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E-11 And you

 荒野を走る――今は空に浮かぶ地球も、それを包み込む紅の空も無視して、

 刀から全身に伝わる、メディの【紫電】(思い)を纏って向かうのは、

 俺をさっきまで、圧倒(バカに)してた英雄無顔――そいつは慌てたような表情(ノーフェイス)を見せながら、剣を構えたけど、


「【紫電】スキル――」


 俺は既にバフがかかった体を、更に加速させるように、


「〈|ゴッドスピードフォーミー《疾風迅雷》!〉」


 ドワモフ族の里、クリスタルケイブでメディが使ってたスキルを、自分の速度(ギア)をあげる技を使い、一気に距離を詰めて!


「あああああっ!」


 っと叫んで、思いっきり斬りつける――刀はエクスカリバーで受け止められたけど、

 そのまま、英雄無顔は思いっきり吹っ飛んで、そのまま木造の家に衝突して、壁を突き破っていく!

 その壁の穴に俺は飛び込んだ、視界にはまだ吹っ飛び続ける英雄無顔の姿がある中で、


「【紫電】スキル!」


 俺は走りながら、刀の帯電をより強くして、家中の埃を刀身に集めていく。

 そして家を抜け出して、ちょうど英雄無顔が、さっき俺にやられたように、二度三度ボールのように跳ねて、ようやくうつ伏せに落ち着いて、

 それで奴が、(無顔)を持ち上げたその瞬間、

 ――俺は刀を振り抜いた

 けれどそれは、英雄無顔から離れた場所で、空を切る俺の刃の軌道に、戸惑うかのような態度を見せる英雄無顔の、

 頭上で、ゴロゴロと音が鳴った。

 ――見上げた時にはもう遅い

 部屋中の埃を集めて作り、奴の頭の上へ飛ばしたのは、

 雷雲。


「〈アーティフィシャルサン(人工降雷)ダー!〉」


 ――天下一メイド会のレースでメディが見せた技が

 大気を裂き破る雷撃が、英雄無顔に炸裂する!


«――オオ»


 声が、


«オオオオオオオオオオ!?»


 口無しの顔から、声が響く、呻きが、絶叫がした。

 雷に撃たれた肉体は、スライムの練体は、激しい流動を見せる、

 だけどこれはダメージを受けたからの叫びじゃなくて、


«オオオオオオオオオオッ!»


 怒りだ――俺がこんなザコ()にやられるはずが無いって言う。

 そんな俺への憎悪を剥き出しにするかのように、体を波打つように歪めながら立ち上がって、


«【無敵】スキ――»


 取り込んだ神の力を使おうとした英雄無顔に、

 俺は雷速で近づき斬りつける――


«グウウウ!?»


 攻撃を受けながら、エクスカリバーで反撃してくるけど、

 横薙ぎの大振りは余りにも見え見えで、屈んで躱し、下から飛び上がるように切り上げた。

 ――線のような切り口から血は出ないけど

 バチバチと電流がまさに稲妻のように奔っていく。英雄無顔という無双(チート)相手に、確実にダメージが通っている。

 そんな中で英雄無顔は、


«ム、【むて»


 スキルを使おうとしたけれど――振り上げた刀を今度は振り下ろして、


«アアアッ!»


 二撃を加えたことで、それを阻止(キャンセル)する、それでもまた【無敵】スキルを使おうとするから、そうしないように斬りつけて、

 そんな風に戦う俺の様子を見て、檻の中のフィアが、


「なんであいつ(英雄無顔)、お兄ちゃんの攻撃を防がないの?」


 呟く。


「な、なんで逃げないの? 【無敵】スキル使いたいなら、距離をおけばいいだけなのに、ていうかわざわざスキル名を無理に言わなくても――」


 そこで、フィアはハッとしたように、言った。


無双(チート)だったから?」


 神様の力で、英雄無顔はずっと最強(俺TUEEE)だった。

 だからスキルを使うことに頼りっきりで、そして、一度たりとも挫折も危機も無かったから、

 ――スキル(チート)にしがみつこうとする

 冷静になれば気づけること、だけど、


«む、むて、むて、むて»


 スライムは憎悪の塊で、


«むてむてむてむテムテムテムテムテテテェ!»


 心を怒りで燃やし続けなければいけないから、固執する、今まで通りの勝ち筋(お決まり)に、これさえ出せば勝てるという戦略に。

 だから俺はその怒りを、衝動を、冷静に見定めながら、【紫電】スキルでバフのかかった体で、拘束の剣戟を繰り返していく。

 そうやって攻撃を繰り出していく内に――

 英雄無顔の体が、()の形を保てなくなっていく、どろりとした半透明の体へ崩れていく。


「い、いける、お兄ちゃん、がんばって!」

「ピキャー!」


 檻の中のフィアの声が弾ける中で、

 とどめとばかり、俺が首へと刃を吸い込ませようとしたその瞬間、

 ――スライムの体から何かがぶちまけられた


「うわっ!?」


 石つぶてのように俺へ向かってくるこれは、骨!? スケルトンという魔物じゃなくて、大量の骨そのものが、俺の視界を奪う程に叩きつけられる!


