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第十話:魔力制御への挑戦

 

 安全な寝床に逃げ帰ると、疲労と絶望で動けなくなった。


(人間に会いたい…。でも、言葉が通じない…。今は我慢するしかない…まずは強くならないと…。)


 グレイウルフとの戦闘の際に、自分の体内で感じた熱い力の奔流を思い出した。あの時、牙の先に集めて一撃必殺を可能にした、獣の肉体が生み出す力。それを「魔力」と呼ぶことにした。


(この魔力を、戦闘でいつでも引き出せるように制御できたら、もっと強く、効率的に戦えるはずだ…。)


 それは、まったく根拠のない、絶望の中で縋る一本の蜘蛛の糸のような発想だった。しかし、太一にはこれしか方法がなかった。


 仔狼のサイズのまま寝床の中で訓練を開始した。


(力を流せ、体表へ!防御を固めろ!)


 体内で湧き上がる魔力の奔流を意識し、それを体外ではなく、毛皮の直下に集めるイメージを繰り返す。だが、魔力は彼の銀色の毛皮の表面を微かに温めるだけで、まるで熱い血液のように、体の内部で暴れまわる。


「グルルル……(くそっ!全然上手くいかない!)」


 まるで、初めて自転車に乗る時のように、力を入れすぎたり、抜きすぎたりする。力を込めると、体が若狼サイズに意図せず膨張してしまうこともあった。能力の制御と魔力の制御が同時に必要となり、訓練は困難を極めた。


 数時間、ただひたすらに魔力を体表へ集めようと集中し続けた。体力の限界が近い。彼の毛皮は汗で湿り、土と血の匂いの中に、微かな熱がこもっていた。


(諦めるな……!強くなりたい!このままなんかで終わらない!)


 心の中での執念がエネルギー源となった。その執念が臨界点に達したとき、彼の意識と魔力が、完璧に同期した。


『体表を覆え!』


 強く念じた瞬間、体内で抑圧されていた魔力が、銀色の毛皮の根元に張り付くように均等に薄く広がり、全身が硬質の銀色に輝いた。


 =======

 スキル:魔力制御(体表強化)を獲得

 =======


 頭の中にゲームの通知ウィンドウが再び浮かび上がる。レベルアップの表示はなかったが、新たな能力が追加された事実に驚きに目を見開いた。


(魔力制御……!成功した!これで、不意打ちされても一瞬だけ防御できる!攻撃にも使えるはず!)


 この新たな力を、絶望的な状況で知恵と執念によって掴んだ。言葉は通じないままだが、「生き残るための力」を手に入れたという事実に、安堵と決意を新たにした。

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