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9-6 打開

 ――お掃除レースの為に用意されたレインボー道路

 水晶岩で構成されたそれは、一見、虹色パーティクルでとてもカラフルな道だけど、よく目をこらせばゴミや埃はしっかりあって、その汚れを、


「なんだアルテナッシの乗ってる黒くて丸いの!?」

「凄い勢いで走りながら!?」

「道をピカピカにしていってる~!?」


 俺がゴルリ君と一緒に乗っている、巨大な全自動掃除マシーン(ルソバ)は、唸りをたてて、虹色の道を疾走する!


 【ルソバ】スキル Aランク

 スキル解説[人類史初の身近なロボット]


 汚れを落としながら、コースを走って行くルソバに、


「す、すごいもふ~!」


 同乗者のゴルリ君は、大興奮だった。


「なんもふかこのワンダー(発明品)!? アシモチャンのロボットと同じくらいエキサイトハッピーもふ~!」

「え、えきさいとはっぴー?」


 ま、まぁでも、テンションがあがるのは良くわかる。この魔法の世界に現れた科学の結晶なのだから。……いや、普通のルソバはこんなにおっきくないし早くないし、そもそも人は乗せちゃいけないけど!


「はやいもふ、誰も追いつけないもふ!」

「う、うん、ちょっと卑怯な気も、する、けど」


 ……ゴルリ君と一緒に、振り返った俺の視界に飛び込んできたのは、


「【紫電】スキル――」


 全身にバチバチと紫色の静電気を纏って、


「〈|ゴッドスピードフォーミー《疾風迅雷》〉!」


 メディが爆速でモップ掛けしながら、俺達に追いつこうとしてる!?


「えええ、お姉さん、速すぎるもふ!?」

「〈サンダーステップ(電光石火)〉!? で、でもあれは瞬間的なスピードアップじゃ!」


 とか言っている内に、俺のルソバと横一列にメディは並ぶ!


「これは、瞬間的なもの(インスタント)でなく、継続的な戦いを想定した、私の新しい技です!」

「メ、メディ」

「本来は、ご主人様を守る為に磨いた技でしたが――」


 そこでメディは、カッと目を見開いて、


「今私はこの技を、ご主人様との決別の為に使います!」

「決別!?」

「はい、私はこの天下一メイド会に優勝し、新しいご主人様のワクモフサン様と、一生引きこもります!」

「――一生」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の頭は、

 ひきこもりニート状態にワクモフさんに、ご主人様~今日のごはんはカップラーメンです~、と差し出して、ついでにコーラもつけるもふ~と、応えるワクモフサンの様子が自動的に流れて、

 ――パーン! した


「ぐはぁっ!?」

「お兄さん!? 大丈夫もふ!?」


 や、やばい、意識が薄れる、グラグラする、俺の()、メディが誰かのご主人様になることにたいして、耐性がなさ過ぎる。

 だけど――ううん、だから、


「嫌だ」


 自分のしたいことを、ちゃんと言わなきゃ、


「メディが俺以外のご主人様になるなんて、絶対嫌だよ!」


 その気持ちを伝えた、その時、

 メディが、下がった。


「――え?」


 突然の減速に驚く俺、だけど振り返った時、

 ――メディのモップの先端が


「……あれ?」


 不自然に、何かが固まっているのに気づく。あれは、埃やゴミの塊?


「静電気を操作して、モップの先端に、あらゆるゴミクズを集めました」


 メディの発言通り、糸くずやらなんやらが黒くて丸いふわふわの塊に、それが静電気でパチパチと弾けている様子は、まるで雷雲――ま、まさか!?


「お許しくださいませ、ご主人様!」


 メディははしりながら、モップを思いっきり、振り上げて、


「【紫電】スキル!」


 ――先端のゴミで出来た雷雲を

 俺の真上へぶん投げる!


「〈アーティフィシャルサン(人工降雷)ダー〉!」


 綿埃の雲から放たれた雷は、


「ぎゃー!?」

「もふ~!?」


 俺とゴルリ君を思いっきりビリビリと痺れさせた。ルソバもプスプスと煙をたてて、そのまま、コーナーへ激突する。


「……申し訳ありません!」


 そしてそのまま、俺を追い抜いていくメディ、……やがて続けて、他のメイド達も通り過ぎていく。


「い、今のメディさんがアルテナッシを雷で攻撃した!」

「このレース、サンダーゲーだな!」

「悪いけどお先だし☆」


 や、やばい、どんどん順位が落ちていく、俺はなんとか体を建て直して、ルソバをもう一度起動させる、けど、


「ス、スピードが、落ちてる」


 ――機械の天敵静電気

 その事実は、アシモチャンのロボットに対して、【セーター】を使ったことで実証済みだ。もしかしたらメディはその経験から、ルソバをロボットと同じ類いの物と見抜いて、雷の攻撃を仕掛けたのかもしれない。

 まずい、まずい! 流石に1位から100位までにはならないとしても、このままじゃチェックポイントのどっかで落とされてしまう!

 ――どうしたら


「お兄さん!」

「え、どうしたのゴルリく」


 ……その時、ゴルリ君は、

 自分のスキル、【改造】スキルで出現させた、あらゆる工具を握りしめていた。


「……やっちゃうんだね」


 もう俺じゃ、絶対に止められないのがわかるくらいに、


「やっちゃうもふ~!」


 走り続けるルソバ相手に、喜色満面目を輝かせながら、ドライバーやスパナを叩きつけ始めた。


「【改造】スキル――〈マッドモッドモアーモ(もっともっと狂改造)アー〉!」


 も、ものすごい早さでルソバを弄ってる、なんか手に残像が出来て千手観音みたいになってるし。あと、なんか目が怖いし!


