E-10 Master soword
赤い空にぽっかりと浮かぶ青い地球、それが見下ろす荒野の中で、俺は両膝をつきながら、
全てをあきらめて――殺されるために、エクスカリバーの攻撃を受けようとしていた。だけど、
――どうかメディとお呼びください
パチリと、何かが弾ける感触と同時に、メディの声が聞こえて、閉じようとした俺の意識が開いた。
……なんで?
そう、思った時に、
――その日までけしてその刀を、否
……え?
また、声が聞こえたけどメディじゃない。 これって誰の言葉だ?
……これは、確か、そうだ、
――"友"を信じることを、忘れるな
ヤギュウゲンブ――大和の国出身の、老侍。
エンリ様の裁判が終わった時の、ゲンブさんの言葉。
なんで今、この声が、いや、
記憶が流れ出す。
――何も無いからこそ、乗り越えられる
今度は、入学式の時、
俺の二つ名を聞いた皇帝エンペリラ様が、言ってくれた言葉。
何も無いという俺の二つ名に、前向きな意味を与えてくれた……、
なんだ、何が起きている?
剣は振り落とされているのに、
まるで時が止まったかのように、記憶が、
思い出が、
――メイド長から教わりました
からっぽの心に、
――主従は離れている時こそ、真価が試されるものなのだと
溢れてくる。
……ああ、これは走馬灯だ、
ただ、死に際に見るもの、最期を迎える自分への慰め、
……でも、確か、WeTubeで見た。
走馬灯は、死ぬ間際に生き残る為の手段を、記憶の中から探るためだって。
――トマトトタマゴイタメターノです
この思い出の中に、それが?
そんなの、ある訳がない。だって、
――どうされたのですか、その愛らしい姿は!?
思い出すのはメディとの、大切な思い出だけど、
この状況じゃ意味の無い、使えない、
――~~~~っ!?
|役立たずの思い出《水着をかわいいと言った時》ばかりで。
……でも、なんでだろう、
今はどうしてこの思い出が、
セイカにやられた時は、何も感じなくなってしまった思い出が、
どうしてからっぽな心を、
あったかくするんだろう。
パチリと、
また何かが弾けた。
――アル様自身の、したいことはなんですか?
……記憶は、あの出会いの日の夜に戻る。
確かあの時は、学校に行きたいって言って、
それでもし、試験に失敗したらって言ったら、
――その時は私が傍にいます!
メディは間髪入れずに、笑顔で言ってくれた。
こんな俺に、
――私はメイドとしてずっと傍に居ます
そう、言ってくれた。
そうあの日が、あの時が、
俺の――
――【○○】
……え?
……【○○】スキル? え、
俺、力を取り戻した?
違う、
これは俺の心からじゃない、
刀から浮かび上がっている――
……ゲンブさんは言った。
――"友"を信じることを、忘れるな
エンリ様は、言った。
――何も無いからこそ、乗り越えられる
そしてメディが、
――ずっと傍に居ます
言ってくれた。
パチリ、と、
パチリ、パチリと、
……握りしめた刀を通じて、
俺の体をノックする、俺の心を目覚めさせる感触に、俺は覚えがあった。
だから、
刀から浮かび上がった、【○○】に、
俺は自然と、
言葉をあてはめた。
その瞬間――
ドカァァァァアァァァァン! っと、
「おにいちゃぁぁぁん!」
凄まじい破裂音に、フィアの絶叫、悲鳴が重なった。
英雄無顔による、エクスカリバーの振り落としは、大地にクレーターを作るほどの衝撃を生んだ。
……だけど、その中心に、
俺はいない。
「……え? え、ええ!?」
フィアの驚きの声、そして、
――無表情で驚く{ノーフェイス}を
俺は聞き、俺は見る。
どうしてかって、単純、
避けたからだ。
「……ふぅ」
俺は英雄無顔から10メートル程距離を離した、間合いを作った。そこまで離れた俺を――"力"を使ったことで、体が弛緩する俺を、英雄無顔は"呆然とした表情"で見る。
それはそうだろう、何も無い俺をいじめて楽しんでいたのに、急に"変わっちまった"んだから。
「お、お兄ちゃん、それ!」
「ピキャー!?」
だけどフィアは、俺のこの姿を知っている。何度もフィアには、授業中に見せた。
……痛み、軋む、俺の体。
そんな中で、俺は、ゆっくりと刀を掲げた。
――パチリ、と
パチパチと、バチバチと!
激しく! 荒れ狂うように! 凄まじい音と共に、刀身が、無数に枝分かれした光の軌跡を纏う!
飛沫のような閃光は、俺の握った手を通じて、焦がすように俺の体に伝って!
だけど全身を纏うその力は、
とても優しく、俺を癒やす。
この光は、輝きは、
彼女の髪と同じ色で――そう、俺が、
刀から浮かび上がった【○○】にあてはめたスキルの名は、
「【紫電】スキル――」
メディのスキル、人を傷つけるばかりの力を、
人を癒やすものにした、
「〈ライトニングサービス!〉」
どこまでも優しい、彼女のスキルは、
バチバチという破裂音と、荒れ狂うように全身を包む紫色の雷、電気は、
〈〈サンダーステップ〉〉――体に負荷がかかる移動技を使ったことによる、俺の全身の疲労を、完全に癒やしきった。
俺の体からは紫色の電流が消える、だけど、
刀は未だにパチパチと、【紫電】を帯びている。
――それが何を意味するか
何故、刀が俺に、力を貸してくれるか、
それは、
「……メディ」
メディが、俺を、
俺のことをまだ、
「メディ!」
思ってくれるって知ったから――その理由は、
――スキル欄
【紫電】スキル SSランク
スキル解説[ずっとあなたの傍にいたい]
「【紫電】スキル!」
どれだけ時が過ぎても、
どれだけ離れていても、
そう今も、思ってくれるのを、刀を通じて知ったから、
「〈オールレンジテレグラフ〉!」
メディが傍にいてくれることを感じながら、俺に今も力を与えてくれることを知りながら、
俺は、立ち尽くす英雄へ向かって走り出した。
――彼女がくれた、刀を握りしめて
2026年1月3日まで毎朝7:00に更新します!
ブクマ、いいね、応援チケット、コメントいただければ飛び上がって喜びます! 連載継続のためによろしくお願いいたします!




