ExtraSide三人称視点 聖女セイントセイカの心の中
――心の中
それは本来、自分自身ですら不可侵の領域、せいぜい夢として認識する以外は出来ない場所。
けれどアルテナッシはこれまで己の心の中に、明晰夢すら超えてハッキリとした状態で、己の心の内で目覚め、女神達と邂逅し、そして、聖女セイントセイカすらも招いていた。
その時のアルテナッシの空間の色は、白。からっぽだった彼の心の象徴。
対して、セイントセイカの心の中は、
静かに、黒く、
――ただ
「ああ♡」
彼女の周囲は、セイントセイカのまわりは、
学園の制服から、何時もの真白の聖衣に着替え、そして、
――抱き枕を
アルテナッシの全身をプリントした、抱き枕を、
「アル君♡ アル君♡ アル君♡ アル君♡ アル君♡ アル君♡ アル君♡ アル君♡ アル君♡」
抱きしめながら、その場を転げ回る聖女の周りだけは、薄い赤色、ピンク色で淡く輝いている。うっとりと幸せそうな表情を見せた後、彼女は、
「ああ、アル君……♡」
陶酔のまま、抱き枕と一緒に座り込み、
「好きぃ……♡」
抱き枕の顔へ、唇を近づけようと――
「もうやめてくだサイ……」
声が、して、
「こんなことしちゃ駄目デス……セイカちゃん……」
セイカが振り向いた先にいるのは、
――天井も壁も無い空間なのに
どこかから伸びた四本の鎖で、手首足首を固定され、跪かされたテンラの姿だった。虹色の長髪も、色あせて見える。
……テンラの言葉を聞いたセイカは、抱き枕を優しく横たわらせたあと、うんしょと立ち上がり、そして女神の元へ向く途中、右手に何かを握りしめた。
――それは拳銃
などではなく、
「はい、チーズ♡」
スマートフォン、そのカメラの機能をつかい、テンラと一緒に己を撮影する。
出来上がった写真を彼女はそのまま――SNSへと投稿した。
「ああ、早速いいねついとる♡ 相変わらずコスプレみたいに言われとるね、本物やのに♡ ……あ!♡ 盗んだ爆撃機が返ってること、ニュースになっとる♡ ええとついでに宇宙のトピックをチェック……」
そのままセイカは、テンラの方を見ずにスマホを操作し続けた。無視をされたテンラだったが、やがて、
「セイカちゃん……あなたハ……」
また、女神が聖女へと語りかければ、
「うちの心の中に、悪い物がある♡」
ようやっと、振り返って、
「そう思って、うちの心に乗り込んで、うちの心の中のスライムを倒そうとしたんよね♡」
「……あなたが自ら……その力を取り込んでたなんて思わなかったデス」
テンラは、写真を撮られたことも、それを地球の現実時間のSNSに投稿されたことも、今は放置し、
「あなたがの心もアル君と同じ……何もかも前世に奪われてマシタ……それに私は気づけなかったデス……」
「せやね~、神様失格ちゃうかな♡」
「でも……例えそうでも……この世界とあの世界を滅ぼすなんてしてはいけマセン……」
そう、せつに訴える。
それに対してセイカは、
「いやよ♡」
はっきりと言った。
「何度も言うけど、アル君がからっぽになるには、この世界もあの世界も邪魔なんよ♡ アル君にはなんもいらへん、過去も未来も今もなんもかんも無くして♡」
そこでセイカは、獰猛とも言えるほどの笑顔を見せ、
「うちで、いっぱいにするんよ♡」
紅潮に染まった表情を、この真っ黒な心の中で燃え上がらせる。
「ほんまはテンラ様も邪魔やけどねぇ、だって今テンラ様、そんな状態でうちの【奇跡】を邪魔してるやろ♡」
「……それ……ハ」
「アル君をここにテレポートさせることもできひんし、アル君が今どうしてるかもわからへん。ああ、殺したいところやけど、そしたらテンラ様の力を使えへんようなるしねぇ♡」
さらりと、神の命を奪う発言をしたあと彼女は、
「まぁええんよ、かまへんよ、うち、ちゃんとアル君のこと探し出してみせるから♡ アル君が何度生まれ変わっても♡ 例えこの世界が終わっても♡」
そう言って彼女は、もう一度、スマホの画面を眺めた。
WeTubeのショート動画、
花火が、あがってる。
「何も無いアル君は♡」
そしてセイカはそのスマホを、
「うちが愛してあげるから♡」
ぐしゃりと、たやすく握りつぶした。
そして、バラバラになった機械部品を、無造作に地面へと落とせば、
「――ああ♡」
自分の身を抱きしめて、
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き!」
鎖で縛られたテンラの前で、"舌まろび出る程にはしたない"笑顔を、吼えるように見せた後、
途端、
急に、動きを止めて、
――左目を閉じ、静かな表情で
「だからうちを」
届けるように、囁く。
「からっぽなうちを愛して」
……その後、少しだけ、静寂がこの空間を支配したけど、
「――あはっ♡」
再び左目が開かれて、
「あははははは♡! あはは♡! あぁっはっはっはっっはっはっは!♡」
再び彼女の心は、アルテナッシの愛で満たされていく。
黒く冷たい空間が、どこまでも桜色に染まっていくのを、テンラは、ただみつめることしか出来なかった。
――からっぽな心を満たすのは
・更新情報
次回更新、12月25日から再開させていただきます!
毎朝7:00に投稿させていただきます!
ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
https://www.neopage.com/book/32218968911106300




