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Ep4 よし、私とオマエでその施設を襲うぞ

 ルーシは鼻でフッと笑い、


「死ぬ前提だったのかよ。私も落ちぶれたものだな。鉄砲玉代わりにされるなんて」

『テストだよ、テスト。報酬は先払いだったよな?』

「あぁ。100メニーって札が50枚入っている」

『100メニーの価値は、だいたい米ドル100ドルと同じだ。ホテル代には困らんさ』

「当分な。クール、また仕事を紹介してくれ」

『了解』


 そう言って、電話を切ってしまう。

 ルーシはスマホで適当なホテルを予約し、きょうのところはそこで頭を休めることにした。


 *


「悪くないホテルだ」


 予約が取れるか不安だったが、一歩ホテルの中に入れば取り越し苦労であった。意外と片付いている部屋に、バスタブまである。備え付けのタバコもあり、飯も運ばれてくるようだ。


「さて……」


 意味もなくテレビをつける。案外重大な情報があるかもしれない。

 しかし、本来テレビっ子ではないルーシは、バライティ番組の時間帯は退屈だと消してしまう。


 というわけで、備え付けられていたタバコを吟味する時間だ。ルーシはいかにも高そうなパッケージから黒いタバコを取り出す。


「タール、低そうだな」


 匂いを嗅がなくても、強い甘みが広がっているのが分かる。顔をしかめ、ルーシはタバコをおいた。


 刹那、


 ドンッドンッ、とガラスが叩かれる音がした。ルーシは拳銃を取り出し、窓のほうへと向かう。


「誰だい?」


 メガネをかけた黒髪の地味な女がいた。年齢は大学生くらいだろうか。髪型はショートヘアで、貧乳でもある。


(悪意のある顔じゃないな)


 ひとまず敵意を感じなかったので、ルーシは窓を開ける。


「よう。名前は?」

「メリット」

「そうか、メリット。ここへなにしに来た?」

「パルクール失敗して落ちてきた」

「なるほど、ファンキーだね」

「タバコ、吸わせて」

「あァ?」

「アンタ聖女でしょ? 聖女たる者、タバコなんて吸っちゃダメ」


 そう言って、メリットは備品のタバコをくわえ火をつけた。


「悪くないわね」

「勝手に評価するなよ。まぁ良いけどさ」

「んで? アンタ聖女なんでしょ?」

「魔力が漂っているのか?」

「そりゃあ、そうでしょ。ただ、見えるオーラが黒色。まるで悪党が聖女になったみたい。普通、白か金色なのにね」

「へぇ」ルーシは椅子に腰掛ける。「それで、パルクールしていた理由は?」

「ストレス発散」

「最近の女子のブームは分からんね」

「アンタだって女子でしょうに。それに、これは私だけの趣味。お金かかんない上に、スリリングで楽しい。きょうみたく事故るときもあるけど」

「事故っても平気なのか?」

「魔術くらい使えるから」


 異世界人のルーシからすれば全く説明になっていないが、この世界には聖女の力以外にも魔力だったり魔術だったりがあるようだ。


「んで、聖女のアンタに頼みたいことがある」

「なんだ? 藪から棒に」

「政府の研究機関から〝親友〟を助けてほしい」

「は?」ルーシは眉をひそめた。「見ず知らずの私に頼むのかい? よほど切羽詰まっているようだな」

「しっかり聞いて。良い? その親友の名前はホープ。聖女だって疑いをかけられて、政府用の施設に誘致された。その子を救ってほしい」

「報酬は?」

「25000メニーでどう?」

「オマエ、学生?」

「そうだけど」

「良くそんな大金持っていられるな。なにか裏稼業でもしているの?」

「賞金稼ぎしてる」

「なるほど……」


 聖女だけでなく、一般人も魔法を使える世界だ。賞金稼ぎの需要は高いだろう。


「よし、私とオマエでその施設を襲うぞ」


 ルーシはメモ帳に、美しい筆記体の英語を記していく。


「良いか? まず必要なのは、警備員がもっとも手薄になる日の予測だ。次に武器。私らは魔法を使えるけど、万が一を考えると必要だろう。それに加えて、施設のカードキー。オプションで停電もほしいな」


 襲撃に必要なものを一瞬で網羅していった。


『警備員数』

『武器』

『カードキー』

『停電』


 と、4つの準備が必要となる。


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