「す、すごいもふ! これ、魔力だけじゃない何か(バッテリー)で動いてるもふ! トキメキが止まらないもふ~!」

「弄ってもいいけど壊さないでね!」


 ――そんなこんなでレースの方は

 それぞれのチェックポイントで、90位、80位、70位と、足切りギリギリの位置をなんとか保っていきながら、ついに、


「60位!」


 とうとう最終チェックポイント! ここからの上位50名が、決勝進出、なんだけど!


「ああ、50位まで凄く遠い! 間に合うのこれ!」


 レインボー道路の最後半は、ほぼほぼまっすぐの道だから、今の順位がよくわかる! 先頭を独走するのはメディで、あとは結構な団子状態!

 ――この状況を"打開"するのは


「【改造】スキル!」


 ゴルリ君がこのルソバを、どうパワーアップさせたか次第、いつのまにかルソバの真ん中に出来てるボタンを、


「〈ウィークズウェーキィメ(ポチッとな~)カ〉!」


 押した瞬間、ルソバは、変形して、

 ――なんか黒くてでっかいミサイルになった


「えええ!?」


 よく見れば先端に顔がついているミサイルにまたがった俺とゴルリ君は、そのまま、弾丸のように加速する!


(これ、配管工ワールドのアイテムのアレだぁ!?)


 下位から上位へのパスポート(打開)、ものすごい早さで団子集団に追いついていく、けど、


「ちょ、ちょっと待って、これ、掃除道具になってるの!? レギュレーション違反じゃ!?」

「大丈夫もふ、ミサイルの底にモップをつけてるもふからこれは掃除道具もふ!」

「現実とかでもよくある規則(ルール)の穴の突き方!」


 ともかく、俺達を見せたミサイルは、


「え、ちょっとまって、あれって何!?」

「よ、よけろ、ぶっ飛ばされるぞ!?」

「ああ、ギャルっぽいのに当たったぁ!?」


 と、一気に順位をぶち上げて、ゴール前までのメディへ追いつく!


(やった、これで50位内確実――)


 そう思った、俺だけど、


「えっ」


 この時メディは、ゴールラインを割らずに俺達の方へ向いて、

 ――モップの先端にゴミホコリで作った雷雲を集めて

 それを、


「重ね重ね、申し訳ありません!」


 〈|アーティフィシャルサンダー《人工降雷》〉を、また俺達へ投げようとしてきてる!?

 サンダーは自分より順位が下の相手には当たらないはずなのに!?


「や、やばいもふ~!?」


 だけどこのミサイルはルソバと同じく自動操縦で止まらない、このままじゃ当てられる、


(――終わった)


 俺は心の底から、そう思った、

 だけど、


(あ、あれ)


 体は勝手に、メニュー欄を開き、そしてそこからスキル欄を展開して、


 【バ○○】


 を、

 ルソバの次のしりとり、バから始まる三つの言葉を、

 当てはめる。


「【バケツ】スキル――」


 モップとセットの掃除道具、


「〈バケットカバー(暗いよ狭いよ怖いよ)〉!」


 バケツをメディの頭上に出現させて、そのまま被らせる!


「えっ!? な、なにっ!?」


 鉄作りの目隠しをされたメディは、雷雲を俺達に投げることも出来ずそのまま、


「あっ」


 俺達の乗ってるミサイルに吹き飛ばされ、


「あああっ!?」


 そのまま1位にでゴールして、そして、

 俺とゴルリ君も、2位と3位でゴールした。


「メ、メディ!?」


 ゴールした途端、ぼふっと煙をたてて、ミサイルから巨大かなルソバへ戻る。俺はそれから飛び降りて、弾き飛ばされたメディの元へ駆け寄る。

 ――配管工カートワールドじゃミサイルに当たっても弾き飛ばされるだけだけど


「大丈夫!?」


 現実はゲームじゃない、心配して、駆け寄ろうとした俺、

 だけど、


「近寄らないでください!」


 メディは、そう叫んだ。


「……メ、メディ」

「……ごめん、なさい、ご主人様が私をどれだけ心配してるか、それに、必要としているかも」


 メディは、


「だからこそ、私の過去を知られた時が怖い、……それはけして、隠し通せぬものであることを、知った今なら尚更」

「そ、そんなの、俺は聞いたりしないから」

「……いいえ、エルフリダ様の言葉が真実、だけどその正しさ(正論)にも私は、耐えられない」

「――メディ」


 ……折角、2回戦進出を決めたのに、重い空気が流れる中で、

 ――その声は響いた


「んーメディッちの悩みも解るけどー☆ それだとアルっちがかわいそうっていうかー☆」

「えっ」

「あっ」


 その声は、とても聞き覚えがある、

 ――Fクラス最強の陽キャ


「とりま、1億エンゲットしてから考えね☆」


 いつのまにか、俺達のミサイルにひっついて、ちゃっかり4位入賞を決めていた、


「〔血吸い少女のチスタロカミラ〕!?」

「ちーっす、あーしだよ☆」


 俺にもメディにも分け隔てなく接する(コミュ強)彼女が、ギャルだけどメイドの姿で、いつのまにかゴルリ君をもふもふ後ろから抱きしめながら、いたずらっぽく笑っていた。

・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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