5-6 Beyond the Period
――オーガニ族がいると聞いて訪れた黄金の川
そこは水の一滴も流れない、ただただでかい道だった、だけど、
「そこんとこよろしくぅ!」
「「「よろしくぅ!」」」」
その声と供に、アニマルの目がギラギラ輝く、その光が集まって道は黄金に満たされている。うん、野生動物の目は光るって聞くけど、光りすぎじゃない?
ともかくも、悪そうな人達が乗り物で夜中に群れて走るこの光景は、
――珍走団
それに余りにも酷似してた、前の世界じゃ最早絶滅危惧種、創作なら許されるけど現実ではただひたすら迷惑な人達。え、もしかしてこの人達が、オーガニ族?
「わぁ、あの頃みたいにバリバリ自然派やねぇ」
「バ、バリバリの意味が違うと思うんですけど」
まぁでも自然派なのは解った、何せまたがってるのはバイクじゃなくてアニマル。排気ガスは出ないクリーンエネルギー、ライトすらもこの動物の目がペカーっと光ったものだし。
――沢山のアニマルの光の群れが道を満たす様子
(黄金の川ってこういう事か……)
確かに、そう見えなくも無い。正直な所、傍から見てる分には面白い気がする。音はうるさいけど。
「うちカナヅチよってに、本物の川とかは近づかへんようしとるけどこの川は別、デートにはピッタリやんねぇ」
そんな遊園地のパレードみたいなものなのかなこれ……、そんな風に心に突っ込んでると、
「――あぁ?」
え、あれ、先頭で走ってるリーダーっぽい人が?
「何メンチ切ってんだよろしくぅ!?」
「ええええ?」
きゅ、急にこっち睨み付けてきた!?
「ブロロロロォ!」
うわわ!? リーダーっぽい人を先頭に、バイクの十台くらいが、一気に俺達を取り囲んでくる!?
「おいてめぇどこのもんだぁ!?」
「ここらは俺ら、オーガニ族の縄張りだぜ!?」
「事故る奴はハードラックとダンスっちまったんだがぁ!?」
うわぁ、口でパラリラとかブロロロォとか言って俺達の周りをぐ~るぐるしてくる! 怖い怖い怖い!
そんな中で、リーダーっぽい人がずずいって寄ってきて、
「おいてめぇ」
って、声をかけてくる。
――オーガニ族
体はごつくて如何にも強そう、そして角が生えてるこの姿、
解ったこれ、モンスターのオーガと、妖怪の鬼だ、それを混ぜ合わせたような種族だ。
ともかく俺はバイクに乗ったままのその人に、
「は、はい、なんでしょうか?」
と聞いたら、
「――てめぇじゃねぇよ」
と言って、そのオーガニ族の人は、
「そこの女に聞いてんだ、てめぇもしかして、聖女様か?」
そう、セイカ様に声をかける。その質問にセイカ様は、
「ほうよ」
これだけの状況なのに、聖女様は笑顔を崩さない、その態度に、
――リーダーらしき人は笑った
ただし、
「良く来やがったなぁよろしくぅ!」
文字通りの鬼の形相で! あわわ、と俺が思ってる間に、リーダーはアニマルから降りて、そのまま近づいて来た!
「ま、待ってください!」
俺は慌てて、リーダーっぽい人とセイカ様の間に割って入る、
「ああてめぇ、誰だよ?」
「あ、アルテナッシです、〔何も無しのアルテナッシ〕」
俺が慌てて二つ名を表示した、だが、リーダーは興味無さそうに俺をぐいっと手で避けた。
「わ、わわっ」
俺の体がよろめく中で、リーダーは、
「ガキに興味はねぇ、だが、この女は別だ」
「べ、別って、聖女様に何をする気なんですか」
「俺達を舐めた責任とってもらうんだよ」
「――責任って」
俺が疑問を浮かべる中、リーダーは言った。
「あの神探しのなんとかって奴が、俺達の村の遺跡に女神様が居たとか捏造した責任だよろしくぅ!」」
「え、ええ!?」
神探しのなんとかって、ゴッドフット先輩だよな?
――〔神探しのゴッドフット〕
二つ名は、あらゆる場所で、女神や聖女の痕跡を見つける事が所以。Sクラスを代表する、偉大な生徒。
だけど、その成功が、捏造?
