4-3 ざまぁの代行業
カフェテラスでの休日開け、学園の授業の日、Fクラスの教室に入った瞬間、待ち受けてたのは、
〔命賭けのギャンブライジ〕、
「いいじゃねぇか、ギャフンと言わしてやろうぜ!」
〔夢見る令嬢ロマンシア〕、
「で、ですがお相手は、あのSクラスでしてよ?」
〔暗く伏したるクラァヤミィ〕、
「関係無いわ……ぶっ潰す……」
〔騎乗するはハクバオージェ〕、
「ルールは3人チームでのダンジョンレースだね」
〔疾く駆けよウマーガァル〕、
「初代皇帝エンペリカ様が、完全攻略した”ワンダーのダンジョン”ひひん?」
〔狐火見たりのノジャイナリィ〕、
「そうそう、地下27階にあるハッピーボックス、のレプリカを、先にゲットした方が勝ちなのじゃ」
〔一撃のボンバリー〕、
「容易」
〔弟の兄アニィツイン〕と〔兄の弟オトォツイン〕、
「確かにダンジョン事態は、授業用に改造されて簡単になってるらしいじゃん!」「ですが、レースとなると話が違ってきますね」
〔血吸い少女のチスタロカミラ〕、
「妨害ありありのデスレースってヤバ☆ あ、でも皇帝陛下の〈ブラッドレスエクササイズ〉でケガはしないんだ☆」
そんな感じで次々と、クラスメイト達は意見を出してる。全く話がまとまらず、仕方無く、担任の〔白板要らずのチョークコクバン〕先生は、1限目をこの話し合いの為に変更した。
教壇の上で腕組みして静観してる様子からは、いい先生なのか、さじを投げてるのかはわかんない。
(ともかくも)
大事になりすぎてる、というのが率直な感想。。
3人組のレースだけど、スライム退治で活躍したって言われてる、俺とフィアはそれぞれのクラスのリーダーとして、必ず参加しなければならない。
つまり、このままだと俺は、Fクラスの代表扱いである。
「……ご主人様、大丈夫ですか?」
「正直、胃が痛いよ」
胃が痛い理由はレースそのものだけじゃない、それは、
【○。。】
この組み合わせで思いつくスキルが、全く無い事だからだ。まさかパスの意味が、”消去”でなく”後回し”だなんて、思いもしなかった。
……いやでも、自業自得な部分はあるかもしれない。
辛い事、苦しい事、それから目を背けて逃げたって、”逃げ方”を間違えれば、それは何時か必ず罰になって戻ってくる。
こんな風に。
(――2回目の人生なのに、なんでそんな事も気付けなかったんだ)
ああ、まずい、
自己嫌悪が、吐き気のように止まらない。
悪い感情ばっかりが胸を押し潰そうとする。
よくない、ポジティブに考えなきゃ、からっぽな心でも、空元気を出さなきゃ、
じゃないと、みんなの心配をかける、
みんなの迷惑になる――ともかく前向きな言葉をなんでもいいから、
「あの」
なんとか、笑顔と供に吐こうとしたその時、
「――やめろ」
その一言は、
「無理を、してる、匂いだ、自分に嘘を、吐くな」
机の上に足を乗せてる、〔嗅ぎ分けるスメィウルフ〕の言葉だった。
「スメルフ……」
「アルテナッシ、お前はそもそも、戦いたい、のか?」
「え、そ、そりゃあ、Fクラスの名誉とか考えたら、逃げる訳には」
「そうじゃ、ない」
スメルフは、
「お前の魂は、戦いたがって、いるのか?」
真っ直ぐに、問いかけてきた。
「――俺は」
言葉に詰まる。
正直、怖いとか、負けたらどうしようという恐怖は全く無い、ただ、
戦いたいという気持ちも、全く無い。
だから、
「――戦いたくない」
弱虫だと解ってても、情けないのは知っていても、俺はそう呟いた。
そしたら、
「それなら、いい」
スメルフは、ふっと笑った。えっ、と驚く俺に、
「そっかそれならしゃーなし」
「OK、今回はパスで」
「ほんじゃ授業しようぜー先生」
と、他の人達も皆笑って、授業に戻ろうとして、え、え?
「あ、あの皆様!」
メディが思わず、
「そ、それでよろしいのですか? その、皆様は、Sクラス相手を、やっつけたいという気持ちはないのですか?」
そう、ある意味、俺の気持ちを代弁してくれた、そしたら、
「「「やっつけたい!」」」
と、クラス全員が口を揃えた。ええ、っと驚く俺達二人。そんな中でギャンブライジが、
「いやそりゃSクラスの連中はムカつくぜ? あいつらいっつもFクラス如きが~って煽ってきてよ」
と言って、クラァヤミィが、
「陰口も……相当ひどいわ……本当深淵に引きずり込みたいくらい……」
と、言った。やっぱりみんな、Sクラスには対抗意識がある、
だけどそこでロマンシアが、
「ですがスメルフ様の言うとおり、私達の個人的な感情を、アルテナッシ様に一人、背負わせるのは間違ってると思いますわ」
「――間違ってる」
「ええ、……そ、そういう事でよろしいですわね、スメルフ様?」
ロマンシアの問いに、スメルフはふっと笑う。……あとなぜかロマンシア、そんなスメルフの横顔を見てはわわ~っしてる。なんで。
ともかくも俺は、戦わない事をあっさり認めてくれた事に、
「――みんな」
感謝とは違う、何か、複雑な気持ちを覚えて、だけどそんな俺を見てスメルフは机の上に足をのせたまま笑うだけで、
――そんなスメルフの額を
バチコォン! っと、
「えぇっ!?」
「スメルフ様ぁっ!?」
思いっきり何かがあたって、スメルフはそのまま机の奥へとずっこけた。俺の驚きの声に続いて、ロマンシアが慌てて介抱する。
「【黒板】スキル――〈チョークダーツ〉」
あ、〔白板憎しのチョークコクバン〕先生、愛称チョーコ先生。
「お話が終わったなら全員席に着いて! さもなければもう一発見舞うわよ!」
「ええそんなぁ!」「体罰ですよ!」
と言った途端、先生が投げたチョークの矢は真っ二つに分かれ、双子のおでこそれぞれにクリーンヒットしてた。
「何を言われようが、私はこの教室の女王! ほらさっさと座りなさい!」
そう言って再び、教室内は必中の効果があると言われるチョークを翳す先生。俺達は慌てて席に座るのだった。
・更新情報
6月いっぱいまで毎朝7:00に投稿させていただきます!
ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
https://www.neopage.com/book/32218968911106300




