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11-11 だってあなたが好きだから

「――賭けはうちの負け♡」


 ――氷で閉ざされた帝国の門

 セイカ様の声が響く中で、俺の視界は、


「ほんに、予定が狂ってしもうたんよ♡」


 123の目を出した、血染めのサイコロに注がれる。

 ――これが俺を帝国から脱出させようとした

 命を賭けた、ギャンブライジのものであるのは明らかで、

 それが血に染まってる意味は、


「あっ、ああ」


 俺の心に、悲しみと、そして、


「あああああああ!」


 怒りを、強い衝動を呼んで、そして、


「セイカァッ!」


 俺の頭上へ浮かぶ聖女の名を、憎しみと共に叫ばせていた。

 それに対してセイカは、


「――えっ」


 左目を閉じて動揺を見せたけど、すぐに、

 その左目を再び開いて、


「呼び捨て、してくれたぁっ!♡」


 目の中にある(はぁと)を輝かせて、


「あ、そ、そんないきなり、ビックリするんよアル君♡ 様付け無しのフレンドリー♡ ううん、もうこれってラブリー!♡」

「セ、セイカ」

「ああ、ああ!♡ もっと呼んで、うちのこと呼んで、ああ、ああぁっ!♡」


 俺に呼び捨てにされたことで、浮かぶその身を悶えさせる彼女に、俺の燃え上がった心は一気に冷たくなった。

 怖い、

 怖くてたまらない、

 だけど、目を反らすことも出来ない。

 俺の心は目の前で、(狂気)を振りまく彼女に囚われて、


「ああ、嬉しい……♡」


 銃をもってない方の手で自分の頬を撫でて、うっとりと俺を見下ろすセイカは、


(ほか)の女にも、目移りせんといてくれて♡」


 と、言った。

 ――その瞬間


「フィア!?」


 真っ先に、一番声をかけなければいけなかった存在へと振り返り駆け寄る。

 ――胸からどくどくと血を流すフィア

 倒れ込んだフィアに、チビ(ミニドラゴン)は必死に鳴き声をかけていた――俺はチビが発する鳴き声すらも、聞こえてなかった。


「フィア、フィア、しっかりして、フィア!」


 俺はそう呼びかける中で、


「銃で撃たれた時の死因って、出血多量だけやのうて、ショック死もあるんやってね♡」


 また、セイカの声が聞こえて、俺が視線を向ければ、彼女はすとりと地面に降りたって、


「けどこの銃って奴大変やね、撃ったとき肩が抜けそうやったんよ、それに、遠いところから狙ったけど、よう当たったもんやと思うんよ♡」


 そして彼女は、


「まぁ、無傷でフィアちゃんを撃てたんは【奇跡】みたいなもんやね♡」


 そう、自分の(チート)を誇示した。

 ああ、セイカは俺が、帝国の外から逃げ出したところで、

 どうにもできないと、思っている。

 ……だから俺は、


「――【蘇生】スキル!」


 自分の力を、【○○】に当てはまるならなんでも使える、俺の(チート)を使う。


「〈リザレクション(それは愚かで尊き願い)!〉」


 いや、


「……〈リザレクション(それは愚かで尊き願い)!〉 リ、〈リザレクション(それは愚かで尊き願い)!〉」


 使うのでなく使おうとした――だけど俺が何度スキルを発動しようとしても、ただ言葉だけが虚しく響き、そして、


「あかんよ♡ 【蘇生】スキルなんてSランクどころかSSSランクの超レアスキルよ♡」


 セイカが、フィアを治そうとする俺に近寄ってきた。


「そもそも今のアル君は、SランクどころかAランクのスキルも使えるかあやしいけど♡」


 チビが鳴き声をあげて警戒し、俺もフィアをかばうように両手を広げるが、

 セイカは銃を捨て、そしてその空いた左手をフィアに翳して、


「〈チートフルデイズ(ありきたりの奇跡)〉♡」

「えっ」


 (【奇跡】)を、使う。

 その途端、フィアの胸から銃弾が飛び出し、そのまま消えて、

 次に傷口が塞がっていた。

 ……俺を治した時みたいに、

 あっさり、フィアを治した。


「これでよし♡ まぁ傷口塞いだだけやから、血ぃ抜けて暫くまともに動けへんと思うけど、多分大丈夫やろ♡」


 助けてくれた感謝よりも抱くのは


「……なんで」


 当然の疑問、やってることが無茶苦茶だ。わざわざ治すのなら、どうして一回、銃で撃ったのか。

 俺の問いかけに、セイカは(にっこり)笑って言った。


「アル君とイチャついててムカついたから♡」


 ――本気なのか

 そんな理由で、フィアを撃った。


「ごっめぇん!♡ うちの友達やし、ここまでするつもりは無かったんよ!♡ けどけどアル君も悪いんやから、うちって運命の人がいるのに、他の女とイチャついて♡」


 セイカが言ってることが解らない、いや、解りたくない。

 だけど俺がしなきゃいけないのは、


「うん、うちってこんな嫉妬深かったんやねぇ、だからごめんアル君、フィアちゃんはもちろん♡」


 ――この聖女を


「メディちゃんも、諦めて♡」


 倒さなきゃいけない――そう思った俺は、

 最早声を出すこともなく、

 自分の腰に下げた刀の柄に手をかけ、

 居合抜き――胴を薙ぐようにセイカに刃を、

 ――閃かせる


「――納めよ」


 俺の手が止まり、刀は再び鞘へと戻された。

 ……え?

 な、なんだ、今の、声が聞こえて、

 ――言うとおりにしてしまった

 相手を言葉通りに操るこの力は、


「全く、ややこしいことをするな、アルテナッシ」


 ――エルフリダ様の【支配】スキル


「その女、お前に斬られたことでむしろ喜ぶ手合いだぞ?」

「もう、そんなんうちが変態みたいやん♡ 確かにアル君の情熱(無力)は全身で受け止めたかった(スプラッタ)けど♡」

「という訳だ、【奇跡】に刃向かうな大馬鹿者めが」


 声が、エルフリダ様の男の声だけが聞こえ、セイカと会話してる。俺がこの状況に呆然としてると、セイカは、一旦俺と距離を取って、


「【奇跡】スキル、隠蔽解除!♡」


 そう言って、指を鳴らした。

 すると現れる、森王エルフリダ様、

 だけど、

 俺の目の前に姿を現したのは、

 ――エルフリダ様だけでなく

 ……なんで、

 なんで、

 どうして?

 ――その浮かぶ名前は


「……ごめんなさい、アルテナッシさん」


 {皇帝絶壁エンペリラディペンデンス}、


「謝るくらいなら、何故、受け入れたのですか」


 {神龍不死サクラセイリュウアンデッド}、


「言いたい気持ちくらいは察せよ、エンリはまだ童よ」


 {支配無来エルフリダロストフューチャー}、


「ほんにセイリュウちゃん、そういうところよー♡」


 {奇跡虚無セイントセイカヴォイド}、

 ……嘘だ、

 なんで、どうして、

 皇帝が、王姫が、森王が、聖女が、

 フィアやゴッドフット先輩の時と同じように――


名付きの魔物(ネームドモンスター)


 スライムと同化した名をあげていることに、

 俺の心は、軋みをあげた。

・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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