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9-5 虹の道を渡るのは

 ――ドワモフ族の里のクリスタルケイブ

 大通りを暫くいった所にあったのは、ライブやら発表会やら落語とかが出来そうな簡易的なステージ。その舞台上のメディと、客席側の俺はやりとりをしていた訳だけど、


「むぎゅん」


 ……一()の王であるエルフリダ様が、カバンさんからお仕置き(忠告)を受けて、うつぶせに倒れていることで、場の空気はハッキリとカオスになっていた。


「あのさ、俺はあのアルテナッシって男のこと知らないんだけど」

「帝国学園Fクラス☆ 最高で最強の問題児だし☆」

「皇帝陛下の友人だったり、スライム退治にも関わってるって噂があったり」


 ざわつきの中には俺の話も混じるけど、正直、それには構ってられない。……なんか聞いたことあるような(ギャル)もしたけど、


「メディ、俺――」


 エルフリダ様の指摘は、耳に痛いところもあったけど、それでも俺はメディに傍にいてほしくて、ともかくその気持ちを伝えようとした、

 ――その時


『もふもふもふ~』


 突然、メディが経つ舞台、その後ろの方から声が響いたと思ったら――その水晶の壁だと思っていた部分に、

 ――何かが、浮かぶ

 そこに現れたのは、


『時間だもふ~!』


 お、おっきなドワモフ族の姿!? 上半身だけ写ってるけど、なんだか普通のドワモフ族よりおっきい、……というか、太ってる?

 も、もしかしてこの人が、


「パ、パパもふ!」


 やっぱり、この(けも)が、この里のリーダーであるワクモフサンなのか。

 となるとこの壁はおっきな水晶障壁(テレビモニター)、ワクモフサンは今は違う場所にいることになるのだけど、

 ……画面いっぱいの体の後ろにうっすらと見える部屋の様子は、服が散らばってたり、おかしが食べかけだったりと、正直汚い。典型的な掃除の出来ない人の部屋(汚部屋)みたいになってて。


「パパ、パパ! こんなことしないで、早くお部屋からでてきてもふ!」


 って、ゴルリ君が言うけれど、


『あ、ちょっと待つもふ、デイリーを消化してるのか、タスクを指示しておいてオートモードで……』


 こっちからの音声は聞こえてないのか、いや、無視しているのか、すぐ横にあるゲームをプレイし続けている。


(ゲ、ゲーム中毒のひきこもり……)


 本当そのイメージ通りのドワモフ族が、よく見れば、どこから仕入れたんだという"働いたら負けかなと思っている"ってTシャツを着たドワモフ族、ワクモフサンが、


『それじゃ天下一メイド会の第一回(せ~ん)


 そう言った途端――ゴゴゴゴッ! って、地鳴りが起き始めた。


「うわ、なんだ地震か!?」

「いや、大通りの方を見ろ!?」


 その言葉に慌てて振り返れれば、さっきまで俺達が歩いてきた道が、ぐぐぐって盛り上がって、まっすぐな道が曲がりくねって、ただ蒼一色の道だったのが、カラフルな鉱石に彩られはじめて!?


「せ、成長の早い水晶岩が、道そのものを作り替えていってるもふ!」

「そんな仕掛けを、君のお父さん用意してたの!?」


 とんでもないドワモフ族の技術力!? 驚く(メイド)達の前で、彩り豊かに輝く道が、どんどん形成されていって、そして、

 地響きが終わったその瞬間、


『準備完了、それじゃ!』


 七色の水晶道を前にして、


『レインボー道路お掃除レースをはじめるもふ~!』


 モニターのワクモフさんが、そう宣言したものだから、


(配管工カートワールドだこれ!?)


 セイラ様お熱(レート9056)のゲームの名前を、思わず心で叫んだ。しかし慌てるのは俺ばかりで、他のメイドのみんなは、手にしていたモップをうおおおお! って叫びと共に、スタート地点っぽい場所へ向かう。


「レ、レースってまさか、この道路をモップがけで掃除しながら、ゴールへ向かうってこと?」


 学校の廊下で、遊びでやるような奴を、こんな規模でするなんて――そう俺が思っていると、


「ご主人様も参加されるのであれば」


 メディが、舞台の上から、


「早く、モップなりなんなりの掃除用具をお探しになられてください」


 そう、忠告(アドバイス)をしてくれたけど、


「メ、メディ、俺は!」


 そんなレースのことなんかどうでも良くて、ただ、メディと話をしたくて、

 だけど、


「……嘘を吐いていて申し訳ありません、ご主人様、ですが」


 メディは、辛そうに、悲しそうに、

 舞台から降りて、俺の横を通り過ぎながら、


「貴方だからこそ、私の過去は知られたくないのです」


 そう言って、モップ片手に俺から走り去っていった。


「メ、メディ……」


 呆然と、俺は立ち尽くす。

 もともと俺は、ワクモフサンの中のスライム退治と同時に、エルフリダ様からメディを取り返すくらいの勢いでここまでやってきた。

 けれど、彼女(メディ)はそれを否定してる。

 ……俺は、どうすれば、

 そう思った俺の頭に、


「ていっ」

「あ痛っ!」


 あ、頭がなんかに小突かれた!? 慌てて振り返ると、

 俺を叩いたであろうモップの柄を、そのまま、俺に差し出すカバンさんがいた。


「失礼ですが、私のご主人様の言葉を、もうお忘れで?」

「エルフリダ様の言葉?」

「――どうせ心もからっぽならば」

「……あ」


 それは、

 タートルリゾートの砂浜で、ビーチバレー(美威血破麗)の試合中に言われたこと、


「……頭もからっぽにして、バカになっていい」


 それを思い出した時、


「今がその時ではありませんか?」


 グイッと、カバンさんは、俺にモップを突きつける。


「ふ、そうよ、悩みは成長の糧であるが、今は立ち止まる時ではない、今は何も考えず、突っ走っるべきだろうよ!」

「森王様はもう少し気絶してください」

「よかろう!」


 カバンさんに元気よく返事をした後、また何も言わない五体投地になるエルフリダ様。……そんな中で俺は、カバンさんの差し出したモップを、


「――それはいらないです、カバンさん」


 そう、断った。


「え、……お、お兄さん、あきらめるもふか?」


 心配そうにそう聞いてくるゴルリ君に対して俺は、


「大丈夫、俺のスキルは何も無い――fだけど」


 【ル○○】、その空白を、


「何も無いから、超えられる」


 埋め始める。

 ――そして


『それじゃレース開始もふ! 100人でのサバイバルレースで、チェックポイントごとに90→80→70→60って、減らしていって、最終的に50名が二回戦に出場もふ!』


 いよいよ始まろうとするレース、スタートラインには、モップ片手にメイド達がひしめきあっている、……そこにはメディの背中があるけど、俺に対してけして振り返らない。


『さ~ん、に~、いちぃ!』


 そんな中で俺は、スキルによって、

 ――目の前に現れた物に、ゴルリ君と一緒に


『ぜろぉ!』


 乗った、

 瞬間、

 ――爆走する


「――えっ」


 メディだけじゃなくて、全員が、後方から一瞬で追いつき、抜き去った俺へ注目する。

 俺が今乗っているのは、モップじゃない掃除道具、

 ――全自動


「【ルソバ】スキル!」


 前世の世界で最も有名なロボット掃除機、


「〈|ダストトゥオートマトン《塵は機神の円環に》〉!」


 それを人を乗せれるサイズに(巨大化)したものは、俺を乗せてコーナーの汚れを攻めていった。

・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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