「くっ!」


 俺は慌て、その骨を払いのけるように刀を振るった。しかし、再び視界を取り戻した時には、

 ――どろどろになった体の英雄無顔が


«【無敵】スキル»


 にやにやと笑うように、その無表情を見せながら、


«〈アンビーダブルゴッド(不敗の神話)ぉぉぉぉ!〉»


 フロスティを、触れるだけで倒してのけたそのスキルを使って見せた。


«アア、アアアアアアアアアア!»


 そして勝ち誇ったかのように、赤い空の青い地球へと吼えるスライム。

 ――絶望的な状況で


「お、お兄ちゃん、逃げて!」


 フィアも当然、そう言うけど、

 俺はそこで、

 刀を納める。


「――えっ」


 腰を落として、体の力、つむじから足裏まで順番に抜いていき、

 全身を脱力させれば、目を細め、遠山の目付、英雄無顔を見るように見ないで、見ないように見て、

 そして刀の柄を、握りしめた。

 ――ああ、繋がる

 どうしてか解らないけれど、俺の心が、

 今、フィアと、

 通じている。

 ――ずっと傍にいますから

 ……今、俺にだけ響いたこの声が、俺の過去の思い出からか、

 それとも、今この世界に生きているメディの声かはわからないけれど、

 ――俺のからっぽの心は今

 メディでいっぱいだから、


「――俺は無敵だよ」


 そんなことを微笑みながら言った、その瞬間、

 英雄無顔が、そのどろどろになった体を、風で引きちぎるように俺へ向かって、

 無敵の状態で突撃してきて、俺に、

 触れようとした。

 瞬間、俺は駆け出しながら、

 刀を抜いた。

 ――鋭く光る厳めしき刃


「〈セレスティアルジャッジメ(紫電一閃)ント!〉」


 全身に雷による瞬発力を得て、

 音速を超え、光速にすら達するような、前へ駆けながらの居合い切り。

 入学試験で、メディと繰り出した技は、

 確かに、英雄無顔の体を斬ってみせた。

 ……俺は刀を納めながら、振り返る。


«……ア?»


 英雄無顔からすれば、俺が目の前から消えたようなものだろう。だから、俺へと振り返る奴の体が、

 ぐちゃりと、崩れた。


«ア、ア? ……アア!? アアアアア!?»


 何が起きているかわからないように、自分の無敵になったはずの体を、なんとか保とうとする。自分の腕で抑えつけようとする。

 それでも崩壊は止まらずに、


«アアアアアアア!»


 うなり叫びながら、俺へと向かってきた、だがやがて足そのものが崩れ、体も崩れ、

 人の形を無くしてしまった英雄無顔は、ただのスライムになって、ゆっくりと、俺の足下まで這ってきて、そして、


«アア……ア、アア»


 何かに変わろうとする――七大スライムである{ノーフェイス(顔無き悪意)}は、俺のお気に入りのアイテムになろうと、

 ――小学校の頃の俺の笑顔の写真になろうとして

 顔の無い魔物が、写真で笑顔を、

 浮かべようとして。

 ……それはかつて俺が、スライムに求めたもの。

 もしもああだったら、こうだったらという、

 ――どうしようもなく求めてしまう過去への回帰


「ごめん」


 俺はそれに、


「俺はもう、偽りの過去に幸せを求めない」


 拒否をした。


「俺は、未来に行くよ」


 ……その言葉を、"俺が何も望まない"ことを知ったスライムは、

 もう、相手の欲望(アイテム)になることも出来ず、

 最早、呻きも何も残さずに、

 そのままとけて――消えていった。

 憎悪の塊が、跡形も無くなると同時に、

 そこから光が溢れだして――


«ありがとう、〔何も無しのアルテナッシ〕»


 セイントセイラ様の声がして、その光は、みるみる内に人の形をとっていって、


«スライムの呪縛から、こうして、解き放たれました»


 そして――女神像に、

 この世界の教会に祀られている、スキルの女神様そっくりの姿になった。

 俺の心の中でゲームで遊んでいた、子供の頃の面影を僅かに残した、20代くらいの女性の姿。

 髪の色は、セイカと同じく真っ白だけど、

 女神様の体は、光そのもので出来ているようだから、輝いてみえる。


「め、女神様が、本当にいる」

「ピキャー……」


 まさに神々しい姿に、檻の中から感嘆するフィアとチビ。すると女神様はそっちを向いてくすりと笑い、


「【瞬間移動】スキル」


 と、一言言った途端に、檻からフィアとチビが消え、そして俺の隣にやってきた。


「えっ!?」

「ピキャ!?」


 当然に驚くフィアとチビ、だけどセイラ様は、スキルの女神であり、この世界の神様である彼女は、

 俺達に笑顔を見せて、


«まずは語りましょう»


 神々しいままに口を開く、


«1000年前、私が神になるに至った経緯を»


 だけどその笑顔はけして、


«そして300年前の、私の罪を»


 明るいものではなくて、

 その笑みの奥に、


«――セイントセイカに、【奇跡】スキルを与えたのは私なのです»


 深い後悔を、覚えているようだった。

・更新情報

2026年1月は10日、17日、24日、30日、31日、

そして2月1日朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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