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Ep3 すげぇな、ユースクリーンみたい

 クールはニヤッと笑った。皮肉っぽく。


「いやー、馬鹿げてるよな。アンゲルスはどんな枠組みにも入らない、って不文律があるのに」

「どこにも属さないでやっていけるの? EUに加盟したいってことは、食料無関税を達成したいんじゃないかね」

「そうかもしれんが、今のオマエさんにとって聖女を一緒くたにされるのは良いことではないだろ?」

「まぁな」ルーシは葉巻をくわえる。「つか、なんでオマエら私が聖女だって分かるんだい?」

「聖女の魔力を感じ取れるからだよ。そしてオマエさんの魔力は、そこらの聖女とは比べ物にならないくらい強い」

「前世で悪さばかり働いてきたのに」

「だからこそだ。聖女の魔力を使って、神様とやらは更生してほしいんだろ」

「なるほど」葉巻に火をつけた。「でも、私は恵まれない者たちのために働くつもりはねぇぞ。自分の問題くらい、自分で片付けるべきだしな」

「利己的だねぇ。聖女らしくないぞ」

「好き好んでなったわけじゃないのでね」ルーシは葉巻を置く。「んで? 実業家っていうのはマフィアの隠語だろ? オマエからは裏社会の匂いがプンプンするぜ」

「見抜かれてたか。なら、相談しやすいな」

「なにを?」

「近くで武器取引してる連中がいるんだ。おれたちのシマなのに、許可もとらずに、だ。ソイツらを始末してくれねぇか?」

「なんでオマエの命令を聞かなきゃならねぇ」

「スマホと金一封で請け負ってくれ」


 クールはスマートフォンと封筒を渡してきた。


「異世界からこっちへ来たということは、圏外は一生直らねぇぞ」

「まぁ、携帯電話がなければなにもできないか。分かった。引き受ける」


 こうして封筒とスマホを受け取ったルーシは、武器取引の妨害へと向かうのだった。


(徒歩10分くらいだな)


 車を盗んでも良いが、10分なら歩いたほうが良いだろう。ルーシは長くてウザったらしい銀髪をなびかせ、全体主義的な街を歩いていく。


(ホントに成熟した民主主義国家なのかよ)


 街ゆくヒトの顔は、どこか辛気臭い。確かに寒い国ではあるが、それにしてもジトっとした目つきが気になるところだ。


(裏道で売買しているか)


 ルーシは一応拳銃を用意しておく。残り弾数は6発。少し心もとないが、聖女の力がどれくらい通用するかのチェックも兼ねよう。


 裏通り。電灯が点いたり消えたりする場所で、明らかにカタギではない連中5人が、ケースを交換し合っている。

 ひとまず、ルーシは宣戦布告の意味も込めて一番手前にいた男へ発砲した。


「ぎゃぁあ!?」

「チクショウ!! 敵襲だ!!」


 邪悪なる者に鉄砕を下す……そんな言葉を思い出した。しかしどんな形で制裁を下すか分からない。なので、ルーシは適当に祈ってみる。


「全員ミンチになれ」


 そう呟いた刹那、

 黒い羽があたり一面に現れた。黒鷲の羽のように美しいものだった。

 そしてルーシの言葉どおり、

 ビッシャッと、

 その羽につらぬかれた者たちは肉の塊と化すのだった。


「すげぇな、ユースクリーンみたい」


 某動画サイトのショート動画で流れてきそうなミンチを見て、ルーシは思わず驚嘆した。


「さて、武器だけ持っていけば良いのかね」


 ここまでバラバラになっていると、血液の跡くらいしか残っていない。加えて治安の良い場所とも思えないので、当局が必死になって調べることもないはずだ。


 ルーシは武器ケースを手に持ち、その重たさに悶える。


「重たいな。クールに手伝い呼ぶか」


 ルーシはクールに渡されたスマホで、彼へ電話をかける。


「よう、武器ケースを運ぶ手伝いがほしい」

『オマエさん、生き残ったのか。やるじゃねぇか』


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