ExtraSide三人称視点 アレフロンティア大陸南西部
――晴天であった
赤い夜空に青い地球、そんなセイントセイカが作りだした狂気の夜を越えた今、世界は青空に包まれている。
それでも人々は、夜の度に空に浮かぶ、あの青い地球が怖くて仕方なくなっていた。だから、ロマンシアが各地に作り出す、夢想結界の中に逃げ込み、引きこもるようになった。
真実の過酷さよりも、偽りの安寧を。
どうせ100年後、世界は滅びるというのだから、と。
――異世界の人間、アルテナッシによって
……そんな嘘が、最早真実となって蔓延する世界で、
『全員聞けぇぇぇぇぇぇ!』
ばっかでっかい声がした。
『スメルフがぁぁぁ! アルテナッシを見つけたぞぉぉぉぉぉ!』
――皇帝エンペリラに幼少期から仕える騎士
全身をフルアーマーに、全顔をフルフェイスメットに包んだ女性、〔がなる怒鳴るのデカヴァイス〕の大声スキル、〈ボイスインフォメーション〉による通達は、
『場所は巨人達が住む大渓谷ぅぅぅ! そして巨人族のご令嬢と交戦中ぅぅぅぅぅ! 早速何をやらかしてるのだあの庶民はぁぁぁぁぁぁ!』
全力の大声で、この"艦"の者達、全員に伝わった。
――甲板で自己鍛錬を行っていた者達が
「やっとかぁ!」
「待っていたわよ!」
「僥倖」
――居住区の廊下を歩いてた者達が
「やべ、配置につかないと、プランAとプランBどっち!?」
「ちょっとそこ廊下を走るな、チョーク投げるわよ!」
「いつ走るのじゃ? 今のじゃ~!」
――100人が優に座れるテーブルが並ぶ食堂の者達が
「厨房、パーティー準備っすよ!」
「まかセロリン!」
「じゃあ俺味見係~!」「他にすることあるでしょ兄さん!」
――鉄と蒸気が巨大な虹色の水晶を囲む機関室で
「よっしゃ、クリスタルエンジン全力全開!」
「わ~いモフ! お兄ちゃんモフ~!」
「極まったアシモチャンの知性を見せつけてやるのです!」
――サウナのととのいスペースで、
「あ~……」
「うぇ~……」
「ヤバ~……☆」
――そして
「よぉぉぉぉし! 伝えおわったぞぉぉぉぉ! まぁ私はあんな庶民なんざわざわざ迎えなくてもいいと思うけどなぁぁぁ! あーはっはっはは!」
そう、いつも通りの庶民ディスを交えるデカヴァイスが居るのは、この"艦"の前上面に配置された指令室であった。壁は窓ガラスと鉄と水晶で出来ているが、床は木製というチグハグ加減。部屋そのものは広いけれど、地球のような機械的なコントロールパネルがある訳でもない。
ともかくもそんな指令室で、
「あーっはっはっはっはっは!」
天井に届く程のでかい声で笑い続けていたデカヴァイスであったが、
「あはは、あは、あは……あぁ」
声が小さくなって、そして、
「ユガタがいない」
さみしがった。
「うう、ユガタ、ユガタがぁ……いつも私の庶民ディスを【静寂】スキルでいさめてくれるユガタがぁ……」
「ああ、またデカヴァイスさんがユガタロスに!?」
「寂しがるのはいいけど泣くのはやめて!? 【大声】スキルで泣かれたら"艦"がぶっ壊れますから!?」
「ふへ……闇いわね……」
そんなやりとりを、この指令室でやれやれと眺める、女性がいる。
ライトアーマの軽装備に、背中に剣を背負って、その腰にポーチ、投げクナイ、クマン避けのベル等、レンジャーめいた格好をしてて、ポニーテールの金髪に、美しく整った顔、
だけどその顔の右側には、火傷の跡が、炎のシルエットのようにあって。
そんな彼女に、
「団長、指示を出すべき、……あ~千里眼で目が痛いべき」
自分の眼を細めながら、無二の親友が、そう、声をかけた。
団長と呼ばれたその人物は、こくりとうなずき、
つかつかと歩けば、指令室の前方部にあり、全面のガラス越しに、正面の景色がよく見える場所へと移動した。
その足下には、魔方陣があり、そして、
「――エンジン始動!」
そう言った瞬間、この"艦"が轟くほどの音をあげた。その響き身を揺らしながら、
「機関室、この音ならもう走り出せそうかい?」
そう、魔方陣の中で問いかければ、
『バッチリモフ~!』
『いつでもOKなのです!』
その踏みしめる魔方陣から、ゴルリクンとアシモチャンの声が聞こえた――戦艦内に巡らされた通信伝達魔方陣、魔力や燃料を使うゆえ、普段は起動させない機構。
けれど、今こそはその時だと、皆に自身の声で呼びかける時なのだと、団長と呼ばれた人物は、
――火傷を負った顔すらも勲章のように笑う
〔何者でも無いソーディアンナ〕は、
「デカヴァイスさんが言ったとおり、アルテナッシが遂に目覚めた!」
そう言い放つ、そう伝える。デカヴァイスの【大声】スキル無くとも、その声は艦内中に伝わった。
「さぁ、今から迎えに行こう! 私達の仲間を!」
意思を表示し、意思を統一し、そして、
決まり文句を言い放つ。
「――何もかもがなんとかなる」
その言葉は、アルテナッシを助ける為に、命を賭けた言葉。
そしてソーディアンナは続いて、クラスメイトのスキルの名前を冠した、
この艦の名を、
「ワンフォーオールワン号」
叫び、そして、
走らせる。
「発進!」
――全長100メートルの鉄と水晶と木と希望の塊の戦艦が
轟音をたてる、蒸気と共に戦艦にパワーを巡らせる、クリスタルエンジンによって、よりけたたましく唸りをあげる。
だが、まだ艦は動かない、前へ進まない。
……指令室から視点を変えて、艦の外。
まずこの戦艦には、両側面に、
――巨大な車輪が二つずつある
そして、更に視点を、
この艦の前方へ移動すれば、
白馬に乗った、
青年がいる。
「――【騎乗】スキル」
そして青年の声が響けば、
艦の前面下部から、長く太く伸びるハーネスを装着した白馬に乗った彼の声と共に、
側面の車輪が、勢いよく! 回り出す!
――ここは海でなく枯れ果てた荒野
そんな不毛な大地を、蹴散らすように、
この巨大な戦艦は、否、
巨大な戦艦馬車が、
「〈ゴールデンシップ〉!」
――〔騎乗するはハクバオージェ〕と、白馬になった、〔疾く駆けよウマーガァル〕
彼と彼女のスキルによって、轟音をたてて豪快に、この荒野を切り開いていった。
・更新情報
2026年1月は10日、17日、24日、30日、31日、
そして2月1日朝7:00に投稿させていただきます!
ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
https://www.neopage.com/book/32218968911106300