俺は驚くけど、セイラ様は冷静に、
「――うん、やっぱりそやねぇ」
って、言った。
「やっぱりって、どういう事ですか?」
俺がたまらずそう聞けば、
「60年前にもここに来てるんやけど、うち関連のなんかなんて感じへんかったしね、昨日、報告聞いてから気になってはいたんよ」
「……もしかして、ここに来た理由って」
それを確かめる為に、俺に同行したという事か?
あれ、でも最初は確か、スライム退治の為にって言ってたような、いや、それも含めてなのか?
頭の中の整理が追いつかない状態だったが、
「ゴチャゴチャうるせぇ! いいから俺達のシマに来な!」
そう言って、オーガニ族のリーダーが、無理矢理聖女様を連れて行こうとしたものだから、俺はまた慌てて割って入る、
「ま、待ってください、聖女様を連れて行ってどうするんですか!」
「ヤキいれて詫びさせるに決まってんだろよろしくぅ!」
「そ、そんな事、止めて下さい!」
「うるせぇガキが!」
リーダーは
「”角無し”が口を出すんじゃねぇよろしくぅ!」
聞いたその瞬間――
「――あっ」
……俺の頭の中で、何かが、
弾けた。
「……それなら――これでどうですか」
「あぁん!?」
俺はステーラス画面のスキル欄を開き、そしてお題を、
――二つ並べた
3【○○】 [オーガニ族のシンボル]]
5【○○○○】 [ただ一つの勲章]
普通、スキルは一個しか使用出来ない――けれどそれは思い込みだ。心を自由にしろって、セイラ様も言っていた。だから俺は、
そのお題を二つ、一気に埋める!
「――ぶっこんでくんで!」
その言葉は、
「よろしくぅ!」
俺を、黄金の光に包み込む!
「!?」
驚くリーダー達、だがやがて黄金の光は晴れていく、
「てめぇ、その姿は!?」
ブレザーの制服は学ランに変化して、俺はそのボタンを全て引き千切って、ズボンもやたら下膨れのものを履き、髪型はリーゼントヘアー、そして俺の額には、
「――これで文句ねぇよなぁ?」
なんか雄々しくなった俺の口調にピッタリな、
「命張ってくんでよろしくぅ!」
立派な、角が生えていた。
【ツノ】スキル Eランク
スキル解説[角スキルの下位互換、ツノが生えるだけ]
【ヤンキー】スキル Cランク
スキル解説[ヤンキーっぽい事が出来る、よろしくぅ!]
「ふわわわわぁっ!」
こってこてのヤンキーになった俺を、キラキラした目で見てくる聖女様、あ、ダメだこれ、不良に憧れるお嬢様っていうあっちゃいけないシチュだ! だけどもう俺は止まらねぇ!
「上等じゃねぇかテメェ!」
リーダーが俺を見て殺意を込めた笑顔を浮かべる、だけど同時に、昂ぶっているのが解る。
リーダーが俺に何をしたいのか、
目と目を合わせれば、理解ってしまう、そう、
――俺達は夜を駆ける黄金の風
「おいヒロシィ! てめぇの相棒こいつに貸してやれ!」
「オッス、リーダー!」
そう言って、俺に渡されるアニマル、俺はバイクにまたがれば――なんか当たり前のようにセイカ様も乗ってしてきた――そんな状況で俺は、アニマルの角を握って、ぐいっとって前に回すと同時に!
「ブォン! ブォオォン!」
と、口でアクセル噴かしていく!
「ケッ! いい音噴かすじゃねぇか!」
そしてリーダーも再びアニマルにまたがった、俺はハンドルを操作して、道のど真ん中へ移動する。
そして、何時の間にか引かれていたスタートラインに、リーダーと一緒に並び立つ。
「ゴールはこの川の先のオーガニ族の村だコラァ!」
「解った! 俺が勝ったら聖女様には手を出すんじゃねぇぞ!」
「ハッ! てめぇの女の為に命賭けんのかオラァ!」
俺はその言葉に、
「――こいつは俺の彼女じゃねぇが」
笑った、
「友達だぜ」
そう、自然と出てきた言葉に、
「ポッ♡」
って、またオノマトペが聞こえて来た。そんなやりとりをしてると、
「「「さん、にぃ、いちぃ!」」」
って、他のオーガニ族の人達が、カウントダウンを初めて、そして、
「「「よろしくぅ!」」」
その合図と供に、俺とリーダーのレースが始まる。ああこの夜、俺と聖女様は疾風になる、
――行ったるぜ、ピリオドの向こう側へ
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ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
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