんは。ここで一晩休ませていただいてもよろしいでしょうか?」
狩人は、無骨な表情でミィナを一瞥した。
「ああ、構わねぇよ。ここは誰のもんでもねぇ。そいつは仔犬か?大人しいな」
『——ミィナ、念のため警戒しておいたほうがいい』
俺は、焚き火の肉を焼く匂いを嗅ぎながら、彼らの狩りの獲物を鑑定する。それは、この森では見慣れない、毛皮に魔力を帯びた巨大な鹿の肉だった。
『——もし話せるようだったらで構わない。彼らから「交易街」の情報、特に「魔石を買い取る商人」の情報を、それとなく聞き出せないかな?』
ミィナは一瞬ためらったが、意を決して狩人に話しかけた。
「あの……お兄さんたちは、街へ行く途中ですか?」
狩人は、ぶっきらぼうに答える。
「ああ。こんな魔物しかいない道を、好き好んで歩くわけねぇだろ」
「そ、そうですよね。あの……魔石を売るなら、どの商人が一番高く買ってくれるか、ご存知ですか?」
ミィナの質問の直後、狩人の表情が鋭いものへと変わった。
「魔石? 子供が持ち出すようなモンじゃねぇな。どこでそれを手に入れた?」
その瞬間、俺の解析鑑定が、狩人の「思考」に赤色の警戒マークを点灯させた。
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対象:狩人(男性)
思考:魔石を奪う。子供なら容易い。
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(はぁ……ここは異世界だ。日本と違って、人間でも安心できないのは理解していたつもりだったけど……)
俺は内心ため息をつきながら、この後の対処法に意識を集中した。
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